この記事をまとめると
■「道路運送車両法」における「保安基準」で規制されたものと規制が緩和されたものを紹介
シフトレバーを交換してパターン表記がないと違反! じつはATも「D」や「R」が表示されないとダメだった
■自動車の安全性に関わる保安基準に関しては規制が厳しくなっている傾向にある
■海外との統一を図るという目的で緩和された保安基準がも多い
自動車を取り巻く環境の変化で規制も変わる
いまではメーカーの誇るハイパフォーマンスモデルなら市販車で300km/hを出せるのがあたりまえのようになってきた感がありますが、昭和30~40年代の国産車は、100km/hを超えると危険というような認識があり、速度域だけ見ても、50年の間でそれだけの大きな変化があったのだなと感慨が湧いてきます。
その自動車の進化に加え、自動車を取り巻く環境も変わりましたし、自動車に関する文化も、その50年の間ではいろいろ目まぐるしく変わってきました。
そのため、交通の安全や環境の保全を守るための法律も、技術や環境の変化に合わせて、節目ごとにアップデートされてきました。
ここでは、法律=「道路運送車両法」における「保安基準」の改正で規制されたものと、逆に緩和されてOKになったものをピックアップして紹介していきましょう。それらを見ることで、時代の変化を感じられるかも知れません。
<規制されてダメになったもの>
まずは、昔はあたりまえだったものが、保安基準の改正で装着がNGになったもの、または装着しないとならなくなったものを紹介していきます。
■その1:イエローバルブ
その昔、クルマのヘッドライトのハイビーム側を黄色い色の「イエローバルブ」に交換するのが流行った時期がありました。点灯していないときも、レンズの奥にうっすらと黄色い煌めきが加わるので、さり気ないイメージチェンジの目的としても人気がありました。
なかには、某ドリフトマンガで人気が再燃した「トヨタ・スプリンタートレノ(AE86)」の限定車である「ブラックリミテッド」のように、純正でイエローバルブを装着していた車種もありました。当時はオートバイを含めて峠の走りを楽しんでいた人たちが好んで装着していたイメージがあります。
その「イエローバルブ」、いまでは保安基準の改正でNGとなっています。正しくは、平成18年の1月1日以降に初登録された車両は装着不可ということです。逆に言えば、それ以前に初登録された車両については装着しても問題がないということです。
また、フォグランプについてはこの規制は当てはまらないので、イエローバルブでも問題ありません。 ※フォグランプは単体での点灯は違反となります。ヘッドライトが点灯している場合のみ使用可能ですのでご注意ください。
気になるのは規制の理由ですね。その理由のひとつは、クルマの進行方向の誤認をできるだけ少なくさせるというものだそうです。
クルマの灯火類は、ヘッドライトが白、ウインカーがオレンジ(赤点滅もあり)、テールランプが赤というのが世界共通の認識となっています。そのなかに黄色いランプが混じると、とっさの場合に「ウインカー? ヘッドライト?」というように誤認が発生し、誤操作で事故を招く可能性があるということで使用を控えようという流れになったようです。ちなみにこれは世界的な基準のようです。
とはいえ、いまでも濃霧のなかでの運転には効果が高いアイテムなので、用法を守って使用しましょう。
■その2:シートベルト
これは保安基準の改正で使用が義務づけられたものです。というか、「えっ? シートベルトは昔から義務でしょ?」という疑問も涌きますよね。
いまではあたりまえに装着されているシートベルトですが、昭和44年以前はシートベルトの装備規定がなかったので、その時期に生産されたクルマにはシートベルトが装着されていない車種があったんです。たとえば初代の「サニー(B10型)」やトヨタ初の大衆車「パブリカ」にはシートベルトがありません。
また、その後の昭和46年には高速道路でのシートベルト装着義務が課されましたが、昭和50年まではいまの3点式の基準がなかったため、腰だけを固定する2点式のシートベルトが主流でした。
