いまどきは「穴開き」ディスクが主流
いまやスポーツバイクで主流の油圧式ディスクブレーキですが、初めて市販バイクが装備したのは1969年にホンダがリリースした「ドリームCB750FOUR」です。あらためて当時のディスクローターを見ると、いまどきのバイクに見られる複数の「穴」がありません。
【画像】「え…!」 これがディスクローターの進化です! 画像で見る(14枚)
「ドリームCB750FOUR」以降、スポーツバイクは大型車から徐々にディスクブレーキ化され、1970年代後半にはロードスポーツ車のフロントブレーキは、ほとんどがディスクブレーキになりました。そして欧州の大型車は1970年代半ばから、国産バイクは1970年代後半に、複数の丸い穴の開いたディスクローターが登場しました。そして現在のバイクは、穴開きディスクが一般的になっています。
想像以上に役目が多い!
ディスクローターの穴ですが、じつは様々な役目を持っています。まず主な目的は「放熱効果」です。市販バイクのディスクローターの素材はステンレスが一般的で、ある程度温度が上昇することで高い制動力を発揮します。しかし山道の下り坂などで頻繁にブレーキをかけたり、サーキット走行などで強いブレーキを多用すると、今度は熱が上がり過ぎて利きが悪くなってしまいます。そこで、たくさん穴を開けることでディスクの表面積を増やして、放熱性を向上させているのです。
次に「軽量化」も挙げられます。制動力をアップするにはディスクローターの直径を大きくすることが効果的ですが、大きくなれば当然重くなります。しかし、サスペンションより下の重さ、専門的には「バネ下荷重」と呼びますが、この重量が増すとタイヤが路面を追従する性能が低下します。
さらに「ジャイロ効果(高速で回転する物体がその場に留まろうとする力)」も重量が増すほど強くなるため、やはり路面追従性やハンドリングに悪影響が出ます。
そこでたくさん穴をあけることで、ディスクローターの軽量化を図っているのです。旧車の穴が無い小径ディスクより、現行車の穴が開いた大径ディスクの方が軽量なのです。
ちなみに、ロードレース最高峰のMotoGPを走るレーシングマシンは、猛烈に軽量で発熱に強いカーボン素材を採用するため、ディスクローターには穴が開いていません。
穴がディスクをキレイに保つ?
油圧式ディスクブレーキは、ブレーキキャリパーのディスクパッドがディスクローターを挟む摩擦力によって制動力が生まれます。その摩擦によってディスクパッドが摩耗し、削りカス(ブレーキダスト)が発生しますが(厳密にはディスクローターも摩耗してダストが発生する)、ブレーキダストは“コロ”の役になってブレーキの利きを悪くします。そこでディスクローターの穴には、ディスクやパッドの表面からブレーキダストを取り除く「クリーニング効果」もあります。
ちなみに、雨天時はディスクローターが濡れることで、ブレーキのかけ初めに制動力が発生するまで時間がかかりますが、ディスクの穴は表面の水滴を除去する効果もあります。
未舗装路(ダート走行)で泥汚れが激しいオフロード車の場合も泥を掻き落とす効果がありますが、近年はディスクの外周が大きく波打った形状の「ウェーブディスク」や「ペタルディスク」がクリーニング効果が大きいと言われます。
加えてディスクローターの穴には「ガス抜き」の効果もあります。油圧式ディスクブレーキのブレーキパッドは、高温になると摩擦材に含まれる樹脂などが気化してガスを発生する場合があります(材質や製法による)。するとこのガスがディスクローターとブレーキパッドの間で膜になり、制動力を落とす原因になります(フェード現象の一因)。そこでディスクローターに穴を開けると、そこからガスが抜けて膜にならない……という仕組みです。
というワケで、ディスクローターの穴には本当にたくさんの役目があります。そのため穴がブレーキダストや泥などで目詰まりすると、体感するほどではないと思いますがブレーキ性能が落ちてしまいます。
洗車の際に(たまには)、ディスクローターの穴も掃除すると良いかもしれません。竹串などを使えば、キズ付けずに汚れを落とせるでしょう。
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みんなのコメント
車だとドリルドローターは
クラックの原因になるから
あまり好まれないんだよな