現役D1マシンのパワーをガチンコ計測!
熟成を重ねたロータリーエンジンは美しいパワー曲線を描く
「D1グランプリで戦うRE雨宮FD3Sのパワーを計測!」最強3ローターターボの気になる出力特性を独占公開
パワーがなくては勝てないとされる近代の競技ドリフトシーンにおいて、ロータリーマシンは完全に少数派。特にレギュレーションによってNOSの使用が禁止されてからは、排気量アップでパワー&トルクを補うことができるレシプロ勢に対して不利な戦いを強いられてきたのは事実。ピークパワーを狙って大風量タービンを使えば中間トルクが落ちる、中間トルクを狙ってタービンサイズを調整すればピークパワーが足りないというジレンマに悩まされてきたのだ。
しかし、そんな中においてもひたすらロータリーエンジンに拘り、戦い続けるチームRE雨宮K&N。マシンはご存知の通り、雨宮ブルーでオールペイントされたFD3Sだ。
心臓部は動力性能と出力特性のバランスを考慮して20Bベースの3ローターユニットを搭載。内部はFC3S前期の低圧縮ローターを組んだブリッジポート仕様で、そこにT88H-38GKタービンを組み合わせてオーバー700馬力を達成している。が、それはD1GPの公式ホームページによる公表値だ。実際の出力はどの程度のものなのだろうか。そこで今回は、RE雨宮のご厚意により、D1車両の貴重なパワーチェックに立ち会わせてもらった。
ちなみにRE雨宮では、コースに合わせてタービンを使い分けており、今回シャーシダイナモにかけたのは高速サーキット用のT88H-38GKだった。
パワーチェック当日の気温は33度、シャーシダイナモ室の中は40度を超える暑さで、正直なところパワーはあまり期待できない環境だ。RE雨宮の工藤メカによると「これだけ暑いと吸気温が高くなってしまうのでちょっと心配ですね」とのこと。
実はこのマシンの一番のネックは冷却系にある。重量配分の観点から、ラジエターはリヤに移設しているが、ドリフト走行は進行方向に対して大きく角度が付くため、どうしても走行風が取り込みにくい。ターボとNAという差はあれど、かつて参戦していたスーパーGTの方がよっぽど楽だったという。
とりあえず水温と油温がある程度上がったところで早速パワーチェック。ブースト圧はこのエンジンで想定している上限値となる1.2キロで計測したところ、アッサリと720psをマーク。実際のD1ラウンド中は安全マージンを見込んでブーストを少し下げているそうなので、レース中は680~700psあたりとみるのが正解だろう。
しかし、そんなピークパワーの数値もさることながら、注目したいのはそのグラフが描いているライン。回転の上昇に応じてレブリミットの直前までパワーがスムーズに盛り上がっていき、ちょっと落ち込んだあたりでレブリミットを迎える。ビッグシングルをキッチリと使い切った見事なセッティングとなっている。
トルクも5500rpm付近で最大値となる72.7kgmをマーク。そのままレブリミットまで60kgmを割り込むことはない。フルチューンでありながらもパワー&トルクバンドに入っていれば、決して扱いにくくない特性だということが見て取れる。
しかし、これほど完成度の高いエンジンに仕上がってはいるものの、ライバルに比べると200psくらい足りていないのも事実。そこでRE雨宮は、さらなる高出力化を狙った4ローターターボ仕様のニューマシンの開発に着手。現在、ファクトリーで作業は進められているが、近い将来、レースに登場してくるはずだ。
「エンジンはこれでも耐久性重視。2年は持つからね。ロータリーの火は消さないよ! 応援し続けてくれるファンがひとりでもいる限りね」と、闘志を燃やす雨さん。
D1グランプリ2019シリーズはまもなく北海道に上陸し、十勝スピードウェイ(7月27~28日)で第3~第4戦が開催される。円熟の域に達した3ローターターボ仕様のFD3Sが、どんな走りを見せてくれるのか、今から期待せずにはいられない。
●取材協力:RE雨宮 千葉県富里市七栄439-10 TEL:0476-90-0007
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