ビッグマイナーチェンジを受けた新型BMW「530iLuxury」に今尾直樹が試乗した。走行用モーターを持たない、純粋なガソリン・エンジン搭載車の魅力とは。
こんなにいいクルマなのに……
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この電動化の時代に古きよきガソリン自動車が生き残っていた! この秋上陸したBMW530i Luxury、844万円がそれだ。これぞアッパー・ミドル・サルーンの太鼓判。こんなのがまだあったんですねー。まるで1990年代の“直6”を搭載する525iとか530iみたいだ、と、筆者は思った。
上品な外観に、ゴージャス、でも適度に控えめな内装。走り出せば、巌の如きボディの剛性感と上質で、しなやかな乗り心地にハッとしてグッときて思わずニンマリ。シルキー・スムーズなパワートレインが生み出す動力性能はおだやかでエレガント。聞こえてくるサウンドはよく調律されていて、爽やかで清々しい。530i LuxuryにはトラッドなBMWの神髄が詰まっている。
1972年発表の初代から数えて7代目となる現行G30型は、2016年の登場である。今年、4年目のフェイスリフトを受けて、後期型へと移行している。試乗したのは、その最新版の530iのM スポーツではない、スタンダード仕様である。Mスポーツだと19インチになるので、ここまでしなやかな乗り心地は望めないかもしれない。
フェイスリフトで、外観では前後デザインに若干のメスが入っている。フロントはグリルが横方向にちょっと広がり、長方形型だった2灯式ヘッドライトがL字型LEDに変更された。リアにもLEDライトが採用され、前期型よりシンプル&クリーンに仕立て直されている。
Sho TamuraSho Tamuraインテリアに大きな変更はないけれど、日本仕様ではレザー・シートを標準装備する。今回の個体は、およそ30万円のオプションの、よりソフトな肌触りのエクスクルーシブ・ナッパ・レザー仕様ゆえ、いっそう贅沢な雰囲気を醸し出している。Luxuryならではの高級車らしいウッドの木目もステキだ。
機能面では、近距離、中距離、長距離をそれぞれ担当する3眼カメラとレーダー、それに高い解析能力を備える最先端の運転支援システムを全モデルに標準装備したことが目玉だ。このシステムには「ハンズ・オフ機能付き渋滞運転支援機能」が含まれており、高速道路での渋滞時にステアリングから手を離して走行できる。
Sho TamuraSho Tamuraコネクティビティ関連では、「OK、BMW」と話しかけることで、車両の操作や目的地の設定が可能になっていたり、iPhoneでドア・ロックの解除/施錠、エンジン始動ができるようになったりしている。
これらはしかし今後どんどん採用されていく、やがて当たり前のものになっていく技術であり、BMWが看板とする“駆けぬける歓び”から見れば、瑣末なガジェットに過ぎない。それに対して、530i Luxuryのピュア・ガソリン・エンジンこそ、バイエル・エンジン製造会社の心臓であり、しかもそれはやがて消えゆく運命にある。2030年、遅くても2035年には、世界の主要マーケットで電動車以外の新車の販売が禁止となるからだ。
ああ。そう思うと、530i Luxuryが愛おしい。不憫でならぬ。こんなにいいクルマなのに……。
Sho TamuraSho TamuraSho TamuraSho Tamura素晴らしきバランスの良さ
1990年代の530iに較べると、現代の530iは、往時のバイエルンの旗艦7シリーズほどに成長している。全長は5m弱、ホイールベースは3m弱にも達しているのだ。
その大きなボディを1998ccの直列4気筒直噴ガソリンターボ・エンジンで、効率よく走らせる。ここに21世紀の技術の進化がある。実際、車検証を見て、筆者は思わず声をあげた。排気量が1.99リッターしかないことに。山道を走っているうちに意識から消えてしまったのです。あまりにスムーズで、すっかり直列6気筒に乗っている気分になっていて……。
Sho TamuraSho Tamura最高出力252ps/5200rpm、最大トルク350Nm /1450~4800rpmというスペックは、1988年に登場したE34型530iの218psと290 Nmを上まわる。けれど、ドライブ・フィールは筆者の記憶のなかの525iに近い。530iよりもちょっぴり控えめで、その控えめさ加減がスムーズネスとエレガンス方向に働いていて、525iというのはまことに好ましい、控えめなBMWだった。
現代の530iはホイールベースが2975mmもある恩恵で後席は足を組めるほどに広くて快適で、それでいて運転感覚が1990年代のE34型5シリーズほどコンパクトに感じられる。それはインテグラル・アクティブ・ステアリング(前後輪統合制御ステアリング・システム)のおかげであると思われる。当初、ときおり人工的に感じられた4輪操舵システムは、それと言われなければ気づかないほどにナチュラルに仕上がっている。こういう制御系の完成度が上がっているように感じるのも、発売から4年を経た熟成の賜物かもしれない。
