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電気自動車はフツーが1番?──メルセデス・ベンツ EQC試乗記

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電気自動車はフツーが1番?──メルセデス・ベンツ EQC試乗記

燃料電池からマイルドハイブリッドまで、メルセデスのパワートレーン電動化戦略全般を指すキーワードが、エレクトリックやインテリジェンス、エモーションなどの意を込めたという「EQ」だ。

現在もSクラスなどに搭載されるISGを使った48Vシステムなどにその名が使われているが、車名そのものにEQを使った初のモデルとして登場するのがこの「EQC」。メルセデスとしては初めての量産型ピュアEVである。

メルセデス初のEVは想像以上にフツー!?──EQC、いよいよ日本上陸!

正式車名はメルセデス・ベンツ EQC400 4マチックである。“400“は、近年、ほかのモデルでもみられる通り4リッター・エンジン相当の動力性能を有することを指しており、4マチックは前後軸両方にモーターを搭載する2モーター構成のモデルであることおよび4WDであることを示す。

EQC400 4マチックの総合出力は408ps、最大トルクは760Nmに達しており、おなじ4リッター・エンジン相当でも特性はディーゼルに近い。

変速機を持たないこともあり、最高速は180km/hに留まるが、2.4tオーバーの車重をして0~100km/h加速は5.1秒と、ちょっとしたスポーツカー並みの瞬発力を誇る。

日産「リーフ」などとおなじ、ラミネートパッケージ構造のリチウムイオン電池は、384のセルを6つに分割し、床下に搭載する。総容量は80kWhだ。航続距離は欧州NEDCモードで最大471km、WLTCモードでも416kmである。

なお充電は、欧州の家庭用にあたるAC230Vで約11時間。ダイムラーやBMW、フォルクワーゲン・グループなどのドイツ系メーカーが共同出資して整備を進める急速充電ネットワーク「IONITY」の110kW急速充電機を使えば、約40分で80%の充電が可能になる。

EQCは、ベースとなった「GLC」とディメンションやサスペンション形式などを踏襲しつつ、アーキテクチャーは巧みにEV用に最適化されている。

それを象徴するのは前方にパイプ組みされたセクションで、バッテリーもしくは将来的に登場するはずのFCEV(燃料電池自動車)が搭載する水素タンクの衝撃保護的な役割などを兼ねたスペースだ。それでいて、居住性や積載力といったユーティリティ面はベースであるGLCに準拠するし、着座姿勢に床高感を覚えることも殆どない。

専用設計のプラットフォームではないところをどう捉えるかは人それぞれだ。筆者は、メルセデスが想定していた以上に電動化の波が早く訪れ、それに対応するための一つの策であるようにも思う。はやく訪れた理由は、とりもなおさず中国の豪腕的なNEV車(新エネルギー車)規制である。中国での販売依存度の高いドイツ・メーカーは、おしなべてそこに追従せざるを得ないという事情もあるだろう。

一方、メーカー側は、未だ先行きが完全に見切れないEVの普及に対し、収支を度外視した投資もおこなえないという事情もある。それはトヨタやGMとておなじだ。

ただし、EQCがそういう妥協的なエンジニアリングで出来ていると切り捨てるのが、まったくもって早計であるのは乗ればすぐに伝わってくる。まず感心させられるのは加減速コントロールのリニアさだ。アクセル側は走り出しの強大なトルクを巧く諌めつつ、踏む量に応じてリニアに呼応してくれる。意思をもって踏み込めば“ズシン”と重く、そして長いGを伴ったいかにもEVらしい加速を味わえるが、それを浅はかなセールスポイントとせず、きちんとクルマとしてのフレキシビリティを第一に追求している辺りはいかにもメルセデスのプロダクトらしい。

同様にブレーキペダルのタッチ、そして回生と油圧の協調制御も違和感なく纏められている。

回生ブレーキの減速感がステアリングに据えられたパドルによって調整出来るロジックは、ほかのEVとおなじだ。エコ、コンフォート、スポーツと、出力特性を可変出来るドライブモードを搭載するあたりも珍しい話ではない。

が、ひとつユニークなのはそこにマックスレンジなるモードが用意されている点だ。これは、カメラ捕捉した標識の制限速度を超えにくくするよう、スロットルに擬似的な底づき感を持たせるほか、本国仕様では、ナビゲーションの地図情報を活用し、勾配や曲率を事前に判断し、回生による効率的な加減速をおこなう。つまり、航続距離をできるだけ伸ばすよう、クルマ側が積極的にサポートするのだ。

EQCの動的質感は、総じて膨大化したメルセデス・ファミリーにおいても中の上くらいには位置すると思う。650kgにも達するバッテリー・ユニットを床下に積むことも大きく関係しているはずだ。

当然ながらパワー&ドライブトレーン起因のノイズレベルは劇的に低いが、それに伴い浮き立ってくる風切り音やロードノイズ、そして高周波のインバーター系ノイズなどを相当入念に封じているため、とくに快適性においてはEセグメントを上まわると言っても過言ではないだろう。

重心の低さはコーナーでの安定感はもちろん、通常時の乗り心地面においても巧く効いており、無駄なロールやピッチもとても少ない。想像するに、乗り物が苦手な人にも試す価値のありそうなライドフィールである。

現状できる技術をもって、どこまで既存車と違わぬ使い勝手を実現できるか? その上でEVならではの価値をどのようにもたらすか? EQCのデザインやパフォーマンスを確認するのに、メルセデスのEV第1弾としては、守り側に寄せたコンセプトだったようだ。

が、それはすなわちメルセデスが長年にわたって積み重ねてきた「最善」をEVにおいても反映させたということなのかもしれない。ボタンひとつで狂ったような加速が始まるなどといった仕掛けはないが、それもまたメルセデスの示す見識なのだろう。ともあれ冷静な評価に値するEVが世に出始めたのは喜ばしいと思うのであった。

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