日経新聞に開発を中止すると報道されたスカイライン。日産はこの報道を否定したが、近年のスカイラインの売れゆきをみると、その可能性もあるのではないか? と心配される。
今後の動きが気になるところだが、それにしても日産を代表する歴史あるモデルであるスカイラインがここまで凋落してしまった理由はどこにあったのか?
開発中止騒動はスターの証!! スカイラインが“日産の象徴”と言われる理由は?
近年のスカイラインは北米ではインフィニティブランドで販売されているわけだが、その北米での人気を含めてスカイラインが低迷してしまった要因に迫っていく。
文/桃田健史
写真/NISSAN、ベストカー編集部
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■衝撃のスカイライン消滅報道。日産の星野副社長は「諦めない」と明言した
スカイラインの役目は本当に終わってしまったのだろうか?
日産自動車の星野朝子副社長は2021年6月15日に開催した新型「ノート オーラ」の記者会見で、日本経済新聞が6月13日に掲載した「日産の象徴『スカイライン』、開発に幕~SUVに押されて苦戦 EVなどに集中」という報道に触れ、「そのような意思決定をした事実は一切ない。日産はけっしてスカイラインを諦めない」と報道を完全に否定した。
ノート「オーラ」の発表の場で、日経が掲載した「次期スカイラインの開発が中止された」との報道について、日産の星野副社長は「ノー」と完全否定した
日経の報道が出た後、さらに日産がこの報道を否定した後、自動車関連メディアやSNSを中心として”スカイライン消滅”についてさまざまな反応があった。
本稿執筆時点(2021年6月20日)では、事の真相は明らかになっていないが、スカイライン消滅の話題が各方面でこれだけ大きく取り上げられるのは、ユーザーの多くが近年のSUVシフトや、直近でのカーボンニュートラルによる急速なEVシフトへの流れを強く認識しているからだと思う。
1960年代から脈々と続くスカイライン史上のなかで、在りし日のスカイライン全盛期を知るユーザーとしては、最近はスカイラインを街中で見かける機会も一気に減り、”もはやスカイラインは世の中の主流ではないのか”というイメージを持っている人も少なくないはずだ。
では具体的に、”スカイラインが日本車のド真ん中”ではなくなったのはいつか?
■V35は北米でのインフィニティブランド向上の切り札として投入!
スカイラインの転機は、いまから20年前に登場した11代目の「V35」であることは明らかだ。
”V35への布石”として、日産が1999年10月の第33回東京モーターショーでコンセプトモデルとしてXLVを出展した時点で筆者を含めてショー現場で取材していたメディア関係者の多くが「まさか、これが次期スカイラインなのか!?」と半信半疑だった。
1990年代末期の経営破綻危機の末、ルノー傘下となった日産。ゴーン体制の下、日産リバイバルプランのなかでの新車として発表されたのが、R34からV35へ大きく変化したスカイラインだった
なにせ、XLVによってR32/R33/R34というGT-Rを筆頭とするスカイラインのイメージが完全に崩れてしまったのだから。
その後、ゴーン体制によってスカイラインのイメージ刷新が確定的となると、ユーザーのみならず、自動車雑誌各誌で自動車評論家諸氏が「XLVとしてはいいクルマでも、これはもはやスカイラインではない」と手厳しい論調で自論を示した。
一方で、海を渡り「インフィニティG35」と名乗るV35はアメリカで絶大なる人気を博した。こうした人気の渦の真ん中で、筆者は当時カリフォルニア州ガーディア市にあった北米日産本部で日米の日産関係者らと”インフィニティのこれから”について定常的に意見交換していた。
また、全米各地の日産とインフィニティの販売店を取材する機会も多かった。
日産は当時(2000年代初頭)、ダイムラーのAMGやBMWのMが先行する、プレミアムスポーティ戦略を強く意識しており、インフィニティG35導入きっかけにそれまでのFFベースからFR主流へとインフィニティブランドの方向性を大きく軌道修正した。
