初期は従来の鍵のようにエンジン始動はスイッチをひねった
10年以上クルマに乗っている人なら、「クルマの施錠開錠はキーレスエントリーか鍵穴で行い、エンジンのオンオフはキーで行う」、要するに家の鍵のようなキーを使うことに違和感はないだろう。
しかし、21世紀以降に普及した四角い発信機のようなモノでクルマの施錠開錠と、エンジンのオンオフを行う”スマートキー”が当たり前となっている若い世代には”クルマの鍵”と言われても、もうピンとこないのかもしれない。
そのスマートキーについて今一度おさらいしてみると、スマートキーとはキーとクルマが電波で交信し、クルマの施錠開錠やエンジンのオンオフを機械的なキーを使わずにできる機構のことである。
歴史を振り返ると採用が早かったのは欧米のクルマで、初採用は1993年登場のシボレーコルベット。それに続いたのは1998年登場のメルセデス・ベンツSクラスの4代目モデルだった(2台のスマートキーは日本の電波法に適合していなかったため、日本では販売されていない時期もあった)。
日本車で初採用したのは「さすが日本のフラッグシップ!」というべきところなのか、オプションという形で設定された2000年登場の3代目セルシオだった。
3代目セルシオのスマートキーは現代のものより少し大きい台形に近い形状をしており、ドアハンドルの黒いボタンを押すことで鍵の施錠開錠ができ、鍵が閉まっていてもボタンを押すだけでトランクを開けられるといった、施錠開錠に関しては現代のクルマとほぼ変わらなかった。
しかしエンジンのオンオフに関しては、現代のようなプッシュボタンではなく、ガスコンロのような形のスイッチを回す方式。初物ということもあり馴染めないユーザーへの対応もあったのか、ガスコンロのような形のスイッチのところにスマートキーを入れて回してもエンジンのオンオフが可能だった。
3代目セルシオのあと、スマートキーは日本車では意外にもコンパクトカーのデュエット(パッソの前身でダイハツ製のトヨタ車、2001年のマイナーチェンジ時)、3代目マーチ(2002年登場)などが採用し、普及が進んだ。
普及の過程では、形状が現在多い四角いものや日産車が使う細長い楕円形のもの、レクサスが使うカード状のものが登場。形状といえば、マニアックなところでは、トヨタがクラウンで腕時計とスマートキーが一体になったものを登場させた。またトヨタは「施錠開錠はスマートキーで可能だが、エンジンのオンオフは鍵で行う」という微妙なスマートキーをカローラ系や初代ウィッシュで採用したこともあった。
機能としてはトヨタ車、スバル車あたりではドアハンドルの黒いボタンがなくなり、スマートキーを持っていればドアハンドルを握るだけで開錠、ドアハンドルの一部に触る、クルマから離れるだけで施錠できるといった進歩も遂げている。
そのスマートキーのメリット、デメリットを改めて考えてみよう。
●メリット
まず、スマートキーを持っているだけで開錠施錠、エンジンのオンオフができるので、動作が文字通りスマート。キーをポケットやバッグから出す手間がない(とくに女性にはありがたく、スマートキーがコンパクトカーから普及したのもうなずける)。
また、鍵穴がないor少ないだけに、盗難のリスクが減少する。しかし、最近ではスマートキーとクルマが交信する電波をキャッチする機械を使って、開錠しエンジンも掛けクルマを持ち去るリレーアタックという盗難も増えているので注意が必要だ。そのほか、鍵穴がないためドアハンドルまわりをスタイリッシュにデザインできる。
●デメリット
普及によりコストダウンは進んでいるが、やはりコストが高い。また、年配層を中心に操作に慣れない人もいるといったことが挙げられる。
若干のデメリットはあるが、それ以上のメリットがあるだけに、スマートキーでない日本車は今では安価な軽自動車や商用車、比較的安い価格帯の登録車の廉価グレード、競技ユースも想定したシンプルな一部のスポーツモデルくらいなくなっており、この流れは続くことだろう。
そうなると電気自動車やハイブリッドカーの普及もあり、クルマの始動は「エンジンを掛ける」ではなく、パソコンのように本当に「スイッチを押して起動する」と言われるようになるのかもしれない。
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