燃費性能を考え、プロペラシャフトを採用しない4WDを各メーカーが販売しているが、運動性能や滑った際の駆動力の分配の速さなどに課題が多かった。そんな電動4WDのイメージを変えるシステムをホンダが開発中だ。渡辺敏史氏が体感する!!
※本稿は2025年2月のものです
文:渡辺敏史/写真:ホンダ、ベストカー編集部 ほか
初出:『ベストカー』2025年3月26日号
もう「生活四駆」とは言わせない!? ホンダの新4WDが常識を打ち破る!!
【画像ギャラリー】4WDの常識が変わる!! ホンダが挑む電動車時代に最適化した次世代e:HEV+新4WDシステム(16枚)
e:HEVの強みを活かした新4WD
ホンダの次世代e:HEVを雪上試乗。外見はヴェゼルだが内部には次世代版のe:HEVを搭載した物理的接続のない4WDだ
ホンダと4WDというと、寝た子を起こすようなもっさりした駆動メカニズムからなる「生活四駆」の印象を抱かれる方もいらっしゃると思う。が、近年はe:HEVに先読み制御を加えた機械式四駆で応答性やトラクション性能を改善し、積極的にドライビングを楽しめる四駆システムをZR-Vなどに搭載している。
そのe:HEVの強みを活かし高度化することをホンダが目論んでいるのが、リアアクスルをモーター駆動する物理的接続のない4WD化だ。
と、ここで疑念を抱く方も多いと思う。プロペラシャフトを持つ四駆のほうが、駆動力を後軸に継続的にかけ続けられる安心感があるのではないかと。
あえてホンダがそこを断つ決断をしたのは、燃費や効率のためだけではない。車両状態や駆動状態のセンシングの精細化、アーキテクチャーの軽量化を機に、次世代e:HEVでは動的統合制御の高度化を目指す、その一環としてのモーター4WD化というわけだ。
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ホンダの変化を体現する次世代電動四駆
ドライバーの意図を正確に読み取り制御する新4WDシステム。雪道だからこそ感じられる安心感の高さだった
今回雪上コースで試乗したのは、2024年末に行われた次世代e:HEVワークショップで披露された次世代小型車向け技術を内包したコンセプトカーだ。
ヴェゼルの衣を纏うが、中身は高速燃焼を採用した新パワーユニットにより高効率燃焼領域を従来比で約40%広げている。リアアクスルには出力約50kWのモーターを搭載、前輪側の駆動力はそのままにアドオンされるため、動力性能そのものの向上も著しい。
モーター四駆に乗ると、ともあれ感じるのはレスポンスのよさや駆動力の前後・左右輪制御の緻密さ、そして後輪側の蹴り出しの充分な力強さだ。
低ミュー路での曲がりやすさは従来型とは確実に一線を画するところだが、それが人工的に感じられないのは車体がドライバーの操作に応じて積極的に姿勢を変えていくからだろう。
アクセルを踏めば後軸が沈むし抜けば前軸に荷重が乗る、そういうセオリーを饒舌に表現してくれるから、ドライバーは自信を持ってクルマと対峙できる。
このところホンダは剛性至上主義からの脱却を図り、軽量化とともに車体のしなりなどの変動要素を運動性能に反映しようとしている。高度な統合制御のみならず、アナログ的プロセスを重んじているところが、次世代電動四駆の商品性の勘どころとなることは間違いなさそうだ。
* * *
これまでのイメージを一新させる出来のモーター4WD化。2026~2027年度に予定される市販化実現の折には、4WD技術で新たな水準点を打ち立てることになるかもしれない。
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番外コラム:プレリュード雪上試乗で感じるホンダのシャシー技術の進化
新型プレリュードのプロトタイプ(FF)にも雪上試乗
今回はオマケで新型プレリュードのプロトタイプ(FF)にも試乗した。
低ミュー環境で感心したのはS+モードのレスポンスもさることながら、パワートレーンの稼働とリニアに連動する擬似サウンドが駆動コントロールでも有用なこと、そして前後軸ともにイニシャルのグリップが盤石なことだ。
どんなに有能な統合制御ができたとしても、受け止める側の性能が低ければ元も子もない。現在、そして未来のホンダ車はシャシーの優位が支えることになる。プレリュードはそれを予見させる。
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みんなのコメント
トヨタは燃費を考えてか、三菱日産ほどは電動機出力は高めてないが、昔よりはリヤを積極的に使っている。
特別、ホンダの電動4WDが新しい感じはしないのだけど、何か新機軸があるのだろうか。記事を書くならその辺取材してほしい。