電気自動車(以下、EV)が登場した時、小型のボディーに電池を積んで街中を短時間、短距離で走るコミューターが主流だった。その後、電池の開発が進んで大型のSUVにもEVは拡がった。車種もSUVだけでなく、フォーマルセダンにまで拡大している。ただ、いずれも実用性を重視したクルマが中心だったが、最近になってスポーツ性能の強化という新たなトレンドが芽生えつつある。そしてついに、ファミリーカーをベースにしたメーカーチューンのスポーツモデルが続々登場。日産は『アリア』をベースに、ヒョンデは『IONIQ5』をベースに、メーカー系列のチューナーがモータースポーツで培ったノウハウを最新EVに注入し始めた。
ヒョンデは、以前からWRC(世界ラリー選手権)にワークスチームを投入しトヨタと好勝負を繰り広げているが、同時に『IONIQ5』の開発をドイツのニュルブルクリンクで行なってきた。今回、投入した『IONIQ5 N』は、その走り込みの集大成とも言うべき完成度の高いスポーツモデルだ。
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一方、日産のNISMOは、レースを頂点としたモータースポーツ部門の元締め的な存在。『GT-R』や『Z』、スーパーフォーミュラの開発で、世界トップレベルの技術を持っており、今回の『アリア』も今や日産車の最上級モデルのひとつとして、ラインアップされている。今回はこのスポーツEVを乗り比べたが、性格は180度異なるぐらい違っていた。
『IONIQ5 N』は運転席に座った瞬間から、ノーマル仕様とは全く別の世界が展開されていることがわかった。ハンドルスポークにはスイッチやダイヤルがいくつも並び、それぞれを調節しながら走るというスタイル。最新のGTカーやフォーミュラEのマシンのような雰囲気で、前後輪の駆動比率、ブレーキの回生制動、左足ブレーキモードなどが調整できる。さらに目の前のメーターには、EVなのになぜかエンジン回転計を表示できるようになっており、とにかくレーシングカーに近い感覚のEVに仕上がっていることが一目瞭然だ。『アリア NISMO』は『IONIQ5 N』に比べるとおとなしい印象があるが『アリア』シリーズの最上級車らしい品質の追求とチューニングが施されている。
最高出力650馬力のハイパフォーマンスモデル
ヒョンデ『IONIQ 5 N』
Specification
■全長×全幅×全高:4715×1940×1625mm
■ホイールベース:3000mm
■車両重量:2210kg
■電池容量:84.0kWh
■モーター型式:永久磁石同期型
■最高出力:前238PS/後412PS
■最大トルク:前370Nm/後400Nm
■変速機:機械式1段
■一充電走行距離:561km(WLTCモード)
■車両本体価格:858万円
ノーマル仕様より全幅は50mm広く、全高は20mm低い。角目4灯のヘッドライトはノーマル仕様と同じだが、バンパーは形状、色ともに「N」独自のデザイン。空力性能の高いスポーツ仕様。
ホイールベースは3mでかなり長い。前後のバンパーなどで、全長はノーマル仕様より80mm長い。サスペンション、ブレーキなどもサーキットで使えるレベルにチューンされているのが特徴。
ガソリン車ならバンパーの下にマフラーがあるが、EVなのでリアのデザインもスッキリ。EVだが3種類の走行音を選べるようになっており、シフトチェンジで音の変化を楽しめる。
高い空力性能を実現したNISMOチューニング
日産『アリア NISMO』
Specification
■全長×全幅×全高:4650×1850×1650mm
■ホイールベース:2775mm
■車両重量:2210kg
■電池容量:91.0kWh
■モーター型式:交流同期型
■最高出力:前218PS/後218PS
■最大トルク:前300Nm/後300Nm
■変速機:機械式1段
■一充電走行距離:未計測
■車両本体価格:944万1300円
※「B9 e-4ORCE 4WD」
NISMO専用パーツが多数組み込まれたフロントマスク。バンパーはNISMOデカール入りの専用パーツを採用。車体サイズは全幅はノーマルと同じだが、全高は5mm低い1650mm。
ホイールベースはノーマル仕様と同じ2775mmだが、全長は55mm長く4650mmある。ドア下のアンダーフィニッシャーも専用デザイン。アルミホイールはエンケイ製の20インチを装着している。
リアバンパーは空力を重視した専用デザイン。中央のLEDフォグランプもNISMO仕様。ルーフスポイラーも空力を重視した専用デザインを装着している。ボディーカラーは6種から選べる。
スポーツドライビングを楽しむための工夫や仕掛けが満載
ヒョンデ『IONIQ 5 N』
エンジンルームノーマル仕様のフロントボンネットは小物が入るトランクスペースだが、『N』はモーターが搭載されているためカバーで覆われている。
運転席と各種装備12.3インチのカラーLCDディスプレイと、12.3インチナビゲーションが並ぶインパネはノーマル仕様と同じだが表示項目は異なる。
シートスペース前席はセミバケットで体をしっかりホールド。ロングホイールベースのおかげで後席の足元は広く、ヘッドスペースも確保されている。
ラゲージスペース後席は6対4で背もたれだけが前倒しできて荷室になる。床下にもサブトランクがあり、ここに充電ケーブルを収納できる。
【 ココがポイント!】様々な走りを楽しめるモードや機能が満載『IONIQ 5 N』のハンドルは3本のスポーク部分に様々な機能を持つスイッチやボタンが集約されている。ドライブモード、サーキットモード、ブーストモードなどの操作ができる。
【 ココがポイント!】エンジン非搭載なのに回転計が表示される!?
