2020年度末が迫っているが、そうなると注目を集めるのが年度末での販売台数ランキングだ。各ディーラーのセールス攻勢を踏まえ、1位となるのは軽自動車なのか、それとも普通自動車なのか。
さらにスズキが躍進するなど各メーカーの販売台数のランキングにも変化がみられる。
今回は2020年度の販売台数ランキングを予想する。
文/小林敦志、写真/ベストカー編集部
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■今年度の注目車、注目メーカーはコレだ!
今年に限ったことではないが、軽自動車販売で首位争いをしているスズキとダイハツに注目だ
4月上旬になると、自販連(日本自動車販売協会連合会)と全軽自協(全国軽自動車協会連合会)から、2021年3月単月の新車販売台数が発表となる。そして、それと同時に2020事業年度(2020年4月~2021年3月)の年間販売台数もまとまる。
筆者は毎年、2月単月の新車販売台数が発表となる3月上旬に、自販連と全軽自協の統計を基に、4月から翌年年2月までの“事業年度締め”における、気になるブランドやモデルの累計年間販売台数を調べ、事業年度締め年間販売台数のランキングの行方を探っている。
今年も、2021年3月上旬に、2021年2月単月の新車販売台数が発表となったので、2020年4月から2021年2月までの、気になるブランドとモデルの累計販売台数を独自にまとめた。
気になるブランドとは、スズキとダイハツ。暦年締め年間販売台数でもバチバチと軽自動車販売トップブランド争いを展開している両メーカーの動きはいつも目が離せない。
注目モデルはホンダ N-BOX。日本一売れているクルマとして君臨する存在だ
そしてモデルでは、ホンダ N-BOX。N-BOXは2019事業年度締めでの年間販売台数で登録車も含めてトップとなっている。そして、その時点で事業年度締め年間販売台数では、軽自動車のみでは5年連続、登録車も含んだランキングでは3年連続トップとなっており、“日本一売れているクルマ”として君臨している。
例年ならこの時点でN-BOXのトップがほぼ確定しているのだが(2位の車種に大差をつけている)、今期は少々勝手が違う、ヤリス(ヤリス クロス含む)の存在である。
2020年2月から正式発売されたヤリスだが、2020年9月以降含軽統計では、N-BOXよりも販売台数が多く、2021年2月までトップの地位を維持している。
こうなると、「もしかしたら、2020事業年度はN-BOXがトップ陥落かも?」と思いながら集計作業を進めた。
そして、2020年4月から2021年2月までの累計販売では、N-BOXが17万736台に対し、ヤリスが17万4186台となった。その差は僅か3450台なのだが、2021年3月を残してヤリスがいまのところN-BOXを抜きトップとなっている。
■N-BOXの牙城を崩すか!? 2020年にはヤリスがいる!
2月までの集計ではわずかの差でN-BOXを抑え、トヨタ ヤリスがトップとなっている。このまま逃げ切るのか!?
もちろん僅差でのヤリストップなので、この時点で2020事業年度締めでもヤリスがトップになるとは、まだまだいえない状況にある。
軽自動車は年度末決算セール後半、つまり3月でも下旬近くなるにつれ、未使用状態の在庫車をディーラー名義などで“自社届け出”して販売台数の上積みをしかけてくる。(後に自社届け出車両は届け出済み未使用軽中古車として、中古車市場で流通)
しかし今期はコロナ禍でしかも、世界的半導体不足問題もあり、例年通りに在庫が豊富で自社届け出やり放題という状況にはない可能性もあるので、N-BOXの追い上げが厳しいかもしれないとの見方がある。
そして、もうひとつが納期遅延を抱えるヤリス側の事情である。つい最近まで、トヨタのウエブサイト上での“工場出荷目処”が、通常のヤリスならば1~2カ月となっていたのだが、本稿執筆中に調べると“詳しくは販売店でお問合せください”となっていた。
現在ヤリスの納期に乱れが生じていると予想される。増産をかけてラストスパートなるか?
このような表示が出ていると、納期が乱れていることが多いので、納期遅延となっている様子。さらにヤリス クロスにいたっては販売現場で聞くと、「すでにいま受注をいただいても、納車は10月ごろになりそうです」とのこと。
つまり、納期に乱れが出ているので、ヤリスも自社登録や、レンタカーなどフリート販売の積極化などで販売台数を上積みするにしても、かなり限定的とならざるをえないことになるかもしれない。
もちろん、とくにヤリス クロスでは、大量のバックオーダーを抱えているので、増産をかければ販売台数の上積みは可能とはなる。
それでも両車ともに販売トップの座を獲りたいだろうから、多少無理をして僅差でどちらかがトップとなるというパターンになりそうだ。とにかく、常勝N-BOXを脅かす存在が登録車のヤリスというのは、かなり意外な状態になっているといえるだろう。
■毎年恒例スズキとダイハツの軽自動車トップ争い
2月の段階では1万台あまりの差でダイハツがリード。しかし貨物車を除いた台数ではスズキがトップとなる。熾烈な争いだ
そして、毎回恒例となるスズキとダイハツでの、軽自動車販売ブランドトップ争い。
これも、2020年4月から2021年2月までの累計販売台数を集計すると、ダイハツが48万2183台、スズキが46万9044台となった。その差が約1.3万台となっているので、これをスズキが3月だけでひっくり返すのはかなり厳しいので、ダイハツがこのままトップとなりそうである。
しかし、ダイハツトップを支えているのは貨物車ともいえる状況にある。
軽四輪乗用車だけの累計販売台数をみると、ダイハツが35万3553台なのに対し、スズキが36万3107台となり、スズキがトップとなっているのである。その差は9554台となっているので、軽四輪乗用車ではダイハツがスズキをひっくり返すのは厳しいと言えるだろう。
軽四輪貨物は軽乗用車より価格も安いので、とくに軽トラックは販売台数上積みのため、自社届け出がよく行われている。
定点観測している未使用中古車を多く扱う中古車展示場では、貨物車を問わずダイハツの届け出済み未使用軽中古車が目立つので(スズキが少ないというわけではない)、トップ死守でなりふり構わないといった様子が見える。
先頃2021年6月での退任を表明したスズキの鈴木修会長(右)。退任後のランキングにも要注目だ
軽自動車はブランドを問わず、以前とは比べものにならないほど無理な販売が目立っている。その“無理”とは値引き額の拡大。利幅の少ない軽自動車で20万円前後の値引きも珍しくない状況では、“赤字にならない程度”の極端な薄利多売がブランドを問わず行われているのが現状。
スズキとダイハツは、とくに軽自動車では“業販(正規新車ディーラーと新車の販売協力関係となっているモータースや中古車店などを通しての販売)”比率の高さは有名な話。しかも、同じ業販店でスズキもダイハツも扱っているケースもある。
そこで両メーカーでは、そのような業販店を通してお互い情報収集を行い、ライバルに販売台数で負けないように自社届け出の規模を毎月調整しているとされている。
そして、いままではスズキの鈴木 修会長には世話になっているとして、スズキの軽自動車の業販を積極化する業販店が目立つといった話も聞いたことがある。
その鈴木修 会長は先ほど引退を表明している。鈴木 会長が退いたあとのスズキとダイハツのバトルに異変が起きるか起きないかも、今後は注目していきたいトピックである。
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みんなのコメント
車種別で台数比較するのに何故ヤリスとヤリスクロスが一括りなんですか?
それならN-BOXとそれ以外のNシリーズも一括りにしないと比較にならないのではないでしょうか