Xは売れているのか、売れていないのか?
text:Kenji Momota(桃田健史)
【画像】スカイアクティブXにまつわる40枚の写真【ディテール】 全40枚
マツダが鳴り物入りで市場導入した、次世代ガソリンエンジン「スカイアクティブX」
実売の状況は、どうなっているのだろうか?
スカイアクティブXは現在、「マツダ3」と「CX-30」の2モデル向けに搭載されている。
一般社団法人日本自動車販売協会連合会による、乗用車ブランド通称名称での販売台数ではエンジン別の表示はない。
そこでマツダ本社関係者に直接聞いたところ、マツダ3、CX-30それぞれの全販売台数のうち「5%程度だ」という。
マツダとしての当初計画では「少なくとも10%」を狙っていたというので、その半分程度で伸び悩んでいる状況にある。
だたし、これはあくまでも日本市場での話だ。
例えば、オランダの場合、CX-30の販売では、ほぼすべてがスカイアクティブX搭載車という状況だ。
背景にあるのは、欧州におけるCO2規制だ。
全体としてみれば、欧州連合(EU)の執務機関である欧州委員会(EC)による規制がある。
アメリカや日本に比べても、足元から当面先の設定年までの規制値が厳しく、中国や経済新興国を含めた世界市場で最も厳しい。
その上で、欧州各国では独自に、ユーザーに対してもモデル毎にCO2排出量を明示しており、数値が悪いモデルを購入する場合、ペナルティを支払う場合がある。
エンジンラインナップ強化の理由
そうした欧州CO2規制を睨んで、スカイアクティブXは導入された。
結果的に、欧州での販売では狙い通りの展開にある。
こうした規制への対応を主体としてエンジン開発は、自動車メーカー各社にとっての常識となっている。
マツダも同様である。
時計の針を少し戻すと、いま(2020年8月)から約3年前、ドイツのフランクフルト近郊でマツダのエンジン開発部門や商品開発部門の幹部らと、スカイアクティブXのプロトタイプについて、じっくり意見交換した。
その中で、「仕向け地別に、様々なエンジンラインナップを取り揃えることは当然のことだ」という姿勢をはっきりと見せた。
さらに「その結果として、こうしたレイアウトのエンジンになった」と、スカイアクティブX実機について説明したのだ。
「こうしたレイアウト」とは、2.0Lガソリンエンジン対して、クランク軸から動力を得るエアサプライ装置があり、さらに小型モーターも装着されているという、珍しいレイアウトを指す。
当時はまだ、プロトタイプであったこともあり、走行した感触としては荒削りなところがあったが、言い換えれば大きな特長を実感した。
マツダ幹部は「この状態で、世界各国の一部報道陣を対象とする国際試乗会をおこなうのは、われわれとしてもかなり思い切った決断」とも表現した。
規制と理想をバランスさせた新技術
そこまでしても、マツダはスカイアクティブXの量産を急いだ。
世界各国や地域でCO2規制の強化のため、マツダ商品ラインナップ第6世代から導入したスカイアクティブ技術の多様化を進めていたからだ。
スカイアクティブの原点にあるのは「燃焼を極める」ことだ。
内燃機関という動力源の基本中の基本である、燃焼室内で燃料がどのように燃えるのかを、既成の概念に捉われず、エンジニアたちが真正面から理想的な燃料を考えた。
結果として、燃焼室内の圧縮比が、一般的なガソリンエンジンとディーゼルエンジンでの常識を覆した。
さらに、キレイな燃焼をおこなうことで、排気後における後処理での清浄化装置に対するコストを大幅に軽減することに成功した。
こうした技術をさらに深堀りしたのが、超希薄な燃焼を量産化したスカイアクティブXだ。
理想的な技術ありき、かつ、仕向け地での規制に左右される、という思い切った商品であるがゆえに、日本ではマツダ3もCX-30も、新車販売直後の新車効果がある。
だが定常的に売り上げを伸ばしていくためには、さらなる工夫が必要である。
この点について、マツダは十分に承知しており、具体的な策についても検討が始まっている。
スカイアクティブX 今後どうなる
CX-30開発を統括する、マツダ商品本部・主査の佐賀尚人氏はスカイアクティブXについて「(現状で)これが最終系ではなく、やっと生んだエンジンなので、これから改良を進める」という。
「(方向性としては)ハイパワーなスペックではなく、クルマ全体としてトータルバランスを考慮していきたい」と今後の進め方を示した。
今回、CX-30のスカイアクティブX搭載車で、長野県内のワインディング路、市街地、そしてマツダR&Dセンター横浜の目指して中央高速・圏央道・東名高速・首都高速を走った。
低回転域からモーターアシストし、エアサプライ装置の効果が分かる2500rpmあたりからさらに自然な吹き上がり。2.0L車としては十分な走りの余裕が感じる。
フロントヘビーな印象もまったくなく、ワインディングの走りで、助手席の編集者と共に自然と笑顔になった。
今回はAT車であり、トランスミッション制御技術がスカイアクティブXをほど良くバランス。一方で、マツダらしいMT車では、スカイアクティブXの特長がさらに鮮明になる。
マツダによると、マツダ3とCX-30において、スカイアクティブXを今後「走りのチューニングをしっかりおこなうことと並行して、改めて技術的な背景と、そのマツダらしさについて、販売店とユーザーにしっかりと伝えることを実行に移していきたい」という。
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