現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > 能力を「公道で使い切れる」セブン 買うには特別講習が必要なHPC ケータハム 7台を乗り比べ(2)

ここから本文です

能力を「公道で使い切れる」セブン 買うには特別講習が必要なHPC ケータハム 7台を乗り比べ(2)

掲載 19
能力を「公道で使い切れる」セブン 買うには特別講習が必要なHPC ケータハム 7台を乗り比べ(2)

特別講習が必要だったHPC 1700

ケータハム・セブンは長年、数え切れないほどのエンジンを搭載し、細かなシャシーのアップデートを受けてきた。また殆どの例が、オーナーの手で何らかのチューニングを受けているだろう。

【画像】ケータハム・セブン・シリーズ 7台 現代の420カップと170 R 起源のロータスMk VIも 全125枚

それでも1990年までは、ロータス・ツインカム・ユニットと並んで、1600ケント・ユニットやCVHユニットなど、フォード社製エンジンが主力だった。以降は、英国オペルのヴォグゾールと、ローバーのエンジンも採用されていった。

希少なケータハムHPC 1700も、フォード由来のHPCエンジンを積む。BDAユニットがベースで、1699ccのクロスフロー・ブロックとコスワース・シリンダーヘッドを載せ、最高出力は172psがうたわれた。

このHPC 1700を購入するには、事前にジョン・ライオンズ・ハイ・パフォーマンス・コース(HPCの由来)と呼ばれる、特別講習を受ける必要があった。1986年の発売時の価格は1万2000ポンドで、それまでで最も高価なケータハムでもあった。

「速いクルマには、特別な技術が必要です。トレーニングを受けなければ、完全には身に付けられません」。と同社は主張していた。

ダークグリーンのHPC 1700は、先出のジェームスに影響を受け、ナイジェル・ブランディン氏が約20年前に購入したそうだ。「技術的に挑戦していることが好きなんですよ。向き合い、理解する必要があります」

サーキットで能力を解き放つと、アルカンターラ巻きのステアリングホイールへ繊細な感触が伝わってくる。HPCエンジンは扱いやすく、回転の上昇とともにパワーが勢いよく放出される。

本来の能力を公道で使い切れる強み

9500rpmまで問題なく許容するらしいが、今回は7500rpm以下へ抑えておく。それでも、ビスター・ヘリテージのサーキットでは手に余る。0-97km/h加速5.0秒という数字以上に、恐ろしいほど速い。

技術が求められるコーナーでは、手のひらへ明確な感覚が伝わり、素早く導ける。シャシーはドライバーへ優しく、すべてが調和している。

ステアリングホイールをコーナーの頂点目掛けて回し、アクセルペダルを傾ければ、リミテッドスリップ・デフを効かせられる。派手さ重視のテールスライドも、タイトな四輪ドリフトも自在。縁石へ乗り上げても、落ち着きは失わない。

対して、能力を公道で使い切れるという特長も、セブンの魅力になってきた。ジョン・シモンズ氏が大切にするレッドのケータハム・クラシック・スプリント1600が、それを物語る。

クラシックが発表されたのは、1992年のロンドン・モーターショー。多くの人に楽しんでもらうため、7450ポンドという訴求力の高い価格で提供された。

装備は簡素。燃料計とヒーター、フルサイズのフロントガラスは標準ではなかった。とはいえ、ジョンのクルマにはSEパッケージが組まれ、それらのアイテムに加えてアルミホイールを得ている。

エンジンはベーシックな1600 GT仕様ではなく、クロスフローの1600スプリント仕様。ツイン・キャブレターが組まれ、最高出力は85psから101psへ引き上げられている。

ドライバーの細かな操作へ逐一反応する

1977年式のセブン・ツインカムと同様に、クラシック・スプリント1600の動力性能はほどほど。シリアスなHPC 1700と比べると、柔軟なサスペンションのお陰で乗り心地は良好。ボディの動きは少し大きいが、一般道との相性はより優れる。

キャビンのフロアにはカーペットが敷かれ、レザー内装も備わる。長距離の自動車旅行にも出かけられそうなほど、居心地が良く快適。典型的な、素のケータハムらしい。

シャシーもベーシック。リアはリジッドアクスルで、5速マニュアルのシフトタッチは7台のベスト。ドライバーの細かな操作へ逐一反応する、第一級のセットアップにある。

比較すれば低めの、クラシック・スプリント1600のパワーに対し、グリップ力には余裕がある。読者が望むような、ドリフトシーンを写真へ収めるには、大胆なアプローチが求められる。それでも、目一杯きっかけを与えても、制御不能には陥らない。

