ダイハツの海外向け生産車両における不正に続き、2023年5月19日には国内販売されるロッキー/ライズのハイブリッド車にも認証手続きの不正が発覚! ダイハツの一連の不正が起こった背景とは一体?
※本稿は2023年6月のものです
文/佃義夫、ベストカー編集部、写真/ベストカー編集部、トヨタ、ダイハツ
初出:『ベストカー』2023年7月10日号
まさかの超人気ロッキー/ライズでも不正!! 認証申請不正発覚から見えたダイハツの「危機感の甘さ」
■国内向け車両でも不正が発覚
使いやすい5ナンバーサイズかつ好燃費のロッキーは魅力的なクルマだけに今回の不正は残念。単純なミスなのか、恣意的なものなのか、早急な解明が望まれる(写真はガソリンモデル)
2023年5月19日、ダイハツが生産しトヨタでもOEMで販売されるロッキー/ライズのハイブリッド車両にて、ポール側面衝突試験(UN-R135)に関する認証手続きに不正が発覚。ダイハツは同日、該当車両の出荷・販売を停止。国土交通省に報告した。
ダイハツは4月28日にも海外向け生産車両の側面衝突試験(UN-R95)にて、フロントドアの内張り部分に切れ込みを入れて衝突時に壊れやすい部分を作り、乗員への攻撃性をより低くコントロールしようとしたという不正が内部告発により発覚したばかり。今回の不正はそれを受けての社内点検で発覚した。
今回の不正の内容はいかなるものか。通常、ポール側面衝突試験は、下図で示したように時速32kmで直径254mmのポールに衝突させ、1.ダミーへの入力値が一定値以下であること(頭部・胸部・腹部など)、2.ドアが外れないこと、3.衝突後の燃料漏れの量が一定値以下であることを確認する。
これを運転席側、助手席側でそれぞれ行い、その数値の提出が必要となるが、ダイハツは助手席側こそ審査官立ち会いのもとで試験を実施したものの、運転席側は社内試験を選択(これ自体は問題ない)。その後、運転席側のデータを提出すべきところ、なぜか助手席側のものを提出した。
ポール側面衝突時の乗員保護試験(出典:国土交通省)
5月19日に行われた会見のなかでダイハツは、ガソリン車は運転席側、助手席側双方のデータを提出しており、ハイブリッド車の運転席側も充分法定基準値内に収まっていると主張。その後、5月24日に滋賀のテクニカルセンターにて運転席側の社内試験を行い、全測定項目で法定基準を満たしたと発表した。
だとしても、どうにも不可解な部分が残る今回の不正。国土交通省は5月26日、「型式認定申請における不正行為は、自動車ユーザーの信頼を損なう行為であり、極めて遺憾」とし、ダイハツに対し事実関係の詳細な調査と再発防止策の検討を実施し、速やかに報告するよう指示を出した。
●今回の認証申請における不正行為 対象車種
・ダイハツ ロッキーHEV(2021年11月販売開始):累計販売台数2万2329台
・トヨタ ライズHEV(2021年11月販売開始):累計販売台数5万6111台
※累計販売台数は2023年5月18日時点
■不正発覚後に見えたダイハツの甘さ
2023年4月28日の不正発覚の対象車種中、8万6000台以上と最も大きな販売規模であったヤリス エイティブ。新興国向けの小型セダンで、生産国はタイおよびマレーシアとなっている
「ダイハツよ、何をやっているのか」というのが、一連のダイハツの認証不正の受けとめだった。ダイハツと言えば唯一、関西の大阪に本拠を置き、その歴史も1907(明治40)年に発動機製造として創立しその後、大阪発動機に社名変更してダイハツブランドとなった由緒ある自動車メーカーだ。
1951年に現在のダイハツ工業となり、その後1967年にトヨタ自動車工業と業務提携し、1998年にトヨタが51.25%の株式を取得してトヨタの連結子会社に。2016年にトヨタ100%株式取得による完全子会社となった経緯がある。
言わばトヨタの「軍門」に下ったダイハツだが、小さいクルマづくりへの「良品廉価」を社是としてトヨタでも立ち入れない領域で確固たる地歩を築いてきた。
国内では、あの鈴木修氏率いるスズキをも抜いて軽自動車トップを確保し、ASEAN地域ではインドネシア、マレーシアでダイハツブランドの強さを形成した。
トヨタもグループでのダイハツの位置づけを重視して2017年1月に社内カンパニーのひとつ「新興国小型車カンパニー」を、ダイハツの良品廉価なモノづくりをベースとした競争力ある商品展開を目的として設立。
開発・生産・調達は基本的にダイハツに一本化され、トヨタは側面からサポートする体制となっていた。それだけ、トヨタはダイハツを信頼していたのだ。
それが今回、ダイハツ内部告発から東南アジアでの認証不正が発覚。5月連休直前に奥平総一郎ダイハツ工業社長が謝罪会見を行ったが、ダイハツサイドの危機感の薄さ、甘さが感じられた。
むしろ、トヨタのほうが豊田章男会長がタイ現地でダイハツの不正行為について改めて陳謝して「トヨタグループ全体の問題として先頭に立って信頼回復に努める」と、危機感の強さを示した。
不正が続いたことで販売現場への影響は避けられない。再発防止対策を徹底し、ユーザーの信頼回復が急務だ
ダイハツは海外向けだけでなく、国内向けでも安全性認証不正が見つかり、ダイハツの体質を問う厳しい声が相次いでいる。
もともとトヨタより歴史が古くプライドも高いダイハツ内部では、トヨタ完全子会社化の後からトップ以下幹部クラスがトヨタから天下りしてくることへの反発もあったようだ。現在の奥平社長もトヨタ時代は10代目カローラ開発責任者を務めるなど、佐藤恒治トヨタ新社長にとって“大先輩”にあたる。
おりしもエンジン不正問題で苦境にあったトヨタグループの商用車分野の日野自動車が、独ダイムラートラック傘下の三菱ふそうトラック・バスと統合することが突然、発表された。
50.1%出資の連結子会社である日野自をトヨタが支えきれないとして決断したようだが、ダイハツのケースもスズキとの統合があるか予断を許さない状況だ。
* * *
【続報】2023年5月31日、ダイハツは今回の認証申請の不正を受け、開発と法規認証の体制見直しを発表した。
ダイハツは衝突安全分野において性能開発・評価・認証の一連の流れを、ひとつの室の中で担当しており、チェック機能が働かなかったことが不正の原因のひとつと推定し、開発部門において性能開発・評価・認証の各機能を分離。
客観性を要する認証機能については開発部門から独立させ、品質保証部門とともに新たな本部組織へと改変するとして、全社的な品質マネジメント機能体制を強化するとしている。
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みんなのコメント
○ 超人気ロッキー/ライズでもまさかの不正!!
タイトル、まさかの使い方を間違えてるね。