EVなのにタコメーターを表示できるようになっており、レシプロエンジンの気分を盛り上げてくれる。人工的なエキゾースト音もスポーツドライブを楽しむ演出のひとつ。
日産『アリア NISMO』
エンジンルーム『アリア』はフロントボンネット下にはモーターが格納されており、収納スペースはない。写真を見ると構造がシンプルなことがわかる。
運転席と各種装備大型ディスプレイのインターフェースはノーマル仕様と同じだがメーター内の表示はNISMO仕様。ハンドルもスポーツ仕様のデザイン。
シートスペーススエード調表皮の専用シートは体をしっかり支える形状。シートの調整は手動で行なう。コンソール先端にある塊はATのシフトノブ。
ラゲージスペース後輪の出っ張りも少なく、床面からトノカバーまでの高さも500mm近くあるが充電ケーブルをしまう床下収納スペースはない。
【 ココがポイント!】力強いレスポンスと伸びのある加速を発揮するNISMOモードドライブモードはSNOW/ECO/STANDARDのほかにNISMOモードが選べる。ベースモデルに加速チューニングを施しており、レスポンスを最大限に向上させている。
【 ココがポイント!】ミシュランのEV専用高性能タイヤを装着シャーシを構成する各部品にもNISMOがチューンを施しており、4輪駆動での制御もチューンされている。タイヤも専用開発のミシュラン『パイロットスポーツEV』を装着。
スポーツ志向なら『IONIQ 5 N』
上質感も求めるなら『アリア NISMO』
ヒョンデ『IONIQ 5 N』
運転性能〈19点〉
『IONIQ 5』のチューニングモデルはこれまでのスポーツEVとは違い、まさにレーシングカーレプリカ。
デザイン〈19点〉
平面と直線を生かしたスタイリングは個性的。室内のデザインも細かい部分までこだわりがつまっている。
装備の充実度〈19点〉
ウインカーレバーもコラムの右側にあったり、日本のドライバーが運転しても違和感がないよう配慮されている。
居住性〈19点〉
全高1625mmでスタイリングが直線的かつフラットなので居住空間にムダがない。エキゾースト音の選択も楽しい。
爽快感〈19点〉
EVなのにエンジン音や変速音を演出しエンジン回転計まで用意。EVスポーツカーの常識を超えている。
【評価点数】95点
日産『アリア NISMO』
運転性能〈18点〉
NISMOモードを選ぶと少しだけサーキットモードになるが、やや物足りなさを感じる。上質感はある。
デザイン〈18点〉
ノーマル車と全く別物になることもなく、シリーズの最上級モデルを意識しながらラグジュアリーを追求。
装備の充実度〈19点〉
スポーツテイストを意識させるためにNISMOのエンブレムを多用しているが、もう少し工夫があってもいい。
居住性〈19点〉
前席のサイドスルーや後席の広さは快適でインテリアの上質感もある。乗り心地もメリハリがあって楽しい。
爽快感〈18点〉
スポーツモデルといっても日産車の常識からはみ出ることはない。バランスのとれたチューンは大人志向。
【評価点数】92点
文/石川真禧照 撮影/望月浩彦
※本記事内に記載されている商品やサービスの価格は2024年8月31日時点のもので変更になる場合があります。ご了承ください。
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みんなのコメント
韓国車だからいらない。
とバッサリと切り捨てられたね。