落ち着いたダークグレーのセブンは、ケータハムJPE。元F1ドライバーのジョナサン・パーマー氏が、開発へ関わった高性能仕様だ。

1992年に、グレートブリテン島中部のパーマースポーツ・サーキットで、彼はケータハムの魅力へ惹き込まれた。それを機に、ジョナサン・パーマー・エボリューション、略してJPEが生まれることになった。

「ミニマリスティックなクルマです。爽快で速い。リアアクスルの直前に座っているので、滑り始めをすぐに感知できます。運転しやすく、すぐに慣れることもできます」。と、ジョナサンはその魅力を以前に語っている。

0-161-0km/hの発進・停止で世界記録を樹立

エンジンは、英国ツーリングカー選手権で戦うヴォグゾールのマシンと同じ、スウィンドン・レーシング・ユニット。1998ccの燃料インジェクションで、最高出力253ps/7750rpmを発揮。1t当たりの馬力は478psに達した。

費用を惜しまないプロジェクトといえ、エンジン単体のコストだけで1万3000ポンド。その結果、0-97km/h加速3.46秒という、圧倒的な速さを手に入れた。0-161-0km/hの発進・停止を12.6秒でこなし、世界記録を樹立してもいる。

そんな撃速のJPEを3年間所有しているのが、デイブ・グワトキン氏。落ち着いたグレーに、イエローの専用ロゴが際立つ。

ホイールはアルミより軽いマグネシウム製で、フェンダーはカーボンファイバー。ダッシュボードとシフトノブもカーボン。普通のセブンと違うことを、控えめに主張する。

スターターボタンを押し発進。クワイフ社製トランスミッションのストレートカット・ギアが、加速時に鳴く。めっぽう速いが、今日の7台の中では2番目だろう。低回転域では、感心するほど扱いやすい。

高回転域まで引っ張ると、ヴォグゾール・ユニットのドライなサウンドがソプラノへ転じていく。余りの速さに、少し圧倒される。更にプッシュしていくと、通常のセブンとは異なる次元へ動的能力が向上していることへ気づく。

