■初代「LS」は世界の高級車メーカーに衝撃を与えた
2020年7月7日、レクサス新型「LS」が世界初公開された。
改良新型LSは、DNAである静粛性と乗り心地の大幅向上を追求するため、最新の高度運転支援技術「Lexus Teammate(レクサス・チームメイト)」を採用するなど、フラッグシップモデルにふさわしい進化を遂げている。
レクサス・チームメイトとは、車両の高い基本性能を徹底的に磨き上げるとともに、ディープラーニングを中心としたAI技術も取り入れ、運転中に遭遇するさまざまな状況を予測し対応することを支援するもので、凄腕ドライバーの運転操作を取り入れたシステム制御にこだわることで、安全性と優れた走行安定性を実現しているという。
今回登場したモデルは、2017年に登場した5代目LSの改良版だ。LSは初代が1989年に発売され、いまに続くレクサスの礎を築いたモデルとなる。
レクサスのフラッグシップモデルとして、30年以上にわたり90以上の国と地域で累計約87万台を販売してきたという。
そんな最新のレクサスLSと、初代LS(日本名:セルシオ)」を比較してみた。
※ ※ ※
メルセデス・ベンツやBMWといった欧州メーカー、そしてキャデラックやリンカーンと行ったアメリカメーカーで占められていた高級ブランドマーケットに参入スべく、アメリカを主要マーケットとしてトヨタが立ち上げたブランドが「LEXUS(レクサス)」だ。1989年のブランド立ち上げと同時に、ミドルセダンの「ES」とともに最上級車として登場したのが初代LSになる。
LSは1989年1月に開催された北米交際自動車ショー(デトロイトショー:NAIAS)で世界初公開、同年9月から「LS400」として販売を開始した。
まだレクサスブランドが展開されていなかった日本では、北米から遅れること1か月の1989年10月9日、初代トヨタ「セルシオ」として登場した。
日本でレクサスブランドの展開が始まったのは2005年。それまで3代にわたり、レクサスLSは日本でセルシオとして発売されたことになる。
「ワールド・ワイドに通用する世界トップレベルのハイ・パフォーマンス・ラグジュアリー・カーの創造」を基本コンセプトとして開発されたセルシオは、徹底した走り込みを実施し、優れた高速クルージング性能を実現。高速直進安定性や操縦性、スムーズな動力性能、極限ともいえる静粛さを手に入れた。
またCd値は0.29を実現。当時はバブル景気に湧いていたころで、開発も徹底的におこなわれている。
こうして高級車にふさわしい性能加え、入念な作り込みと仕上げを施したことから、日本だけでなく北米市場でもまたたく間に大ヒットとなった。
LS(セルシオ)の高い品質は、その後、世界中の高級車の設計にも大きな影響を与えることになり、「高級車の新たな標準をつくった」とまでいわれた。
■新型LSと初代セルシオを比較すると31年の進化がわかる
1989年に発売された初代セルシオと新型LSを比較すると、31年のLSの進化が見えてくる。
今回は、初代セルシオと従来型LSを比較してみた。改良新型LSの詳細なスペックはまだ明らかになっていないが、マイナーチェンジなので従来型LSと基本的なスペックは大きくかわらないはずだ。
●スリーサイズ:現行型は初代よりも全長が240mm長い
まず、大きさを比較してみよう。
初代セルシオは全長4995mm×全幅1820mm×全高1425mm(エアサスペンションは1400mm)、ホイールベースは2815mmだった。
対する現行LSは、全長5235mm×全幅1900mm×全高1450mm(FR。AWDは1460mm)、ホイールベースは3125mm。つまり初代と比べると全長は240mm長く、全幅は80mm幅広く、全高は25mm高くなっている。ホイールベースは110mm長くなった。
ちなみに、初代セルシオは室内長2020mm×室内幅1515mm×室内高1160mm。現行型LSは室内長2080mm(Fスポーツ、Iパッケージは2145mm)×室内幅1615mm×室内高1160mmとなっている。
車両重量は、初代セルシオが1690kgから1750kg。現行型LSは2150kgから2390kgだ。
このクラスのライバルが全体的に代を重ねるごとに大型化するため、LSもこの31年間で大きくなっている。
●パワートレーン:初代セルシオは1種類、現行型LSは2種類
初代セルシオに搭載されたパワートレーンは、260ps・36.0kgm(約353Nm)を発生する1UZ-FE型4リッターV型8気筒ガソリンエンジン。
現行型LSは422ps・600Nmを発生する3.5リッターV型6気筒ツインターボエンジン(LS500)と、299ps・356Nmを発生する3.5リッターV型6気筒エンジンに180ps・300Nmを発生するモーターを組み合わせるハイブリッド(LS500h)の2種類。駆動方式は初代がFR、現行型LSはFRと4WDを用意している。
●燃費:ハイブリッドも用意する現行型が圧倒的に優れる
セルシオは1989年から2006年まで、3代約17年間の歴史があるが、ハイブリッド仕様は発売されなかった。レクサスLSにハイブリッドが登場したのは2007年のこと。これは4代目LSに設定された。
初代セルシオの10モード燃費は、A仕様・B仕様・C仕様が7.1km/L、C仕様Fパッケージ装着車が6.7km/Lだった。
対する現行LSは、ハイブリッドモデルのWLTCモード燃費が12.6km/Lから13.6km/Lという、このセグメントのモデルとしては優れた燃費を叩き出している。ガソリンエンジンモデルのWLTCモード燃費は発表されていないが、JC08モード燃費は9.2km/Lから10.2km/Lとなる。
ハイブリッドの燃費の良さだけに目が行きがちだが、ガソリンエンジン車も相当良くなっているのが特徴だ。
●車両価格:23年という時の流れをしみじみと感じさせる
初代セルシオと現行型LSを比較して、一番大きな差は車両価格かもしれない。
初代セルシオ登場当時の価格は一番安いA仕様で455万円(東京。消費税抜き)、最上位グレードのC仕様Fパッケージ装着車でも620万円だった。
これは消費税抜きの価格で、1989年当時の消費税率は6%(自動車の税率は特例処置)だったから、それを掛けてみると初代セルシオの価格帯は482万3000円から657万2000円となる。
対する現行型LSは、「LS500」の2WDが999万6000円(消費税込)から。最上級の「LS500H EXECUTIVE」(AWD)は1711万7000円になる。
エントリーモデルの価格差は517万3000円、最上級グレードでの比較では、なんと1054万5000円もの差が出てくる。
初代セルシオが登場した当時、高級車が売れに売れた時代だった。それでもセルシオの価格は国産セダンのなかでは高価だったが、現行型LSとの価格差を見ると、やはり31年という時代の流れを感じる。
※ ※ ※
リリースによると、レクサスのチーフ・ブランディングオフィサー/マスタードライバーの豊田章男氏は、歴代LSを「常にイノベーションの精神を貫き、その時代に新たな技術や価値を提供することで変革を起こすクルマ」と位置付けているという。
現行型LSは2017年にフルモデルチェンジされた5代目モデル。フラッグシップとしてたゆまぬ進化を続けるLSだからこそ、2020年初冬に日本で発売される予定の、改良新型LSの出来が楽しみになってくる。
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みんなのコメント
セルシオはトヨタの情熱と愛情が伝わって来る車。
現行LSは良い車だろうけど、なんか温かみと情熱が感じられないなぁ。
「高級車」とか「スポーツ(ティー)カー」の【顔】じゃないだろ、コレ?