締め切りとイベントと癒やし。
今回、筆者がお邪魔したのは11月12日にお台場で開催された第11回ストリートVWsジャンボリーというイベント。その名の通り、空冷フォルクスワーゲンの専門誌であるストリートVWs(内外出版社刊)主催のVW車のワンメイクにして11回目の開催になる歴史あるイベントである。ショップから個人まで、フォルクスワーゲンを愛するあらゆるスタイルの人々が自慢の愛車を飾り、同好の士と友好を深めるとともに、お宝を発掘する場でもある。
「第11回ストリートVWsジャンボリー」をスライドショー形式でみる
しかし舞台裏を明かすと筆者はこの時期、11月26日発売の『クラシック&スポーツカーVol.9』(ただ今全国の書店にて好評発売中!)の編集作業がクライマックス直前だった。普通なら、「締め切り前日に他誌のイベントで遊んでくるとかナニゴトだ!」と編集長のカミナリが落ちかねないところだが、我ながら優良な進行で筆者の担当ページは、あと1軒のクライアントからの返事待ちというところまで追い込んであったのだ(ネット時代のイマドキに校正紙とノートPCとカメラを手にショップに突撃、その場で撮影&文章・レイアウト修正という力業でなんとかしたのはヒミツ)。晴れて半日の自由時間を確保した筆者は、忙しさに荒んだ心を癒やすべく、意気揚々とお台場へと向かったのであった。
昨年末に東名で大型トラックに弾かれて失った愛車パンダの代わりに、なぜか今なお乗り続けている代車の軽ワゴンもすっかり馴染んできた。「クルマ、コレで充分だなぁ」なんてAUTOCAR記者にあるまじき想いでクルマを走らせていると、お台場に近づくほどに周りのクルマの様子が変わってきた。どうやら今日はVWsジャンボリーの他にアメリカン・トラッキン系のイベントもあるようで、隣の車線はシボレーのピックアップで、バックミラーに映るのは妙に低い車高以外はフルノーマルの初代マツダMPV、そして対向からはサファリ・ウィンドウを開け放ったVWバスがやってきた。う~ん、クルマ趣味を謳歌してますねぇ! ちょっと自分が気恥ずかしくなりササッと軽を地下駐車場に隠すように駐めると、会場へと歩いて行った。
ダイバーシティ東京の会場に着いての第一印象は「この前来たときとガンダム変わってる!」ではなく、目の前すべてが空冷フォルクスワーゲンという風景。10月にお邪魔したビンテージ空冷VWのイベント、5. Klassisches VW Treffen In Japanでも清らかなオリジナル・コンディションのビンテージVWが会場を埋める様子に驚いたのだが、それにも勝るとも劣らないほどのインパクトを受けたのだった。
空冷ワーゲンのワンメイク・イベントゆえの濃くも深すぎる世界
“空冷VW”というと、半世紀以上という歴史の長さとその味わい深くも愛嬌あるスタイリングから、単なるクルマ趣味という領域を越えて、カルチャーであり、ライフスタイルであり、一般的な概念ですらある存在。’50年代のスプリットやオーバル・ウィンドウであれ、後年式のメキシコ生産モデルであれ、清らかなオリジナル・コンディションであっても、カスタム&チューンドでも、それぞれのクルマとオーナーが積んできた業(カルマ)が色濃く表れたVWたちはいずれも非常に個性的だった。また、一般的なクルマ趣味でよく陥りがちな、過剰なまでの本国(VWの場合はドイツ)びいきに凝り固まらないユルさ(ただし拘るべきポイントに妥協はない)が心地よかった。そう、空冷VWは紛うことなきドイツ車だが、同時にアメ車でもあり、誤解を恐れずにいうと日本車であり、あまねく“ワーゲン”なのだ。
会場には先月のクラシシェスVWトレッフェン会場でも見かけたフルオリジナルのビンテージ・タイプ1がいれば、キャッチーなドレスアップ&ダウンが施されたカスタムカーも並ぶ。極太のドラッグ・スリックでリアフェンダーがパンパンのレーサーがいるかと思えば、日本製の超軽量ホイールにポテンザを履いた走り屋仕様もいる。キャンプサイトを思わせるタイプ2が並ぶ一角では、“個性的”なんて言葉では括れないほどのバラエティに富んだディスプレイが競われていた。レーシーだったり、ファンキーだったり、ガーリーだったり、痛かったりと「こんなにもクルマの愉しみ方の振り幅があるんだ!」とVWはまったくのビギナーな筆者ではあるが、目を見張るばかりの空間だった。
また、会場内にはフラット4やガレージビンテージ、ムーンアイズといったスペシャルショップのブースや個人によるスワップミートも多数出店。オタカラからガラクタまで様々なVWパーツやグッズなどが並べられ、VWオーナーならずとも財布の紐が緩んでしまうレア・アイテムは眼福である一方、目の毒でもあった。いつものクルマ・イベントと比べると、女性オーナーやファミリーでのエントリーが非常に多いことも印象に残った。そして、旧車メインのイベントながらメーカーサイドであるフォルクスワーゲン グループ ジャパンも社内でレストアしたビンテージモデルを会場に持ち込むなど、クルマ好きとしては思わずほっこりとしてしまう場面も見られるなど、いかにこの旧い空冷ワーゲンたちが愛されているかをより強く感じたイベントだった。
結局、会場をグルグルと廻っていると昼過ぎになっていたことに気付いた筆者。後ろ髪を引かれつつも会場を後にし、締め切りのラストスパートへと向かっていったのであった。
■ストリートVWs公式ウェブサイト
http://www.streetvws.com/
全48枚 「第11回ストリートVWsジャンボリー」詳細レポ
お台場のクルマ関連イベントは比較的男性密度が高いのが通例だが、本イベントでは家族連れも多かった。
フォルクスワーゲン グループ ジャパンは自社でレストアしたタイプ2を会場に持ち込み、展示していた。
会場入口では入場者にモロゾフとフォルクスワーゲンのコラボ・チョコレート “Beetle” が配られた。
街中ではなかなか見かけることも珍しい、スプリットやオーバルなどのビンテージVWがズラッと並ぶ。
50年以上の歴史を持つタイプ-1だけに、シングルナンバーを掲げる車両も、かなりの台数が参加。
この1953年型タイプ1コンバーチブルのように、車齢60年を越えるような個体も数多く残っている。
ボディカラーやディテール、モデファイの方向性など、それぞれの違いを見て回るだけでも楽しい。
車高のバランスとホイールのチョイス、仕上がりのクリーンさが個人的にツボにはまった1台。
こちらのタイプ1は限りなく着地状態という、ショッキングな車高でギャラリーの注目を集めていた。
ドラッグレース用の競技車として製作されたタイプ1。ボンネット上のメーターフードがカッコイイ!