アンダーステアは皆無といえる。姿勢制御はピタリと引き締まり、高速域でのバランスは秀逸。速度域の高いテクニカルコースでは、眼を見張るほど。

この続きは、ケータハム 7台を乗り比べ(3)にて。

こんな記事も読まれています

F1アカデミー、アメリカン・エキスプレスをオフィシャルパートナーに迎える
F1アカデミー、アメリカン・エキスプレスをオフィシャルパートナーに迎える
AUTOSPORT web
ミニ・カントリーマン 詳細データテスト ミニらしく活発 SUVらしからぬタイトな挙動 車体は大柄
ミニ・カントリーマン 詳細データテスト ミニらしく活発 SUVらしからぬタイトな挙動 車体は大柄
AUTOCAR JAPAN
[ヤリスクロス]より爆安!! [初代アウトランダー]みたいなクルマを今こそ!!  230万円台で3列シートって!!  しかも三菱渾身の4WD技術でバカ安だった
[ヤリスクロス]より爆安!! [初代アウトランダー]みたいなクルマを今こそ!!  230万円台で3列シートって!!  しかも三菱渾身の4WD技術でバカ安だった
ベストカーWeb
「レンジローバー スポーツSV」はBMW M製V8ツインターボを搭載! エンジン屋「X5M/X6M」「M5」の強心臓とのマッチングはいかに
「レンジローバー スポーツSV」はBMW M製V8ツインターボを搭載! エンジン屋「X5M/X6M」「M5」の強心臓とのマッチングはいかに
Auto Messe Web
9年目の大アプデで一層楽しい! マツダ・ロードスターへ英国試乗 新LSDとトラック・モード獲得
9年目の大アプデで一層楽しい! マツダ・ロードスターへ英国試乗 新LSDとトラック・モード獲得
AUTOCAR JAPAN
幻の「ケンメリGT-Rレーシング」を「スカイライン」で再現! メインステージは「もちろん富士スピードウェイです」
幻の「ケンメリGT-Rレーシング」を「スカイライン」で再現! メインステージは「もちろん富士スピードウェイです」
Auto Messe Web
バニャイヤ、王者同士の激戦制し今季2勝目! マルケスがドゥカティ陣営移籍後初の表彰台獲得|MotoGPスペインGP決勝
バニャイヤ、王者同士の激戦制し今季2勝目! マルケスがドゥカティ陣営移籍後初の表彰台獲得|MotoGPスペインGP決勝
motorsport.com 日本版
はたらくクルマ図鑑「ヤマグチのレッカー車たち」2
はたらくクルマ図鑑「ヤマグチのレッカー車たち」2
グーネット
【動画】マツダが開くレーシングドライバーへの道! 「MAZDA SPIRIT RACING」筑波サーキットのドライバー選考会に潜入した
【動画】マツダが開くレーシングドライバーへの道! 「MAZDA SPIRIT RACING」筑波サーキットのドライバー選考会に潜入した
WEB CARTOP
平川亮が驚いたF1マシンの速さとブレーキ。マクラーレンでのテストにはWECやSFの経験が活きる部分も
平川亮が驚いたF1マシンの速さとブレーキ。マクラーレンでのテストにはWECやSFの経験が活きる部分も
AUTOSPORT web
2024年版 「速い+快適」な高級スーパースポーツカー 10選 日常使いもできる高性能モデル
2024年版 「速い+快適」な高級スーパースポーツカー 10選 日常使いもできる高性能モデル
AUTOCAR JAPAN
美しすぎるホイール「アンテラ」が復活!「ミラノデザインウィーク2024」でロベルト・バッジョ氏がブランド・アンバサダーに就任
美しすぎるホイール「アンテラ」が復活!「ミラノデザインウィーク2024」でロベルト・バッジョ氏がブランド・アンバサダーに就任
Auto Messe Web
フェラーリに8年先行したロードカー ドライエ・タイプ145 シャプロン・ボディのスーパークーペ(1)
フェラーリに8年先行したロードカー ドライエ・タイプ145 シャプロン・ボディのスーパークーペ(1)
AUTOCAR JAPAN
もとはV12エンジンのGPマシン! ドライエ・タイプ145 シャプロン・ボディのスーパークーペ(2)
もとはV12エンジンのGPマシン! ドライエ・タイプ145 シャプロン・ボディのスーパークーペ(2)
AUTOCAR JAPAN
全長4m級! 新型「200馬力超えハッチバック」公開!  誕生から“25周年”の「スポーツハッチ」! 迫力フェイスもカッコイイ「ポロGTI」発売
全長4m級! 新型「200馬力超えハッチバック」公開! 誕生から“25周年”の「スポーツハッチ」! 迫力フェイスもカッコイイ「ポロGTI」発売
くるまのニュース
大型トラックに休憩義務はあれどSA・PAは慢性的な駐車枠不足! 対策で出てきた「駐車有料案」はハッキリいって愚策そのもの!!
大型トラックに休憩義務はあれどSA・PAは慢性的な駐車枠不足! 対策で出てきた「駐車有料案」はハッキリいって愚策そのもの!!
WEB CARTOP
洗練&堅牢、モデリスタがトヨタ ランドクルーザー250 をカスタム
洗練&堅牢、モデリスタがトヨタ ランドクルーザー250 をカスタム
レスポンス
はたらくクルマ図鑑「ヤマグチのレッカー車たち」1
はたらくクルマ図鑑「ヤマグチのレッカー車たち」1
グーネット

みんなのコメント

19件
  • わんこ
    セブンに限らずスポーティカーはおろか普通のセダンでさえ公道でパワーを持て余すからね。そのうえ安くなるならまだしも値段はどんどん上がっているという。
    個人的には剛性や電子制御、安全設計を削ってでも今より薄っぺらくなるけど日常使いが良くて修理しやすくて普通に買える車の方が良い。
  • maz********
    スーパーセブン系はバックヤードビルダーのものも入れると膨大な種類がある。
    知っている中で一番パワーがあるのは、650馬力オーバーの3ローターツインターボエンジンを積んだ車重720kgのもので、パワーウエイトレシオは1.1kg/PSと意味が分からないレベルだった。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

169.0260.5万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

35.045.0万円

中古車を検索
ビスタの車買取相場を調べる

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

169.0260.5万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

35.045.0万円

中古車を検索

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離(km)

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村