それまでアメリカではスカイラインが正規販売されたことはなく、アメリカ人にとってV35は事実上の”スカイライン初体験”となった。
北米日産のマーケティング戦略では、日本におけるスカイラインのレース活動の歴史を紹介するなど、V35に秘めた日産の技術力を強くアピールし、それがアメリカ人の心を掴んだ。
また、アメリカの大手自動車各誌では、インフィニティG35のライバルをBMW3シリーズに設定して、サーキットやワインディングでの試乗記を掲載した。こうしたアメリカのトレンドを受けて、筆者も北米日産からインフィニティG35の広報車を借り出し、日本の自動車雑誌向けにBMW3シリーズや日系各車の比較試乗記事を多数執筆した。
こうしたアメリカ発の情報に、日本のユーザーからは「V35が3シリーズのライバルという設定はちょっと無理がある……。アメリカ人の考え方が理解できない」というような意見をよく聞いた。
ところが、G35が切り開いたインフィニティ戦略はその後、大成功を収める。
北米のインフィニティブランドで特に大成功したのが「FX」だ。V35がベースだが、V8エンジンモデルも投入され、ポルシェカイエンやBMW X5ライバルとしたハイパフォーマンスSUVだった
インフィニティG35は2ドアモデルや、G37として進化。また、G35とFRプラットフォームを共有するフーガが「M45」の名で、シーマが「Q45」で登場し、クロスオーバーとして「FX」も大ブレイクした。
■ V35以降日本のみ「スカイライン」の名を継承することに
モデル展開しては、2007年にFXよりひと回り小さいクロスオーバーSUVの「EX35」が誕生する。その実車が米デトロイトで公開された際、筆者は日産幹部らとさまざまな意見交換をした。
その際、日本市場導入の可能性についても話は出たが、まさかスカイラインを名乗るとは、筆者は想像できなかった。結果的に、スカイラインクロスオーバーをスカイラインとして認識する日本人はけっして多くなかった。
FXより一回り小型のSUV「EX」を日本では「スカイラインクロスオーバー」として販売。実は「EX」自体サイズ感が中途半端だったことが災いしたか、国内外問わず、販売不振のモデルとなった
一方で、こうしたインフィニティG35を起点とする”スカイライン戦略”のなかで、筆者を含めて、メディア関係者やユーザーが気にしてきたのが、「新GT-R(現行R35)」だ。R35が誕生に至る過程で、日産の幹部や担当開発者らとさまざまな機会で意見交換してきたが、結果的に”スカイラインとは切り離したスーパーモデル”という道を歩んだ。
さらに、日産はインフィニティモデル名をセダンとクーペがQ、またクロスオーバーのQXで統合したことで、Q50とQ60が誕生した。
現行の「Q60」文句なくカッコいいモデルなのだが、日本には投入されず。当時のインフィニティのトップが日産ブランドで販売する事を許さなかった?
こうしたなか、日産が2013年夏、グローバル報道陣向けに米西海岸で開催した「NISSAN360」で、星野朝子氏から私を含めて報道陣に「Q50をスカイラインとして日本に導入することをどう思うか?」という問いかけがあった……。
あれから8年が経ち、いま日本市場でのスカイライン存続か否かがメディアで話題となっている。
日産の経営陣より「スカイライン消滅」について否定はされた。しかしその前途が多難であることは間違いない。V37発売時にもあった「迷い」が吹っ切れ、新時代のスカイラインを創出して欲しい
グローバルでSUVシフトとEVシフトが進むなか、スカイラインはいま、未来に向けた岐路に立っていることは確かである。
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みんなのコメント
GT-Rではない別グレードもスカイラインとしての価値を共有していて憧れの存在だったから車として別格だったのであって
GT-Rが別の車になってしまった現在のスカイラインは
横綱大関不在のお客さんが入らない相撲巡業みたいなもんなのでは。
以前のモデルから継承したいのは分かるが、元からウケていない。
インフィニティモデルはまともですから、もういっそのことインフィニティを日産で売れば良い。