2020年に発売された新車のなかでも、ホンダ初の量産電気自動車という特殊性から大きな話題を呼んだ「ホンダe」。果たして、実際に使えるクルマに仕上がっているのか?
ホンダeが2020年10月30日に発売された。ピュアEV(電気自動車)というだけでなく、RR(リアエンジン・リア駆動車)の駆動方式や、あえて割り切って小型かつ航続距離も最低限におさえたシティコミューターという独創性も話題を呼んでいる。
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まだまだ馴染みの薄い存在の電気自動車。その「割り切った」という航続距離を含めて、クルマとして実際に使える出来に仕上がっているのか? そして、注目の走りは?
さっそく自らホンダeを購入したという自動車評論家の片岡英明氏が、700km走ってわかった長所、そして気になるポイントを解説する。
文/片岡英明
写真/ベストカーWeb編集部 平野学 ホンダ
【画像ギャラリー】ホンダeの魅力的な装備をチェック!!
■8月オーダー&約4か月待ちで納車されたホンダe
筆者はホンダe「アドバンス」を公式発表前にオーダー。丸みを帯びた可愛らしいルックスが購入の決め手となった
ほっこり系の愛らしいデザインと斬新な5スクリーンのインパネに魅せられ、ホンダeを正式発表前の8月にオーダーした。そして待つこと4カ月、ついにホンダeが我が家に嫁いできたのである。
まだ、街で見かけることはほとんどないし、ボディカラーがスパークイエローだから注目度も高い。走っていると脇を走っているドライバーや対向車からの視線を感じるし、信号待ちでは歩行者から熱い視線が注がれていることが分かる。
ホンダ初の量産EVとしてセンセーショナルなデビューを飾ったホンダeは2グレード構成だ。買ったのは上級グレードであり、高性能版の「アドバンス」だ。
アコードのe:HEVと同じ仕様のモーターを搭載し、最高出力154ps(113kW)、最大トルク315N・m(32.1kgm)を発生する。車両重量は1540kgだからパワーウエイトレシオは10.0kg/psだ。
■長所はやはりEVならではの加速力や静粛性
アコードe:HEVと同じ仕様のモーターが最高出力154ps、最大トルク32.1kgmを発生。アクセルを踏み込んだ瞬間にパワーが盛り上がる
リーフの上級グレードやBMWのi3ほど高性能じゃない。だが、ノーマルモードでも気持ちいい走りを披露し、流れをリードできたから、合格点を与えられる。
内燃機関と違ってモーターはダイレクト感が強い。アクセルを踏み込むと瞬時にパワーとトルクが盛り上がる。だから発進加速は得意だ。
ホンダeも発進直後から高いGを伴って軽やかにスピードを上げていく。しかも加速している時でも静かだから、余計に速いと感じてしまう。クルージング時は静かで、会話も弾む。ウインカーの音が耳障りと感じるほど、キャビンは静かである。
スポーツモードをチョイスすれば、レスポンスが一段と鋭くなり、痛快な加速を引き出すことが可能だ。アクセルペダルの踏み加減でスピードを調整し、回生ブレーキも強めにかかるシングルペダルドライブも、慣れるとゴー/ストップの多いシーンで重宝する。
長い下り坂では回生ブレーキを効果的に利かせて航続距離を延ばすこともたやすい。回生ブレーキはBMWのi3ほど強くないが、パドルを使って調整できるのがいい。また、シングルペダルのスイッチをオフにすると低速でクリープ走行する。この機能も便利だ。
■デジタルミラーなど最新装備の使いやすさや乗り心地は?
サイドカメラミラーシステムを量産車として初めて標準装備
サスペンションは前後ともストラットの4輪独立懸架で、リア駆動とした。また、可変ステアリングギアレシオも採用している。だから優れた取り回し性を見せた。軽自動車を凌ぐ4.3mの最小回転半径だからUターンや車庫入れを難なくこなす。
ただし、バックで直角に入れる駐車場では、切れ角がつかめず最初は寄せ切れないことがしばしばだった。これは慣れの問題か!?
