ブランドには、その象徴となるべき存在が必ずある。ランボルギーニにとってのそれは、初代カウンタックだろう。時の流れとは冷酷なもので、栄枯盛衰は言わば自然の成り行き。厳しい時期を乗り越えるためには、できることを黙々と続けるしかなかった。そして、その熱意と理解により、今や偉大なるアイコンへと昇華している。(Motor Magazine 2023年8月号より)
新型登場と会社存続の危機生産を止めずに命脈を保つ
「カウンタック」か「クンタッチ」か。ランボルギーニ本社での会話に耳を澄ませば「クゥンタッチ」の方がより正確で、「カウンタック」と日本の会話調に言って通じることはまずない。
●【くるま問答】ガソリンの給油口は、なぜクルマによって右だったり左だったりするのか
けれども私たち日本人はもう半世紀近くも前から「カウンタック」で親しんでいる。そっちの方が、カウンターアタックみたいな名でカッコ良い。子供心に何か刺さる語感であったことだろう。スーパーカーブームは、カウンタックブームでもあった。
モダンランボルギーニのブランドイメージがどこから始まったのか。60周年を迎えた今、改めて言おう。「原点こそカウンタックであった」と。
人によっては350GTVやミウラこそ原点だと主張するかもしれない。もちろん、前車は会社としてのプロトタイプ1号車だったし、ミウラはロードカーとしての近代スーパーカーの元祖だから、それも間違ってはいない。
けれども現在、人々がランボルギーニに対して抱くイメージの元となる要素なり痕跡なりを、果たしてその2台から見つけることができるだろうか。現代のアヴェンタドールやウラカン、ウルスが、それらの子孫であると確信を持って思えるだろうか。
カウンタックを先祖として念頭におけば、アヴェンタドールやウラカン、ウルス、さらには新型モデル、レヴエルトもその子孫だと理解することは可能であろう。初代カウンタックが、現代のブランドイメージの礎になったことは間違いない。
では、なぜそうなったのか。そのことを語るためには、カウンタックの誕生物語から始めなくてはならない。
誰かが「クーンタッチ!(おったまげた)」と叫んだ
1960年代後半。ミウラを開発したジャンパオロ・ダラーラが社を去ると、彼の右腕として活躍していたパオロ・スタンツァーニが開発部門の陣頭指揮を取ることになった。折も折、創始者フェルッチョ・ランボルギーニの自動車ビジネスへの期待はにわかに萎みつつあった。
思ったほど儲からない割に(トラクターとは違って)あとあと面倒の続くビジネスであることを知ったからだ。けれども開発部門にはパオロを筆頭にフェルッチョの選りすぐったタレントたちがたくさん残っていた。ひとまずパオロに全責任を譲ってみよう、フェルッチョはそう決意する。
パオロはさっそく、ミウラの高性能化と共にその後継モデルとセカンドシリーズ(後のウラッコ)のプランに取り組んだ。パオロは盟友であるベルトーネのマルチェロ・ガンディーニとともに「ポストミウラ」計画に没頭した。
ミウラの弱点であり魅力でもあったV12エンジン横置きレイアウトを縦置きにして、なおかつミウラ以上にインパクトあるスタイリングを実現する。そうして生まれたのが独特な「前後逆さ」縦置きのLPレイアウトであり、そこから必然的に導かれた奇跡のスタイリングだった。誰かが「クーンタッチ!(おったまげた)」と叫んだ、カウンタックの誕生である。
しかしカウンタックのデビューした71年、自動車会社としてのランボルギーニはフェルッチョの手から離れてしまう。新型デビューと会社存続の危機とが、同時にやってきた。時はまさにオイルショックの時代。ここからが波乱万丈であった。
73年になって何とか市販モデルとしてのカウンタックの発表にこぎつけたが、その後はモデルチェンジを計画する経済的余裕などまるでなかった。多くの支援者や投資家たちの助けを得たものの、会社としては幾度となく倒産の危機や実際にその憂目にも遭った。
オーナーを次から次へと変えながら、カウンタックとウラッコ(シルエット、ジャルパ)を作り続けるほかなかったのだ。なかでもカウンタックは74年に生産をスタートしたLP400から88年の25thアニバーサリーまで15年にわたってフラッグシップであり続けた。スタイリングは年を追うごとに派手になり、パフォーマンスも上がって、80年代にはフェラーリテスタロッサのライバルとして再注目されたほどだ。
要するに、衝撃的なデビューを飾ったカウンタックを細々と作り続けたこの15年間が、ランボルギーニのブランドイメージを決定づけたわけだ。15年間でわずかに二千台。この宇宙船のようなスーパーカーによって、カウンタック=ランボルギーニと紐づけられるのには十分な数と時間であった。
未来性が強調された造形乗り心地も操縦感も上等
60周年を迎えた今、改めて「真の原点」というべきカウンタックの初代モデル、LP400に乗ってみよう。取材車両は、スーパーカーブームの頃から現代に至るまで日本でもっとも有名な個体で、現在は東京都で鈑金塗装業を営む関口英俊さんがオーナーだ。
様々なイベントで見てきた個体だが、触れるのは久しぶり。実は以前、私もLP400を所有した時期があり、オリジナル状態へのレストレーションを関口さんにお願いしたことがあった。その際、このオレンジ号をベースに、失われたフェンダーラインやリアアンダーパーツなどを再現した思い出がある。
LP400のこの形をカウンタックのオリジナルデザインだと思う人も多いが、実はそうではない。1971年に発表されたプロトタイプはLP500と呼ばれ、エアスクープやダクトのない美しいデザインであった。その後、73年に作られたプロトタイプでようやくこのLP400と同じ構成要素を持つに至ったが、それでも全体の大きさやドアのデザインなど細部に違いがあった。
とはいえ74年以降の生産型LP400のスタイルは、その後の400S以降の幅広タイヤモデルたちとは一線を画する。タイヤは細く、エアロデバイスはない。それゆえ未来感が一層強調される。なぜならばウイングやオーバーフェンダーは、機能的であるがゆえに現実的なのだ。
シザードアを上方に開け、右足を突っ込んで尻から滑り込み、最後に左足を畳んで入れる。座ってしまえばルーミー、というのはこの時代のイタリアンエキゾチックモデルの慣(ならわ)しだ。小さなメーターとハンドル、区切られたゲートのシフトレバーなど、いちいち懐かしい。
4LのV12DOHCエンジンは難しい儀式など必要なく、一気に目覚めた。背後の轟音はまさにカウンタックだ。同じ400であるはずなのに、ミウラとはまるで違う。やや重々しく回っている。アイドリングスタートで難なく走り始めた。
周りを走るすべてのクルマが大型車に見える、という独特の視界が、走り慣れた道を非日常に変えてしまう。街乗りでこそスーパーカーが楽しいと確信する理由だ。自転車に乗った少年たちが追いかけてくる。そこに、半世紀前の自分を見た気がした。
LP400の乗り心地は、上等だ。それでいて重量バランスが良く、ひらりひらりと軽快なハンドリングを見せる。最高速スペックを言い争った同時代のフェラーリ365BBに比べてもスポーツカーとして、そしてGTとしても断然優秀であった。多少、非力であったことを除けば。同じ時期に両方を所有した私が言うのだから、まず間違いないだろう。(文:西川 淳/写真:赤松 孝)
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みんなのコメント
昔の本では「なんじゃこれー!」と訳してた
何でもいいが日本では「カウンタック」でお願いしたい。
マブチモーター運ぶ最近のヘラーリとか
全然スーパーじゃないよ