量産化も視野 BMW製スタック採用
英国の化学大手イネオスの自動車部門イネオス・オートモーティブは、7月13日に開幕した英グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピード2023において、水素燃料電池車(FCEV)のプロトタイプを公開した。
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低炭素化へのコミットメントを示すもので、同社のグレナディアをベースに開発された。従来の内燃エンジンに代わり、BMW製の水素燃料電池スタックを搭載している。イネオスによると、このスタックには5kgの水素が充填されており、航続距離は約200kmであるという。最終的な量産モデルでは550kmを目指すとしている。
プロトタイプでは、フロントに1基、リアに2基のモーターを搭載し、合計815kg-mのトルクを発生する。量産モデルではさらにフロントにモーターを追加し、合計1835kg-mのトルクを目指すという。しかし、イネオスはモーター出力については言及せず、オフローダーにとって「重要なのはトルクだ」と述べた。
イネオスによると、トルクベクタリング機能により、荒れた路面での操縦性が向上し、最小旋回半径も小さくなるという。このような利点は、他の電動4×4でもすでに生かされている。リヴィアンR1と次期メルセデス・ベンツEQGは、どちらもその場で回転する「超信地旋回」を行うことができる。一方、GMCハマーEVは「カニ歩き」が可能で、ステアリング入力を必要とせず、ベクタリングだけで左右に走行することができる。
バッテリーEVパワートレインではなく水素燃料電池を採用したのは、年間40万トンの水素を生産するイネオスの化学事業が理由となっている。グレナディアFCEVの量産化が実現すれば、水素の需要が高まり、イネオスにとって好循環が生まれることになる。
同社はすでにボンネットの「パワーバルジ」は量産モデルには採用しないと指摘するなど、仕様の計画を明かしていることから、量産化の可能性は高い。
イネオスのFCEVプロジェクトは、2021年後半に英国のエンジニアリング会社AVLとともに開始され、2022年を通して走行テストが行われた。
また、イネオスはFCEVパワートレインを「使用することを検討する」という覚書を韓国のヒョンデと交わしたことから、当初はヒョンデの技術が採用されると言われていた。ヒョンデはFCEVを積極的に導入しており、一部の市場でSUVのネッソを販売しているほか、昨年はNビジョン74コンセプトを発表している。
イネオス・オートモーティブのリン・カルダーCEOは、「プロトタイプは、水素技術が実現可能であることを証明しています。しかし、今必要なのは、次世代の水素自動車用のインフラを提供するための政策立案者の支援です」と語った。
カルダーCEOは今年5月、交通輸送の二酸化炭素排出量削減のためには「技術の選択肢が広ければ広いほど、より良い結果が得られる」と述べている。
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