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ガソリン・エンジンの魅力を味わうなら今のうちか──ボルボXC60リチャージ・プラグ・イン・ハイブリッド試乗記

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ガソリン・エンジンの魅力を味わうなら今のうちか──ボルボXC60リチャージ・プラグ・イン・ハイブリッド試乗記

ボルボのミドルクラスSUV「XC60」のプラグ・イン・ハイブリッド仕様に、小川フミオが九州で乗った。長距離を走っての印象は?

長距離が気持ちいい

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けっこう長い距離を走るのが好きというひとは、ボルボと相性がいいかもしれない。プレミアムSUVの「XC60」はとりわけ、パワーと快適性が両立していて、よく出来たロングツアラー(長距離移動に向いているクルマ)だ。

実力の一端をあらためて体験できたのが、「XC60リチャージ・プラグインハイブリッドT8 AWDインスクリプション」(以下T8)で、7月中旬、福岡空港から平戸までの約160kmを往復したときだ。

このモデルはXC60シリーズでもっともパワフルだ。前輪は2.0リッター・ガソリン・エンジンと電気モーターによるハイブリッドで、後輪はモーターで駆動する。

電動スーパーチャージャーとターボチャージャーによって、最高出力233kW(318ps)と最大トルク400Nmを発生するエンジンと、フロント34kW/160Nm、リア65kW/240Nmのモーターによるパワーユニットだ。全長4690mm、全高1660mmのボディに対して、充分いじょうの力を持つ。

ハイブリッドモードを選んでいると、駆動用バッテリーが表示上ゼロになるまではEVモードで走り、そのあとエンジンが始動する。移行はスムーズなので、ドライバーを含めて乗員は気づかないだろう。燃費はリッターあたり12.6km(WLTCモード)と悪くない数値が発表されている。

プラグ・イン・ハイブリッド・システムを採用している理由は、欧州や北米の排ガス規制を考慮してのことだ。ひとつは燃費(つまりCO2排出量の削減)、もうひとつは、ガソリンやディーゼルなど内燃機関(ICEともよばれる)のクルマの走行禁止エリアが欧州で増えつつあることへの配慮だ。

なので、T8には「チャージ(充電)」というドライブモードがそなわる。これを選択するとエンジンのパワーをバッテリー充電へ振り分ける。燃費に影響が出るので、上記のような走行禁止エリアがない地域の住人には無関係ともいえるモードである。日本の市街地でも早朝ゴルフに行くときなど重宝する、という声を聴く。いろいろと役立つ場面があるのだ。

複雑な思い

車重は約2.2tあるものの、トルクがたっぷりある電気モーターのおかげで重さは感じさせない。モーターによる加速は力強く、よく動いて車体をフラットに保ってくれるサスペンション・システムとあわせて、ストレスをあまり感じないドライブが味わえる。

欧州委員会はさきごろ、2035年にはハイブリッド車およびプラグインハイブリッド車の販売を禁じると発表した。充電インフラ整備がまだ充分でないと言われていることなど考えると、衝撃的な内容だ。XC60も(XC90に続いて)モデルチェンジをおこない、ピュアEVへと変わるのだろうか。

日本にも持ちこまれたピュアEVの「C40」や、さきごろオンラインで公開された「コンセプトリチャージ」(XC90の後継モデルと噂される)などによって、2030年までにEV専門メーカーになると公言しているボルボ。なので、エンジンの話をしては的外れになってしまうおそれもある。でも、今回のハイブリッド、エンジン走行も良かった。

エンジンだけで走っていても、アクセルペダルの踏みこみに繊細に反応してトルクを生み出してくれるフィールは印象ぶかい。むかしからガソリン車になれている身には、発進時はモーターが手助けするとはいえ、そのあとの内燃機関ならではの加速感を味わわせてくれるT8を気に入った。とはいえ、環境問題もあるし……と、ドライブしながら、私はちょっと複雑な思いにとらわれた。

ゆったりとした気持ちで走るにかぎる

平戸は、長崎県北西部にある。西九州自動車道をはじめ自動車専用道と一般国道が交互に現れるルートを使い、平戸大橋をわたって、中心ともいえる平戸島へと入る。南北に45kmもあって、海にむかって棚田が並ぶ風景や、キリシタン関連遺産などを見てまわるのが、クルマでの旅の醍醐味とされる。

平戸島は、棚田が名物というだけあって、平地部分がごく限られていて、道は上りと下りが多く、屈曲している。T8のドライブ性能にはぴったりというか、T8のおかげで、ストレスなく走ることができた。

T8には電子制御エアサスペンションを使って、足まわりの設定を最適化する「FOUR-C」が標準装備されている(他のXC60ではオプション)。ちょっとスポーティに感じられるステアリング特性といい、カーブでのロードホールディングといい、運転を楽しめるのは、このシステムが貢献してくれているからであるはずだ。

梅雨あけの北九州は、自動車道のまわりの植え込みがすくすくと伸び、むしろうっそうとして、本来は見えるはずの海岸の風景すら、クルマの乗員の眼から隠してしまうほど。緑の壁に沿ってクルマを走らせているような気にすらなってくる。

平戸と福岡を往復するルートは、“九州速度”と言いたいような、のんびりしたペースのクルマだらけ。制限速度が40km/hのところはだいたい30km/hから35km/h、80km/hだと70km/h、といったぐあいだ。しかも追い越せる場所はごく限られているので、こちらも腰をすえて、九州速度に合わせて走る必要がある。

そういうときは、T8のホールド性のいいシートに身をあずけ、Bowers & Wilkinsの1100ワットの15スピーカー(サブウーファーつき)が再生してくれる音楽を楽しみながら、ゆったりとした気持ちで走るにかぎる。さいわい、T8は速度を出していないとつまらない、というクルマではない。

ふたりで乗るにはもったいないと思えるほどの、効率のよいパッケージによる広い室内と、いまでも他のメーカーがなかなか追従できない透明感のあるインテリアの造型とで、リビングルーム感覚が堪能できるのだ。

価格は949万円なので、価格からしても高級車だ。XC60には、マイルドハイブリッドの「B5」(639万円~)と同「B6」(799万円)もラインナップされている。両車のちがいはパワーだ。これらもドライブが楽しめるモデルだ。購入を考えているひとには、ディーラーで乗り較べる楽しみがある。

文・小川フミオ 写真・安井宏充(Weekend.)

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  • 今XC60で一番売れているグレードは在庫や中古のディーゼルらしい
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