この記事をまとめると
■立山トンネルの無軌条電車事業が廃止されることになった
乗用車が走ると違反の「バス専用レーン」! 左折したい場合に走行するとどうなる?
■無軌条電車とはトロリーバスと呼ばれる乗り物だ
■トロリーバスについて詳しく解説する
「立山トンネル無軌条電車」の廃止が決定
2023年12月11日、全国のバスマニア・鉄道マニアの間に悲しい「お知らせ」が駆け巡った。富山県を走るわが国最後の「立山トンネル無軌条電車」が、2024年12月1日に廃止されることが発表されたのである。「無軌条電車」とは聞きなれない言葉だが、これは一般に「トロリーバス」と呼ばれている乗り物のことだ。もっとも、この呼び名も、いまとなってはあまりメジャーとはいえないだろう。
「無軌条電車」は軌条(線路、新都市交通やモノレールで使用されるものなどを含む)を使用しない電動車両を指すが、「トロリーバス」のことであるため電気自動車は含まれない。「トロリーバス」は、架線(トロリー線)からトロリー(集電装置)で動力源となる電気を得る。走行はゴムタイヤを使用し、公道(専用道の場合もある)を走る路線も多かったので、見た目は集電装置付きのバスという印象だ。
廃止となる「立山トンネル無軌条電車」は専用線だが、京都市・名古屋市・横浜市などでは、市営交通として路線バス同様に活躍をしていた。当時は路面電車が走っていたこともあり、電気の供給が行いやすかったという事情もある。最大のメリットは、線路を敷かずに(路面電車に比べて建設の初期コストが低い)大量輸送(当時のディーゼルバスに比べて輸送人員が多かった)ができるということだ。また、環境に優しいことも評価されていた。
おもしろいのは、公道を走る場合でもナンバープレートを付けないことだ。その理由は、電車の扱いを受けていたからである。法律の適用は少し複雑で、公道を走るときは道路交通法が適用される。ゆえに、運転手は大型2種免許を取得していなければならないが、加えて鉄道の運転免許である動力車操縦者運転免許(無軌条電車運転免許)も取得していなければならなかった。しかし、道路運送車両法は適用外で、代わりに鉄道事業法・軌道法といった法律の適用を受ける。
じつはいまでも注目されている
今回の廃止で「無軌条電車」はなくなるものの、代わりに電気バス(EVバス)が運行されることになっている。わが国では電気バスが注目されてきており、民間バス事業者を中心に年々導入事例が増えてきている。これらはすべて自動車の扱いであり、道路運送車輌法・道路交通法の適用を受ける。すなわち、電気バスは動力に電気モーターを使用する自動車という扱いなのだ。
「トロリーバス」が廃止された背景は、路面電車と同様にモータリゼーションによるところが大きい。さらに、ディーゼルバスがハイパワー化・大型化したことで、「トロリーバス」の大量輸送という優位性が崩れたことにも要因がある。コストについても、あくまで路面電車に比較して低いということであり、ディーゼルバスよりはコストがかかる。
冒頭のとおり、「トロリーバス」は今年の12月でわが国から完全に姿を消すことになるが、復活の可能性がまったくないわけではない。宇都宮ライトレール新規開業の例を見ればわかるように、これからの都市交通は多様化すると考えられるからだ。さらに環境問題に対応するため、電動車両が積極的に検討されるようになるだろう。
そのひとつに電動バスがあるのだが、1回の充電で走れる距離が短いという欠点がある。その解決のヒントとして、JR東日本の「EV-E301系」蓄電池駆動電車が注目されているのだ。これは蓄電池で走る電車だがパンダグラフを備えており、架線があるところでは充電しながら走ることが可能なのである。
同様に、停留所や道路の要所要所に架線を敷設し、充電をしながら走り続ける電動バスが、新たなトロリーバスとして開発される可能性が考えられる。さらに、先進安全技術を応用したカメラやセンサーで、架線や車線を認識して自動運行ができるようにもなるかもしれない。トロリーバスが復活する可能性は、決して皆無とはいえないのである。
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