牽引フックやボンネットピンが気になる筆者にビビッと来た、フロントフードのフードピン。
ドラッグレーサー・スタイルでもこちらはナンバー付き。ラグトップがストリートカーっぽい。
アルミモノコックのフルバケットシートがアメリカちっく。グレーの布張りってのもイイですね~。
超軽量な国産ホイールと安全燃料タンク、レカロのフルバケが不穏な空気のストリートレーサー。
ブロンズのCE28とポルシェ911用のドリルド・ブレーキだけを見ると、とてもタイプ1とは思えない。
タミヤのラジコンやミニ四駆などでも懐かしい、タイプ1ベースのオフロードバギー、バハバグ。
美しくレストアされた車両も、ストーリーを感じさせるディスプレイでより引き立てられていた。
車両の横にはレストアの過程を記録した写真が飾られていた。作業の困難さと愛情を感じさせられた。
筆者が子供の頃には赤や黄、オレンジのボディにラリーストライプの入ったタイプ1をよく見かけた。
FOR SALEだった2003年型のメキシコ製ビートル。黒いドアハンドルやカラードバンパーがイイ感じ。
初代T1からT2、T3まで、個性的なクルマが数多くエントリーした、リアエンジンの商用車タイプ2。
タイプ2はチューンでもドレスアップでもなく、オーナーの生き様を体現したような個体が多かった。
森に住まう世捨て人の住み処か、世紀末世界かといった、無常観と生活臭が入り乱れたディスプレイ。
ブロックパターンのグラベルタイヤ履きにアフリカのサファリ・ツアーバスを妄想してしまった1台。
グレイトフル・デッド・フリークのツアーバスを思わせるカラーリングにモデファイされたレイトバス。
もちろん場内のケータリング・サービスもほとんどがタイプ2。VWのタフさを感じさせられる風景だ。
キャンパー仕様のタイプ2が並ぶ一角は、まさにキャンプ場か屋台村! 快適に住めちゃいますね~。
こちらに至ってはサイドオーニングというよりもはや家! 僕の部屋より居心地良さそうです!
タイプ3もセダン、ファストバック、バリアントの各ボディのモデルがエントリーしていた。
カルマンによるコーチビルド・モデル、カルマンギアもエントリー。こちらはタイプ3ベースのモデル。
ドイツの郵便配送用として’60年代にウエストファリア社で架装・生産されたタイプ147。珍しい!
こちらも非常に珍しい! タイプ4ベースのブラジルVW独自開発モデルのブラジリア・・・ですよね?
水冷VWでのエントラントは少数派だったが、圧倒的に目を惹いたゴルフ1の北米仕様車ラビット!
角目の規格ヘッドライトや5マイルバンパー、そしてこのシートベルト! 北米仕様ならではの装備だ。
ポルシェでのエントリーもOKなこのイベント…って、こちらの356はインターメカニカ?…かな。
フォルクスワーゲン グループ ジャパンはザ・ビートルをはじめ、同社の最新のラインナップを展示。
COX製パーツで武装されたゴルフGTi。今や正規ディーラーでチューニングカーを買うことができる。
新型アルテオンをはじめ、パサートやゴルフなど最新のVWラインナップの公道試乗会も開催された。
入場ゲート横には空冷VWスペシャリストのブースが並ぶ。我が国を代表するVWショップ、フラット4。
フラット4ブースには素晴らしいコンディションの’50年代のタイプ1が展示・販売されていた。
先月開催の第5回クラシシェスVWトレッフェンの記念グッズや、新発売となったばかりのDVDも販売。
関西の空冷スペシャリスト、ガレージビンテージも出店。ビンテージ用バイアス・タイヤなどを販売。
我が国におけるアメリカン・モーターカルチャーのビッグネーム、ムーンアイズのブースも賑わっていた。
葛飾のマイボウズは同社が販売代理店を務めるドイツのVWクラシックパーツと合同でブースを出店。
空冷VWのパーツ以外にもグッズやアパレル、アクセサリーまで、様々なショップが出店していた。
ストリートVWs編集部と版元の内外出版社のブース。今回はお招きいただきありがとうございました。
編集部ブースでは1回500円で空くじなしのガラポン大抽選会を実施。賞品はご覧の通りかなり豪華。
書店の店頭では入手が困難となっているストリートVWs誌のバックナンバーの販売も行われた。
ガレージセールで気になったモノをパチリ。純正フロアマットと榊原郁恵のLPレコードが並ぶ店頭。
手動計算機? と思ったのだが、小切手や領収書に印字する “チェックライター” という事務機器でした。
なぜか工作機械などに取り付けられていたビンテージな銘板も売られていた。価格応談が気になった!
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