この記事をまとめると
■現代のクルマのステアリングには「パワーステアリング」というシステムが使われている
ペダルとハンドルとギヤ操作で勝負……できたのは昔のハナシ! いまどきのレーシングドライバーは超複雑なスイッチをイジりながら走っていた
■1950年代から油圧式パワーステアリングが採用され2000年前後から電動式が増えてきた
■電動パワーステアリングを採用することで先進安全システムなどとリンクが可能になった
パワーステアリングの歴史を振り返る
いま販売されているクルマのほとんどがパワーステアリングを装備している。このため、パワーステアリングをあえて話題にする機会は減った。
パワーステアリングが普及し始めるのは、1950年代になってからといわれている。当初は米国車を中心に、油圧式のパワーステアリングの採用がはじまった。そののちに電動パワーステアリングが誕生する。
油圧式は、エンジンの動力を利用して油圧ポンプを稼働し、ステアリングラックの右側と左側で油圧の差が生じる仕組みを介し、操舵力を手助けする。エンジンの力を借りるので、エンジンがまわっていなければ作動しない。また、クルマを走らせるための動力であるエンジンの力の一部を利用するので、燃費が若干悪化する(約3%といわれる)ほか、パワーロスも生まれる。
とはいえ便利なことに変わりないので、世界的にこの油圧式パワーステアリングが広がった。その後、電動パワーステアリングが登場するのは、気候変動対策に対処するため、燃費の改善が迫られたからだ。採用が増えだすのは、2000年前後のことである。
電動パワーステアリングは、電気モーターを、ステアリング軸やステアリングラックに取り付け、これを補器用バッテリーの12V電源から動かし、操舵の補助力とする。エンジンの力を利用しないので、それまで油圧パワーステアリングを使うために消費してきた燃料分を節約できる。
ただし、モーターは作動時のトルクが大きいため、誕生当初は、操舵する際に強制的に補助される感触があり、不自然さをもたらすことがあった。あるいは、タイヤサイズが変わると、操舵に必要な力加減も異なるため、タイヤサイズの違うグレードでは、違和感を生じることもあった。
今日では、ほとんどのクルマが電動パワーステアリングを採用する。電気自動車(EV)に限らず、エンジン車も電動パワーステアリングを使う時代である。
メリットは燃費改善はもちろんだが、モーターを駆動する電力を電子制御することにより、運転支援のため、運転者の操作とは別に、操舵させることができる点だ。
たとえば、車線からのはみだしを防止したり、車線の中央を維持したりしながらクルマを走らせるうえで、電動パワーステアリングを介した制御は欠かすことができない。
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みんなのコメント
ラック&ピニオン以外でも油圧パワステは組み合わされますし、油圧式でも電動ポンプを用いる方式もあります。
EPSのメリットは雀の涙ほどの燃費改善よりも単純な構造による生産コスト低減の方が大きいでしょう。