ホンダの名門セダンが国内から再び撤退。2017年7月、日本市場へ7年振りとなる復活を遂げた「シビックセダン」の生産終了が正式に判明した。
ホンダ広報部は当サイトの取材に対して、「シビックセダンは8月に生産終了となります。(生産中止の理由は)事業性を考え、日本のラインナップを再検討した結果です」とコメント。
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シビックセダンは再び日本から姿を消すことになる(ただし、寄居工場では輸出用に同車の生産を継続)。
たしかに、物凄く売れているという状態ではなかったものの、“復活”からたった約3年で、なぜホンダの名門セダンの復活は短命に終わってしまったのだろうか?
文:渡辺陽一郎
写真:HONDA、編集部
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シビックセダン終売の影に販売の「偏り」
シビックセダンは、2020年1月に東京オートサロンで公開・発売されたばかりだった
今のホンダの人気車は、軽自動車のN-BOXだ。2019年度に国内で売られたホンダ車の36%がN-BOXであった。N-WGNなども含めた軽自動車全体の国内販売比率は52%に達する。
そして「N-BOX+N-WGN+フィット+フリード+ヴェゼル+ステップワゴン」の6車種を合計すると約55万台で、2019年度に国内で販売されたホンダ車の約80%を占める。そのほかの車種は、すべて合計しても20%に過ぎない。
このような事情もあり、シビックセダン、ジェイド、グレイスが国内販売を終えることになった。ホンダの説明では「あくまでも日本における販売の終了で、海外では売り続ける」としている。
シビックについては、セダンは2020年8月に国内販売を終了するが、海外で生産されるハッチバックは今後も輸入販売を続ける。シビックタイプRは、現時点では中断しているが、2020年夏には改良を受けて復活する予定だ。
突如復活したホンダ屈指の名門
写真は1997年に歴代モデル初設定されたシビックタイプR。ホンダの基幹車種であり続けたシビックは2010年に国内での販売を終了したが、2017年に久々となる国内復帰を遂げていた
ちなみにかつてのシビックは、国内の基幹車種だった。初代モデルは、ホンダが大量販売を目的とする最初の小型車として1972年に発売。
この後も売れ行きを伸ばしたが、2000年に発売された7代目では、国内仕様から3ドアハッチバックが廃止された。車内の広い5ドアハッチバックとセダンのみになっている。
2001年には、居住性や積載性の優れた買い得なコンパクトカーの初代フィットが発売され、猛烈に売れて2002年には国内販売の1位になった。
そのためにシビックは需要を奪われ、2005年登場の8代目は、3ナンバーサイズのセダンのみになっている。売れ行きは一層下がり、2010年にシビックは国内販売を終えた。
それが2017年7月(発売は9月)に、国内販売を突然復活させた。
当時、開発者に理由を尋ねると「以前から復活の機会を狙っていたが、実現しなかった。今回はシビックセダンを国内の寄居工場でも生産することが決まって復活できた。セダンだけでは弱いので、ハッチバックとタイプRも輸入する」と述べた。
復活したシビックセダンはなぜ短命に?
