今年3月にフランスで新型が公開されたルノー カングー。新型もスペースワゴンらしい機能性を採用するなど注目されるが、ボディサイズ、特に全幅がかなり大きくなる。であれば、現行型のほうが日本では使いやすいのでは……?
新型が発売されるのは欧州で6月と言われているだけに、現行型を在庫車があるうちに買っておくというのも大いにありかもしれない。
ついに登場新型86/BRZ! 世界初公開の様子からFRスポーツならではの魅力を徹底検証!
日本でもファンが多いカングーは、新型の存在は確かに気になる。が、現行型の愛嬌のあるデザインも魅力的だ。カングーは現行型と新型、どっちが買いか?
文/島崎七生人 写真/Renault
【画像ギャラリー】新型カングーとカングーの歴史、そして期待の新型エクスプレスを見る!!
■ファンからの熱望で初代カングーは日本上陸!
1997年登場の初代カングー。日本では2002年からの登場となった
ルノー・カングーは、もとを正せば、乗用車のボディ前半に箱型の荷室を合体させて作ったフルゴネット(小型有蓋貨物車)がルーツ。1985年登場の“エクスプレス”、もっと遡れば“4F/4”は先達だ。
1997年登場(日本へは2002年から導入開始)の初代カングーはそうした流れから誕生したモデルで、ボディこそ何かの流用ではなく丸ごと完全オリジナルだったが、ハイルーフのいかにも使いやすそうなパッケージング、鉄板剥き出しの室内など、シンプルというかスノッブなもの。
そんなユニークさが注目を集め、タイムラグがあったものの日本市場への正規導入が決まったのも、マニアからの熱望に押し切られてのことだった。2003年にダブルバックドアが選べるようになると、人気はさらに上昇した。
ちなみに“レモン・イエロー”は初代の人気色で、本国でカタログ落ちした後も日本市場のためだけに設定され続けた。またその時のルノー顔を採り入れた途中のフェイスリフトモデルより、プレーンは初期型がいい……とするコアなマニアも多く存在するあたりは、カングー・マニアのコダワリ度が伺われる。
2009年に導入開始の2代目カングー。3ナンバーサイズとなって賛否両論を巻き起こした
続く2代目は2009年に導入。この2代目の最大のポイントは、全幅が初代1675mm(5ナンバー)から一気に1830mm(3ナンバー)に拡幅された点。
このことに当初は賛否両論起こったものの、それより初代と変わらぬカングーの機能性の高さ、親しみやすいキャラクターを前に、いつのまにか再び人気車種に。
2代目もマイナーチェンジで顔まわりが最新ルノーのデザインと歩調を合わせたものになったほか、これまで多数の限定車がリリースされてきた。ボディ色、仕様などさまざまだが、立ち話レベルでルノー関係者にたずねても「さあ、いくつ出ましたっけ?」と即答はまず得られない……そんな数だ。
また2代目登場後、ショートホイールベース版の“ビボップ”が導入されている。3ドア、MT仕様で、確か本国以外では日本のみの発売だったはずだ。が、1年少々あっただけの希少車で、筆者も広報車の試乗を申し込む間もなく販売が終了してしまった。
■日本でこれだけ愛されるカングーの魅力とは
1985年登場のエクスプレス。カングーの前身となったモデルだ
初代、2代目とも、日本市場では人気車といっていいカングー。いったいこのクルマの魅力は何なのか? といえば、“プロユースの機材感”にあるのだと思う。分類上はMPVであり定員こそ5名だが、居住スペースは天地左右とも実に豊かで、スライドドアからの乗り降りもしやすい。
さらに何といってもダブルバックドア(2代目は左右非対称。ストッパーを外して180度まで大きく開けることもできる)を開けたラゲッジスペースは、コマーシャルカーの血を引くだけあり床が低くスペースも広いから、何でも積み込める。
つまり実用車であり、コテンパンに使いこなせるクルマであるということ。で、ならば数ある国産のミニバン、ハイトワゴンを選べばいいのだが、決して味気ないだけの実用車で終わらせないのがカングーだ。
国産車とはひと味違ったフランスの実用車ならではの粋なデザイン、センスが楽しめ、さらには心地よく安定した乗り心地などが味わえ、乗って、知ってしまうと病みつきになることは確か。使いやすいだけでなく“使い心地のよいクルマであること”が、カングーをひと言で表した時の魅力、という訳だ。
■新型カングーの日本導入時期は?