Sho TamuraSho Tamura車重は1690kgと、サイズの割には軽い部類に入る。直6ではなくて、直4を搭載する恩恵でもある。前後重量配分はBMWが理想とする50:50で、鼻先の重さをまったく感じない。軽やかなハンドリングは、530i Luxuryの魅力のひとつである。
乗り心地は絶品だ。M スポーツ系BMW の硬さとは別種のしなやかさがある。BMW って乗り心地がよかったんだ~と、Mスポーツ系に親しんできた御仁なら再認識されるのではあるまいか。
245/45R18という極太扁平サイズのピレリPゼロは、ランフラット・タイヤなのだ。いや、この程度のサイズは、こんにち、控えめというべきかもしれない。それに、いちはやくランフラットを採用したBMWにはノウハウの蓄積があるのだろう。
Sho Tamura530iはアダプティブ・サスペンションを標準装備していることもあって、少なくとも箱根の山道を行ったり来たりしている限り、何度も書いているように、じつにしなやかなで快適な乗り心地を提供し続ける。
エンジンをまわしたときの静粛性も印象的で、沈着冷静なエグゼクティブの乗るサルーンとして、「わかっているなぁ、このひと」と言いたくバランスのよさをこのクルマは持っている。
BMWの日本法人が考える電動化戦略とは
現行5シリーズには、クリーン・ディーゼルもあれば、プラグ・イン・ハイブリッド(PHEV)もある。ピュア・ガソリン・エンジンを選ぶなんていうのは、いささか時代遅れなのかもしれない。そこがカッコいいよねぇ。自分、古い人間ですから。
カッコいいかどうかで、物事を判断していては子どもっぽすぎる。その埋め合わせは、また別の機会に。と、言い訳をしつつ、子どもっぽいおとなを許容する日本社会であってほしい、と筆者は望むものである。なにより、ピュア・ガソリン・エンジンの5シリーズが日本市場だけに残っている僥倖を、最後に強調しておきたい。
Sho TamuraSho Tamura2020年のフェイスリフトで欧州市場のG30型5シリーズは、4気筒と6気筒エンジンは、ガソリンもディーゼルも48Vマイルド・ハイブリッド(MHEV)化が図られているのである。ところが日本市場には、それらを導入しなかった。その理由を、BMW ジャパンのプロダクト・マネージャー、御舘康成(おたち・やすなり)さんに質問したところ、次のような丁寧な回答を得た。以下、要約してご紹介したい。
ひとつは、商品性向上の「お客さま価値」と価格とのバランス。48Vマイルド・ハイブリッド(以下48V)化による加速性能の力強さや燃費向上のメリットは理解しつつ、日本市場では0~80km/hを問われる交通環境にない。つまり、追加価格に見合う「お客さま価値」を感じていただくのは難しいと考えた。
また、エンジン・レスポンスや燃費効率においても BMWのガソリン/ディーゼル・エンジンは既に高い商品性能を実現しており、48V化によってエンジン性能の市場競合力を確保する必要を感じなかった。
Sho Tamuraもうひとつは、より先進性の高いPHEV(プラグイン・ハイブリッド)の普及促進をBMWがリードする、という方針だから。ハイブリッド(HEV)大国の日本は、HEVが登録車の4割をすでに占めている。つまり、多くのお客さまが電動走行(発進)を体感しており、48V化による「モーター・アシスト」だけを訴求することは電動化促進という視点ではあまり意味がない。それより、モーターだけで走る領域がより広いPHEVを広めることを重視したい。
具体的には530e (PHEV) Joy+は523i (ガソリン)に対して42万円高という戦略的な価格設定をしている。これは税金優遇(22万円)と補助金(20万円)を加味すると、実質的にガソリン車と同等価格でPHEVが買えることを意味する。これは極めてアグレッシブな提案で、電動化促進をリードするBMWのコミットメントを強く主張している。
このような戦略下で、48Vモデルを中途半端な価格アップで設定することは戦略のフォーカスがブレることになる。
Sho TamuraBMWのPHEVはわざわざバッテリーを後席下に配置し、ガソリン・タンクをトランク下に移設して重量バランスの維持にこだわるなど、「駆けぬける歓び」と電動走行を妥協なく両立した自信作で、今後の電動化推進をリードする存在と自負している。「これらの背景からガソリン車は現行仕様を維持し、PHEVを戦略的価格にしたとご理解ください」とのことだ。
ちなみに、先日X3のMパフォーマンス・モデルに48V搭載を発表した。SAV系の車両は重量があるので、48Vマイルド・ハイブリッド化による発進加速や燃費性能向上等の商品力(=お客さま価値)の向上が価格アップに見合うと判断したという。このように、モデル毎に適切に判断しているのだ。
以上のように、幸いなるかな、ピュア・エンジンを楽しめるのは、ハイブリッド先進国ニッポンの住民の特権なのだ。享受しようではありませんか。パワーがちょっと控えめな523i、678万円も気になるところです。
文・今尾直樹 写真・田村翔
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