そして昭和59年には一般道でも装着が義務化されました。それ以降は運転するときには必ず3点式のシートベルトを着用しなければならないということになったのです。
ちなみに若い世代の警察官にはそのことを知らないというケースもあるようで、シートベルトのない車種に乗る旧車乗りのなかには、シートベルトの義務について逆に教えて差し上げたという経験を持つ人もそこそこいるようです。
でも、いくら義務の対象ではないからといって、いまの交通のなかでベルトなしで運転するのは、なにか心細くなってしまうというのが正直なところですね。
■その3:ヘッドレスト
シートベルトと同様にいまでは100%装着されていますが、旧いクルマにはヘッドレストが装着されていない車種もあるんです。
たとえば昔のオープンカーをイメージしてもらうとわかりやすいと思います。前出の「サニー」や「パブリカ」のシートは、ヘッドレストが付いていないオープンカーと同じ状態のシートが装着されていました。
ヘッドレスト装備が義務化されたのは、シートベルトの義務化と同時の昭和44年です。当初は運転席のみでしたが、段階的に助手席にも、そして後部座席にも適用が広げられ、いまではほぼ全席に装着されています。
もうお気づきの方もいるでしょう。そうです、このヘッドレストは快適性の目的ではなく安全性強化のためのアイテムなんです。
リクライニングさせたときの頭の置き場と思っている人も少なくないと思いますが、実際はオカマを掘られたときに頸椎が反らされてダメージを受けるむち打ち症などを防ぐためのアイテムなのです。
「ヘッドレスト」は英語では「head restraint」と書き、「restraint」は「拘束する」という意味です。自分もそうでしたが、「rest=休む」と勘違いしていた人も少なくないのではないでしょうか。
ちなみに法規上は「頭部後傾抑止装置」と記述されていて、まさにむち打ちを防止してくれるアイテムということですね。
装着が義務のパーツなので、邪魔だからと外して運転したり、外したまま車検に行くと落とされますので注意してください。
厳しくなるばかりではなく緩和された保安基準もある
<規制緩和でOKになった装備>
今度は、昔はダメだったけど、規制の改正・緩和でOKになったものを紹介していきましょう。
■その1:シーケンシャル・ウインカー
その昔、「ローリング族」なんていう呼び名が付けられた、峠や工業地帯などを走りまわって速さを競う「走り屋」たちが溢れていた時代がありました。そんな時代に、ウインカーを通常の2倍くらいの速度で点滅させる「ハイフラッシャー」という装置を付けるのが流行りました。
「速いヤツはウインカーも速いんだゼ」といっていたかどうかは知りませんが、オートバイもクルマも、こぞって速いウインカーにしていたのを覚えています。
あの「ハイフラ」、実際はほとんどのケースが保安基準・不適合だったと思います。ウインカーの点滅速度は保安基準で1分間に60~120回の範囲とする、と定められた数値があります。最大でも1秒間で「パッパッ」というリズムです。あの頃の「ハイフラ」は「パパパ」くらいのリズムでしたので、それは不適合ですね。
さて、ウインカーにはそうして基準が設けられていますので、好き勝手なパターンで表示させて良いわけではありません。カスタム好きの人のなかには、「点滅ではなくてイルミネーション看板のように流れるパターンにしてやればウケるかも……」なんて考えて、電子工作スキルをフル活用し、自作で流れるウインカーを作ってしまう猛者もいましたが、昔はそれも不適合のケースでした。
その「流れるウインカー(連鎖式点灯またはシーケンシャル)」が緩和されてOKになったのが2014年です。これは、その数年前に開催された「国連欧州経済委員会(ECE)」の「自動車基準調和世界フォーラム」で「方向指示器に係る規定規則(第6号)」に関しての話し合いが行われ、その決議に国土交通省が国際協調したため、保安基準の細目が変更されたとのことです。
シーケンシャルウインカーはOKとなりましたが、その動きには当然縛りがあります。まずは水平に配置されること。そしてその動きは車体の内から外へのパターンのみです。そして流れると言っても、数灯が移動していくパターンはNGで、内から外へ点灯が積み重なるパターンでなくてはなりません。