2017年に国内に復活したシビックシリーズ。セダンのほかにラインナップしていたハッチバックとタイプRに関しては引き続き販売を続ける
中高年齢層のホンダファンには、待望のシビック復活となったが、メーカーは投入時期を間違えた。
2017年6月29日にはフィットが大幅なマイナーチェンジを行い、8月31日には大人気のN-BOXが現行型へフルモデルチェンジしている。9月にはシャトルとステップワゴンもマイナーチェンジを実施しており、販売店が超多忙な時期にシビックを復活させてしまった。
そのために販売店は、シビックに力を入れられず、好調に売れるN-BOXやフィットの間に埋もれている。
そこで、筆者は当時の商品企画担当者に「シビックはホンダファンにとって大切なクルマだろう。復活させるなら時期を選び、懐かしいシビックとオーナーの写真を募集するとか、相応のイベントを行うべきだ。万一シビックが今後再び廃止されたら、もはや復活はあり得ないから、ていねいに扱って欲しい」と申し上げた。
返答は「そのあたり、ウチ(=ホンダ)は本当に、下手なんだよねぇ」というものであった。
シビックが2017年に発表された時の国内販売計画は、1か月に2000台であった。翌2018年の月平均販売台数は約1500台、2019年は約900台だ。販売実績を暦年ベースで捉えると、一度も計画台数を達成できずに終わっている。
特にセダンは低調で、2019年におけるシビックの販売構成比をボディ別に見ると、17%だから最も低い。5ドアハッチバックは59%、タイプRは24%を占める。
グレイス、ジェイドも同時期に廃止
ホンダで最も小型な5ナンバーセダンのグレイスは7月に国内向けの生産が終了となる
この売れ行きでは、シビックセダンの廃止も理解できるが、2020年1月にマイナーチェンジを受けた直後だ。コストを費やして改良を行い、その約半年後に廃止するのも唐突に思える。
シビックセダンの廃止は、ホンダの事業方針に基づく。ホンダの八郷隆弘社長は、2019年5月の会見で、商品ラインナップの見直しと共有化を進めると述べた。
この方針に基づき、2025年までにグローバルモデルは派生車の数を現在の3分の1に減らし、地域専用モデルは販売力の強い車種に集約して効率を高める。
従って廃止が決まったのはシビックセダンだけではない。
3列シート仕様も用意するミドルサイズハッチバックの「ジェイド」、数少ない5ナンバーセダンの「グレイス」も終了する。
ホンダによると「シビックセダンのお客様は、ハッチバックでも満足して頂けるだろう。もともとシビックはハッチバックのイメージだった。同様にジェイドはフリード、グレイスはフィットで補える」としている。
その一方で、国内販売台数が少ないのに、取り扱いを続ける車種もある。
例えばアコードは、2019年における先代型の販売台数は1056台だった。このアコードが国内販売を継続して行い、シビックセダンは約1800台、ジェイドは約3100台、グレイスは約6300台を販売しながら廃止される。
つまりアコードは、売れ行きは低調でも、国内市場にとって大切な車種と判断された。
選択と集中で求められる「売れ筋以外のホンダ車」の工夫
2020年2月に日本で発売された新型アコード。国内での販売は振るわないが、ホンダは国内のセダンを再編するなかで「残す」決断をした
今後は海外市場を含めてクルマの世界生産台数は頭打ち傾向を強める。しかも電気自動車を含めて環境性能を向上させ、優れた安全メカニズムや自動運転の開発も進めなければならない。
選択と集中が求められ、重複が生じる車種は廃止して、基本的に1カテゴリーに1車種という体制を築く。この考え方を徹底させると、シャトルもフィットとフリードでカバーできるだろう。
以上のように車種の選択肢を整えたら、次に行うべきは、冒頭で述べた売れ筋6車種以外のメリットを分かりやすく訴求することだ。
シビックハッチック、アコード、インサイトといった背の低い車種は、重心も下がるから安心(走行安定性)と快適(乗り心地)が優れている。
今の若いユーザーは、昔と違って運転の楽しさは不要でも、衝突被害軽減ブレーキといった安全装備に向けた関心は高い。
この世界観を上手にアピールできれば、シビックセダン、ジェイド、グレイスの廃止が車種構成の分かりやすさに繋がり、シビックハッチバックやアコードの販売に効果をもたらすことも考えられる。
ただし、これらの3ナンバー車は、もともと日本向けではなく(アコードは北米や中国では日本の200倍以上売れている)価格も高いから、N-BOXやフィットに比べると繁殖力が弱い。
ヴェゼルやステップワゴンを使っているユーザーが、シビックハッチバックやアコードに乗り替えられるようなストーリーと仕立てを考える必要もあるだろう。
漠然と売るだけでは、シビックハッチバックやアコードも、アコードセダンやグレイスと同じ道を辿ることになりかねない。
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