BMWの6シリーズというと、本誌編集長や僕のような世代のクルマ好きは、635CSiやライトウェイトモデルの635CSLに代表される、1970~80年代に存在した流麗な2ドアクーペの姿が脳裏に浮かんでくる。
では、現在の6シリーズとはどんなモデルか。そこには2ドアクーペ、2ドアカブリオレ、4ドアグランクーペの基本3モデルがあって、それらは5シリーズをベースに成り立っているという意味では、昔の6シリーズと共通する。
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ところが、そこに新たに加わった6シリーズGran Turismo=グランツーリスモは5ドアのハッチバッククーペで、しかもそのボディは他の3モデルよりさらに大きい。そのホイールバースからも分かるように、7シリーズをベースにしているのだ。
したがって、そのボディは外寸5105×1900×1540mm、ホイールベース3070mmという、全長5mを超える堂々たるサイズ。試乗した640i xDrive Gran Turismoの場合、そのフロントに3リッター直6ツインターボを搭載、xDriveゆえにフルタイム4WDとなる。
そこでスペックを大掴みにチェックすると、3リッター直6ツインターボエンジンは340psのパワーと45.9kgmのトルクを発生、8段ATを介して、2トンの大台をオーバーする2010kgの車重を走らせる。
プライスは税込み車両本体価格1080万円、それに2つのパッケージとサンルーフなどのオプションを装備した試乗車の場合、1181.6万円ということになる。
そういえば、全長5m強の5ドアハッチバッククーペという点では、ポルシェパ ナメーラの素のモデルの1162万円というプライスが思い出される。ただしあっちは後輪駆動だけど。
さてこの640i GT、まずはキャビンの広さが印象的で、フロントシートの着座位置がわりと高いのはスタイリングのイメージからすると少し意外だが、リアシートにもゆったりと寛げる空間が確保されている。スタイルはクーペ風でも、内容は5ドアハッチバックというわけだ。したがって、後方のラゲッジスペースもなかなか使い勝手がよさそう。
同じ試乗会で直前に乗ったX2が硬めの乗り味を持ったクルマだったこともあって、走り出して印象に残るのは乗り心地がソフトなことだった。全長5mを超え、車重も2トンを超える大型車だから、乗り心地が快適なのは当然といえば当然だが、これは640i GTの美点だといえよう。
しかしだからといって、その柔らかさがハンドリングに悪影響を与えていないのも、BMWらしいところだといえようか。芦ノ湖スカイラインのワインディングロードに入ると、ドライバーの狙ったとおりのラインを描いて、いいペースでそこを走り抜けていける。
しかも、3リッター直6ツインターボエンジンと変速のスムーズな8段ATのもたらすパフォーマンスは、平坦路はもちろん、ワインディングロードの上りでも、640i Gran Turismoを常に充分なペースで走らせる。
とはいえそのドライビング感覚が、とりわけスポーティなものかというと、必ずしもそうとはいえない。そこが、ほぼ同サイズ、同プライスの5ドアハッチバック、パナメーラと若干違うところだろうか。
そういった様々な事実や印象を重ね合わせて考えてみると、この6シリーズGT、キャビンや荷室に家族や友人とその旅支度やスポーツの道具なんかを積み込んで郊外に出掛けるのが好きな、アクティブなアウトドア派に向いていたりするクルマではないだろうか。
だったらSUVを、というのが今の世のトレンドだが、背の高いクルマやSUVを好まない、というアクティブ派も必ずいるに違いない。BMW 6シリーズ Gran Tourismo、しかも4WDのxDriveは、そういった人たちにとって絶好の1台になり得るクルマだろうと思った。
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