ホンダパーキングパイロットは駐車する場所を選び、ボタンを押すだけで上手に駐車することが可能だが、狭い我が家の駐車場では人間の運転感覚を超えることはできなかった(笑)。
量産車で最初に標準装備としたサイドカメラミラーシステムも静粛性と燃費向上に大きく貢献している。カメラの6インチモニターはAピラーの付け根にあるが、画像が鮮明で、見やすい。とくに助手席側は見やすく、距離感もすぐに慣れた。
だが、ドライバー側はステアリング操作によっては陰になり、見えづらいことがある。カメラタイプのインナーミラーは画角が広いから後方の情報が分かりやすい。夜間も明るく見えるが、車種まで判別するには時間がかかる。
ハンドリングは軽快だ。しかも素直で、意のままの走りを楽しむことができる。
タイヤがミシュラン製のパイロットスポーツ4で、17インチの前後異サイズだから、接地フィールは群を抜いていい。ワインディングロードでは気持ちいいハンドリングを見せてくれた。電池を敷き詰めて重心が低いこともあり、フットワークは軽やかだ。
また、クラスを超えた上質な乗り心地も特筆できるところである。足がしなやかに動き、路面からのショックを上手に受け流す。ブレーキも違和感なく利き、安心感がある。
■最も気になる懸念は「電費」! 長距離ドライブには注意点も!?
電費は運転席のマルチインフォメーションディスプレイに表示される。エアコンを切り、エコドライブを徹底すれば電費が7km/kWh台に乗ることも
まだ700kmしか走っていないが、標高1000mまでの登降はん路を経験したし、高速道路も走った。今、もっとも気になっているのは電費だ。
リーフやBMWのi3は、丁寧に乗ると電費が8km/kWh台に乗った。が、最初の100kmの電費は驚いたことに4km/kWh台だ。
タイヤが馴染み、乗り方が分かってくると6km/kWh台まで向上し、カタログ値に肉薄する7.2km/kWhをマークしている。ただし、これは、かなりエコ運転に徹して出した数値だ。
電費が6km/kWhだと、バッテリー容量は35.5kWhだから計算上は213km走れる。7km/kWhまで延ばすことができれば、航続距離は248kmになるが、エアコンを作動させると難しいだろう。ロングドライブは思いのほか苦手だと分かった。回生ブレーキを上手に使えるように訓練すれば、もう少し電費をよくできるだろう。
かなり効果があったのは、エアコンを止めてシートヒーターを使ってドライブすること。天気がよければ、シートヒーターが強力だから、エアコンを切ってもそれほど寒くなかった。
また、予約機能を使って事前に室内の温度を最適に調整し、寒いときだけエアコンを使うと言う方法も有効だろう。が、タウンユースと割り切れば、エアコンをフルに使うことができる。
電費を延ばしたい人には、16インチのエコタイヤ、ヨコハマ製ブルーアースを履く標準仕様がオススメだ。
これ以外に不満に感じるのは、狭いラゲッジルームと後席が分割可倒式でないことだ。ラゲッジルームのアンダートレイに普通充電用のケーブルが収納されているが、充電口は前だから、充電時に面倒と感じることもある。
また、小物の収納も、もう少し欲しいところだ。当然、価格はコンパクトカーとしては割高と感じる。
ホンダeに乗っていて不満を感じるポイントもある。例えばラゲッジルームが狭く、後席は分割可倒式でない
◆ ◆ ◆
いくつか弱点はあるが、新しもの好きには魅力的な1台だ。シームレスで滑らかな加速感はエンジン車には望めないし、デザインと機能にも新しさがギッシリ詰まっている。
ライバルを圧倒する未来感とペット的な可愛らしさに惚れ込んで買ったのだから、これから先、上手に付き合っていきたい。
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