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「日本のゼロヨン史を動かしたロータリーロケット」ビッグタービンを2機掛けする750馬力のFD3S【OPTION back number】

掲載 更新 8
「日本のゼロヨン史を動かしたロータリーロケット」ビッグタービンを2機掛けする750馬力のFD3S【OPTION back number】

今回紹介するのは、2001年当時のドラッグレース日本記録である9秒62をマークしたKSPエンジニアリングのFD3Sだ。ド派手な外装に目が行きがちだが、注目すべきは内に秘められた走りへの拘り。コンマ1秒を稼ぐために施された各部のメイキングに迫っていく。(OPTION誌2002年1月号より抜粋)

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「日本のゼロヨン史を動かしたロータリーロケット」ビッグタービンを2機掛けする750馬力のFD3S【OPTION back number】

750馬力のREパワーが炸裂!クォーターマイルを9秒6で駆け抜ける!

フルチューンスペックでも2年間ノンオーバーホール!

元々スタッフのほぼ全員がRX-7に乗っていた経験を持つKSPエンジニアリング。そんなこともあり、FD3Sでのドラッグレース挑戦もごく自然な流れだったという。

このFD3Sを作るきっかけは2000年の東京オートサロン。ショーで映えるデモカーの製作を開始し、その心臓部に組み込むGT3037Sタービンを2つ手に入れたところから始まる。この巨大なタービンをツインでどのように回すかというテーマでチューニングを本格化させ、2年間という月日を費やしてトライ&エラーを繰り返した。そして、その末に辿り着いたのが、ゼロヨン9秒62という大記録なのだ。

エンジン本体は両面6mmブリッジポート加工を施した13B-REW。アペックスシールは純正3分割にWPC加工を施して強化し、FC3S前期の低圧縮ローターを組み込んでハイブーストに備える。インジェクターはノーマルのものにプラスして550cc×4本を追加。これらはF-CON Vプロで綿密に制御されている。冷却系はHKSのGTインタークーラーにオリジナルの3層真鍮ラジエター、トラストのオイルクーラーで強化する。

それにしても、ポーテッドシュラウド付きのGT3037Sタービンが縦に2連で装備されたエンジンルームは圧巻の一言だ。EXマニはKSPエンジニアリングオリジナル。

このパワーユニットが絞り出す最高出力は750ps。パワー特性は超高回転型なのだが、それに合わせた走り方は独特だ。1速10000rpmでシフトアップ、そこからギヤを上げるごとに500rpmずつシフトポイントを下げていき、5速8400rpmでゴール。つまり、トップエンドの2000rpmだけでアタックを完結させているのだ。なお、このエンジンは製作から記録樹立までの2年間、一度も壊れていないというから恐れ入る。

なお、追加された550ccインジェクターはオリジナルのホルダーに30度の角度で取り付けられる。この角度がアクセルレスポンスに大きな影響を及ぼすという。

エンジンマウントは開発中のプロトタイプ。エンジンが押す方向はボールで受け、戻り側はウレタンで吸収するようになっている。

ミッションはHKSの6速シーケンシャルドグ。シフトレバーのガタ防止やシフトミスを防ぐための小加工が施されている。クラッチはOS技研のトリプルプレートを合わせる。

サスペンションはHKSのハイパーダンパーをベースにしたKSPオリジナルのドラッグ仕様。合わされるスプリングはフロントが4kg/mm、リヤが6kg/mmというバネレート構成だ。スタートした瞬間に沈み込んでトラクションが前0:後100になるようなイメージでセットアップされている。

アーム類は余計なアライメント変化を抑え、ダイレクトなフィーリングを実現するために全てのブッシュをピロ化している。

トランクエンドにはトラクション確保のためのウエイトを搭載。サスセッティングの煮詰めが進むに連れてウエイトは少しずつ減っているという。

ステアリングはパーソナルの350φを装備。エアコン等は撤去され、空いたセンターパネルにはHKSのブースト計、油圧計、油温計が並ぶ。

徹底的な軽量化が施されたインテリア。シートはレカロのSP-GN。ロールバーも装備されているが、点数は4点式に抑えられている。コレクタータンクはワンオフ。内蔵のニスモポンプは、GT-Rでいえば1基で600psまで対応できるものを2基使用する。

KSPオリジナルのフロントバンパータイプIIIは5型純正のラインをベースにアレンジを加えたもの。インタークーラーやオイルクーラーの容量アップにも対応できるアイテムだ。エアロミラーはガナドール製のものをチョイス。

サイドステップもオリジナル。タイヤハウス内に溜まるエアーを効果的に排出するためのベンチレーションが設けられている。

リヤにはタイヤ後部の乱流を抑えて空気抵抗を低減させるアンダースポイラーと、超高速域での安定性に寄与するリヤウイングスポイラータイプIIを装備。

ホイールは前後ともにP1レーシング。タイヤサイズはフロントが215/45R17、リヤが275/40R17という構成だ。

リヤタイヤはスタート時のキャンバー角変化を考慮してアームの加工を行い、1G状態でポジティブキャンバーになるよう設定されている。フロントはその逆でネガティブキャンバーになるようセット。

「このクルマは特別なことは何もやっていません。大事にしているのは確実に組み、確実に制御すること。そして最も重要視しているのが、ドライバーがどんな状況でも確実にドライブできるような運転しやすいクルマに仕上げるということです」とは、KSPエンジニアリングの担当メカ。

実際、シフトレバーのガタを無くしたり、エンジンの揺れを抑えるマウントを開発したりという地道なチューニングの積み重ねがミスのない走りを生み、日本記録に繋がったのだという。ビッグパワーを発生させるエンジンチューニングの技術も必要だが、このような細かい気配りの積み重ねがKSPチューン最大のポイントと言えるのかもしれない。

●取材協力:KSPエンジニアリング 東京都武蔵村山市残堀2-29-1 TEL:042-569-2930

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みんなのコメント

8件
  • 当時このタイムに度肝を抜かれました。何より足回りのセッティングに関心があり、参考にさせていただきました。タイムは遠く及びませんでしたが。
  • ロータリーのもつ発進トルクの線の細さと安定したトルク変動特性
    ホイールスピンを少なくする要素とタイヤを長持ちさせる要素が存在する
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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