女性が開発に参画したスズキの軽トラ「スーパーキャリイ」
レーシングドライバーであり自動車評論家でもある木下隆之氏が、いま気になる「key word」から徒然なるままに語る「Key’s note」。今回のキーワードは「固定観念を払拭する」です。先日、とある「軽トラック」に驚きを隠せませんでした。
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キャリイには2種類のモデルが存在する
人には抜ききれない固定観念がありますよね。過去の経験から主観的なイメージが固着し、思考の自由度を阻害してしまう。そんなことって少なくありません。とくに僕のような昭和の老害にとってはその傾向が強い。……自覚していますよ!
スズキの軽トラ「スーパーキャリイ」の商品企画は女性が主導したと聞いて、「そんなことがある?」と疑ってしまいました。それも固定観念からの弊害です。
いまさらLGBTの話題を持ち出す気はありませんが、多様性が叫ばれているこの時代に、女だ男だと属性で判断するのは不粋だというのにです。
はたらくクルマの代表とも言えるスズキ「スーパーキャリイ」からはゴリゴリの男臭さを嗅ぎ取っており、その対極である女性が開発に参画したと聞いて「そんな馬鹿な」とわが耳を疑ったのです。
スズキの軽トラは2種類。「キャリイ」と「スーパーキャリイ」が存在します。搭載するエンジンやプラットフォームなどの素材はほぼ共通していますが、決定的に異なるのはキャビンの大きさです。
キャリイは街中で見かけることの多い、一般的ないわゆる「軽トラ」ですが、スーパーキャリイはシートバックに空間があります。4シーターにするほどではありませんが、荷物置き場としては十分な広さですし、シートリクライニングが可能なのです。
そのために頭が大きく、荷台は短くなります。やや頭の大きなミニチュアダックスや芝犬のようなスタイルが可愛いですね。そのスタイルから想像できるように、たくさんの素材や工具を荷台に積んで現場に向かう……といったガテン系用途ではなく、レジャーユースで人気のようなのです。
女性チームが手がけた「Xリミテッド」
今回、女性が参画したと聞いて驚いたのは、このスーパーキャリイの「Xリミテッド」、いわばメーカーカスタム仕様のことだったのです。
外観をひと目見た瞬間に、男臭さを感じています。専用のフロントガーニッシュはブラックに塗装されています。ドアミラーもドアハンドルもブラック塗装です。専用のLEDヘッドライトのカバーもフォグランプベゼルも、ホイールさえもブラック塗装なのです。
ドアサイドとルーフのデカールは精悍さを感じさせます。ともすれば重い印象が残ってしまうルーフを、スッキリと感じさせてもいますね。ですがこれは女性の開発チームが主導したというのです。
はたらく職人系ブランドの「ワークマン」を女性がプロデュースし、ワークマン女子がオシャレになりました。無骨な釣り人のイメージをオシャレなフィッシングブランドに変えたのも女性の柔軟な発想があったからだと聞いています。ともすれば無骨な軽トラをスタイリッシュに育てたのが女性だというのも納得ですね。
そもそも、こんな話題をコラムにすることこそ、時代遅れなのかもしれませんね。
「軽トラを女性が手がけることのどこが不思議ですか?」
そう言われてしまうのでしょう。ともあれ、スーパーキャリイ Xリミテッドは、お洒落な軽トラとして人気者になりそうです。
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休憩に車に戻ると、車内熱くて乗れたもんじゃないぞ…