あとは点灯全体の決まりとして、すべての点灯パターンは左右対称で、タイミングと動きがシンクロしていなければならず、一箇所でもズレているとNGとなります。また、点滅周期も一般の点滅と同じ60~120回/分が適用されます。
あと、ハザードの際も同じ動きでなくてはならないので、なんか違和感がありますよね。
■その2:DRL(デイ・ランニング・ライト)
「シーケンシャル・ウインカー」に続いて、2016年に「DRL(デイ・ランニング・ライト/昼間走行灯)」が認可されました。
「BMW」の「イカリング」と呼ばれたアレです。
認可以降は、ほかの輸入車やこれまで装備されていなかった国産の車種にも採用されているので、いまでは「DRL」という総称が普及していますが、そもそもアレの認可とは何のこと? と疑問を持っている人もいるでしょう。
それまで日本では、あのようなアクセサリー的なライトを「その他灯火類」という分類で扱っていました。その一方でヨーロッパでは、昔からデイライト=DRLとして、日中でも遠くから接近を認識できるように、明るいライトの装着が義務化されていました。そのころのヨーロッパ仕様の車種を日本で走らせるには、そのDRLを封じて販売していました。
なぜそのDRLがダメだったのかというと、日本では「その他灯火類」の扱いとなり、明るさが300カンデラまでという制約を受けてしまうためです。ヨーロッパのDRLの基準では400~1200カンデラとなっているため、まったく適合できなかったんです。
それが認可されたことで、あの「イカリング」を皮切りに、各メーカーが特徴的な「DRL」でヘッドライトを飾るようになったというわけです。
ちなみに、認可されたと言っても、後付けの場合は点灯の決まりや装着の基準などいろいろと規定がありますので、車検適合品を規定に合致する方法で装着しないと落検することもあるので注意が必要です。
■その3:サイド(出し)マフラー
ほとんどの人がマフラーといえば車体の後ろの下側に出口が備えられているものという認識でしょう。ボディのサイドにマフラーの出口があるクルマなんて、トラックかレースマシンくらいなもの……。あと、ちょっとヤンチャな車高の低いクルマもたまにサイドから排気が出ているケースがありますが、一般の乗用車ではほぼ見かけることはないでしょう。
そのサイド=側方にマフラー出口を設置することが、2017年に解禁されました。
厳密には、 ・右向き(または左向き)に開口してはならない。
・マフラーカッター(出口)の設置角度は、車両中央線に対して30度以内に収めること。
・マフラーからの排気ガスが他の交通に悪影響を与えないと認められるもの。 という規定が廃止されたので、マフラーの出口をどの向きにしてもOKになりました。 ※突出量や先端の形状については別途規定があります
「それっていったい、誰トクなの?」という疑問もあると思いますが、数が少ないながらも、リヤタイヤのすぐ後ろに横向きにマフラー出口を配置する大型SUVなどがアメリカでは販売されています。これはおそらく荷室や荷台への荷物の積み降ろしの際に邪魔にならないようにとの配慮だと思われますので、今後はリヤにハッチを備えた車両に採用されていくかもしれません。
規制が緩和された理由ですが、クルマの排出する排気ガスがクリーンになってきたため、歩行者やほかの車両に排気ガスが向けられても以前ほどの支障は無いという背景があって、そこに外(ヨーロッパやアメリカ)の基準との協調を求める動きがあったことでの流れではないかと思われます。
今回紹介した例はその一部ですが、こうして見てみると、クルマに関する法律も時代の要請に応じてその内容をフィットさせるように刻々と変化しているんだなということが実感させられますね。
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みんなのコメント
しかも、日中日差しが差すとウィンカーが小さくて見にくい事があるのですが、メーカーの方にお願いです、もう少しだけウィンカー全体を大きく出来ないでしょうか?