2021年3月にフランスで発表された新型カングー
その一方で、ご存知のとおり新型カングーは本国では今年3月に発表済みで、欧州では6月から生産開始という。
となると気になるのは日本市場へはいつやってくるのか? だが、現状は「実際の導入は2022年に入ってからになると思うが、詳しいことはまだ何も決まっていない」(ルノー・ジャポン)らしい。
カングーはグローバルに展開するモデルのひとつだが、目下のコロナ禍で市場ごとの導入計画も立てづらい面もあるはずだが、日本に新型が上陸するのはまだ少し先のようだ。
公表されている新型だが、ボディサイズは現行型よりまた少し大きくなる。
本国仕様の数字をそのままご紹介すると、全長4486mm×全幅1919mm×全高1838mmとなっており、現行モデルに対し全長+206mm、全幅+89mm、全高+28mm、ホイールベースは2716mmだから現行+16mmだ。
他方でおおいに気になるのは、カングーとは別に“エクスプレス”なるモデルの用意もあるということ。しかもこちらは、新型カングーよりひとまわりボディサイズが小さい。参考までに記しておくと全長4394mm×全幅1775mm×全高1804~1890mm、ホイールベース2812mm。
さすがに初代カングーよりは大きいものの、現行カングーと較べると全長は114mm長いが、全幅は何と55mm小さいことになる(新型同士だとカングーより144mmも小さい)。反対にホイールベースは新型カングーより96mm長く、いかにも室内スペースを重視した狙いであることも読み取れる。
スタイリングは新型カングーが立派なメッキのグリルや、B、Cピラーに加飾パネルを使うなどしてサイドウインドゥのグラフィックを前から後ろまで連続させて、(あくまで広報写真での個人的な判断ながら)日本のミニバンから目を移しても違和感がない印象。
一方でエクスプレスは、フロント回りがいくぶんか簡素で、ハイルーフ化したボディは、フロントドアも専用のようで、スライドドア以降もシンプルなコマーシャルバン的な、ちょうど日産NV200のようなデザインにまとめられている。
さらにダブルバックドアも採用されているようだ。ちなみにこのエクスプレスにも乗用と商用の両タイプの用意があるという。
■現行型か新型か……購入にあたっての第三の選択とは
より実用性を高めたエクスプレスも発表された
おそらく現行カングーは、そろそろ在庫車限りとなる時期かも知れない。
だとしたら購入を考えているユーザーは、今すぐディーラーに走るべきか? あるいは新型を待つべきか? もちろんこのあたりは個人の判断次第で、現行モデルが気に入っているのであれば即座に行動を起こすべきだ。
とはいえ筆者は“待ち”かもしれない。だだしそれは、エクスプレスの新型が入ってくるとした場合の話。実は冒頭から行間ににじませてきたのだが、よりコンパクトでスタイルも“道具感”がより強そうな新型のエクスプレスには惹かれるものがある。カングーの本来の姿に思えるからだ。
メーカーの大人の事情が一番の決め手になるのだろうけれど、もし新型エクスプレスに(超法規的に日本仕様だけ車名を“カングー”と変えてでも)乗れるとしたら今から楽しみだ……と、願望を強く込めてこの記事を締めくくっておきたい。
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みんなのコメント
AT車は売り切れだそーで。
全幅1919mmでは、使えない駐車場も多くなるし。
デザインも、普通のミニバンっぽい新カングーよりいいんじゃないかな。