新生クラウンの4バリエーションの先陣を切って登場した、新型「クラウンクロスオーバー」。最上級グレード「RS」では、走りの質感の高さと怒涛の加速力で、「新生クラウン」のポテンシャルの高さを示してくれた。こうなると、あとに続く「スポーツ」「エステート」「セダン」にも期待が高まるところだが、なかでも「クラウン」となれば注目したいのがやはりセダンだ。
先日、2023年秋ごろの発売と搭載されるパワートレインについて発表があった新型クラウンセダン。セダン市場が縮小していくなか、伝統の正統派セダンはどのように戦っていくのか。そもそもセダンのよいところとは!?? 新型クラウンセダンへの期待も込めつつ、考察しよう。
もうすぐ正式発表!! 新型クラウンセダンは「セダン界」を復権するのか??
文:吉川賢一
写真:TOYOYA、Mercedes-BENZ
MIRAIよりもやや長いサイズで、MIRAIと同じFCEVも
トヨタが公表している新型クラウンセダンのボディサイズ(開発目標値)は、全長5030mm×全幅1890mm×全高1470mm、ホイールベース3000mm。現在のトヨタラインアップでいえば、MIRAI(4975×1885×1470、WB=2920)よりもやや長いというサイズ感。ちなみに、レクサスのLSは全長5235mmなのでさらに長い。
クラウンクロスオーバー(4930×1840×1540、WB=2850)と比べると、全長プラス100mm、全幅プラス50mm、全高マイナス70mm、ホイールベースはマイナス150mm。ホイールベースの延伸分を加味すると、最小回転半径もより大きくなるはず(6m超となる見込み)で、クラウンクロスオーバーには標準搭載だったDRS(後輪操舵機構)は、セダンにも間違いなく標準搭載となるだろう。
なおパワーユニットだが、2023年4月12日にトヨタが発表した最新情報によると、セダンには、従来のTHS-IIと、MIRAIと同じFCEV(水素燃料電池車)があると判明。ちなみに、スポーツとエステートには、従来のTHS-IIとPHEVが用意されるという。新型クラウンの4バリエーションに、ハイブリッド、ハイブリッドターボ、FCEV、PHEVといった複数のユニットを用意するとは、なんとも贅沢だ。
新型クラウンセダン。クラウンクロスオーバーと比べると、全長プラス100mm、全幅プラス50mm、全高マイナス70mm、ホイールベースはマイナス150mmとなる。背が低くロングなスタイリングだ
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運転が楽しいクルマになりやすいセダンだが、近年は圧倒的な違いはなくなってきている
セダンのメリットは、キャビンスペースと荷室とを仕切るリアバルクヘッドがあることで、基本の車体骨格を強固につくりやすいことだ。車体が強固につくられることによって、余計な歪みが発生しにくくなってサスペンションのアライメント変化や荷重の逃げなどが起きにくくなり、サスやブレーキのポテンシャルを最大限に引き出すことができる。
また、キャビンと荷室が別々であることから、荷室からの騒音を遮断しやすく、静粛性も高くなる。加えて、空力特性や重心の高さなども、セダンは断然有利だ。これらは燃費性能や、横風安定性にも影響する。総じて、セダンの方が安定した走行特性であり、安定しているからこそ、「運転が楽しいクルマ」になりやすい。
ただ、昨今の新型車は、SUVやミニバンであっても、乗り心地やロードノイズ含めた走行性能の面で、セダンと同等以上にできている。アルファードやハリアーの静粛性は素晴らしいし、エクストレイルやハリアーの走行特性は高く評価されている。セダンでなければならない理由が少なくなってきていることに加えて、日本市場では、走行性能よりも、SUVやミニバンがもつ「便利で万能」であることのほうが求められる。走行性能が日常使いにおいて満足できるレベルであるならば、より便利で万能なクルマを求めるのは、仕方のない流れであろう。
現時点で国内メーカーが販売しているセダン系ラインアップをチェックしてみた。最多はトヨタで6車種、ここにクラウンセダンが追加となり7車種となる。日産はスカイラインのみ、ホンダはシビックのみ、マツダはMAZDA3セダンとMAZDA6セダン、スバルはWRX S4のみだ。メルセデスやBMW、アウディといった輸入車メーカーは大中小のセダンを用意しているが、国内メーカーのセダンは、圧倒的に少ない状況だ。
国内で販売しているセダンのラインアップ
トヨタ:カムリ(2023年12月に国内販売終了)、カローラ、カローラアクシオ、センチュリー、プリウス、MIRAI
日産:スカイライン(海外ではアルティマ、マキシマ、セントラ、ヴァーサなど)
ホンダ:シビック(海外では、アコード、アキュラインテグラ、TLXなど)
マツダ:MAZDA3、MAZDA6、
スバル:WRX S4、インプレッサG4(海外では、レガシィなど)
2023~2024年に予定されている新型クラウン4車種ラインアップ。新しさという面では新型クラウンセダンは一歩譲った印象だ
ひとつでよいからクラウンセダンならではの「武器が」欲しい
既存のクラウン購入者の平均年齢は60代になるという。クロスオーバーやスポーツのデザインは、珍しいモノ好きな方には響くかもしれないが、やはり伝統のセダンのほうが安心と考える方もいる。そういう背景も踏まえると、クラウンセダンは、先代クラウン並(月販2000-3000台)は売れるのだろうが、国産セダンの復権(までできなくても、市場縮小を食い止めること)ができるかどうかについては、難しいところだと思う。
すでに発売されているクロスオーバーをみる限りでは、インテリアの(操作系の使い勝手の良さ、液晶ディスプレイの大きさ、運転席からの視界、先進支援技術の使い勝手など、機能的にはなんら文句はないものの)「色気」や「艶やかさ」が、他社ライバル(グローバル販売となるのでドイツ御三家や北米、中国製セダンがライバルとなるはず)と大きな差があり、また、4月12日に公開された新型クラウンスポーツのインテリアも、レッドカラーで艶やかさは増したが、基本的にはクロスオーバーと同じデザインのようで、もう一歩欲しいところ。
先日発表となった新型Eクラスは、運転席から助手席側まで、ダッシュボード一面を液晶ディスプレイにしたような造形となるなど、ライバル車は、もっと刺激的で次世代のインテリアを持っている。
高級セダンを乗り継いできたユーザーたちにとって、ハンドリングや乗り心地、音振、燃費、加速といったクルマ本来の性能の良さは備わっていて当然。加えて、エクステリアやインテリアから受ける見栄えや先進性、雰囲気など、「満足感」や「優越感」がどれほど得られるかという点が重要だと思う。セダン界復権のためにも、新型クラウンセダンには、なんらかの「武器」が備わっていることを期待したい。
クラウンクロスオーバーのインテリア。使い勝手や視界に不満はないが、欧州車と比べると、「色気」や「艶やかさ」といったエモーショナルな雰囲気が足りていないように見える
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