■イマイチ評判が良くなかったクルマたち
毎年、数多くのクルマが発売され、大ヒットするモデルがある影で売れないモデルが存在します。
スープラ並みに速いセダンがあった? 絶滅寸前なスゴいセダン5選
売れない理由は、外観のデザインがユーザーに受け入れられなかったり、見た目から期待するほどの性能でなかったりとさまざまです。
そこで、かつて販売されたクルマのなかから評価が低かった残念なモデルを、5車種ピックアップして紹介します。
●フォード「スコーピオ」
欧州市場でラグジュアリーカーを購入するユーザーに向け、欧州フォードから1985年に初代「スコーピオ」が発売されました。ボディタイプは当初、5ドアハッチバックのみでしたが後にセダンとステーションワゴンが加わります。
欧州での初代スコーピオの評価は高く、1986年には「ヨーロッパ・カー・オブ・ザ・イヤー」を受賞しました。
そして、1994年にモデルチェンジされた2代目では、内外装のデザインを一新。また、脚まわりの改良により走行性能の向上が図られます。
しかし、小ぶりなヘッドライトとグリルを配したフロントフェイスと、ボッテリとしたリアのデザインが酷評され、販売は極端に低迷しました。
デザインにテコ入れがおこなわれましたが、販売台数が上昇することなく、スコーピオは1998年に生産を終了。後継車は無く、これがきっかけで欧州フォードは高級セダン市場から撤退してしまいます。
●日産「レパードJ.フェリー」
1980年に登場した日産初代「レパード」は、斬新なスタイリングの4ドア/2ドアハードトップで、燃費計やフェンダーミラーワイパーなどの先進機能を搭載して話題となりました。
1986年に発売された2代目では、当時大人気だったトヨタ「ソアラ」を意識した2ドアクーペに一新され、TVドラマシリーズ「あぶない刑事」の劇中車として使用されたこともあって、若者を中心に人気となります。
そして、1992年に登場した3代目にあたる「レパードJ.フェリー」は、先代の2ドアクーペとは異なり、トヨタ「クラウン」や「セルシオ」をライバルとして捉えた、エレガントな高級サルーンに生まれ変わります。
最高出力270馬力を発揮する4.1リッターV型8気筒エンジンを搭載するなど、北米市場を強く意識していました。
しかし、国内では高額な価格設定と「尻下がり」が特徴的なリヤデザインが不評で、一気に不人気車となってしまいます。
1996年に4代目が発売されると車名をレパードに戻し、「セドリック/グロリア」をベースとした比較的オーソドックスなデザインのセダンに改められました。
●ロータス「エラン」
ロータスは天才技術者コーリン・チャップマンが創業した、イギリスを代表するスポーツカーメーカーです。
F1マシンを製作するほどの高い技術力を持っていたロータスは、高性能な市販車を数多く生み出し、スポーツカーメーカーとしての地位を盤石なものにするため、欧州だけでなくアメリカ市場での拡販を狙いました。
そのために開発されたのが、1962年に登場した初代「エラン」です。
エランは鋼板製フレームにFRP製ボディを架装したオープン2シーター(後にクローズドボディを追加)のFRスポーツカーで、軽量な車体にパワフルな1.6リッター直列4気筒DOHCエンジンを搭載して、優れた走行性能を発揮。
当初の目論見どおり、エランは欧州とアメリカでヒットし、その後も改良が重ねられ、1975年まで販売されました。
そして、ロータスは1980年代になるとトヨタと資本関係を結び、1986年にはゼネラルモーターズ(以下、GM)の傘下に入ります。
1990年にはオープン2シーターの2代目エランが登場。スタイリッシュなFRP製ボディには、ロータスと同じくGM傘下だったいすゞのエンジンとトランスミッションが搭載され、駆動方式はFFとなっていました。
2代目エランは非常に優れたハンドリングを実現していたことで、新世代のFFスポーツと高く評価されます。
しかし、伝統的に後輪駆動のクルマを製造してきたロータスがFFを採用したことと、高額な価格だったことがファンから酷評され、販売は極端に低迷。
その後、2代目エランの製造権が韓国のキアに売られ、1996年にキア「エラン」(日本では「ビガート」)として販売されました
■4代目は本当に史上最大の失敗作だったのか!?
●ホンダ「1300」
本田技研工業の創業者、故・本田宗一郎氏は、空気でエンジンを冷やす「空冷」至上主義でした。
実際に、空冷エンジンは構造がシンプルで、ラジエーターやウォーターポンプなどが必要ないため、信頼性が高く、低コストというメリットがあります。
ホンダは軽自動車の「N360」シリーズやオートバイで空冷エンジンを積極的に採用し、空冷エンジンを搭載したF1を実戦に投入したほどです。
そして1969年に、1.3リッター空冷直列4気筒エンジンをフロントに搭載するFF車の「1300」を発表。
ボディは4ドアセダンと2ドアクーペがあり、グレードはエンジンの仕様で大きく2種類に分けられ、シングルキャブで最高出力100馬力のスタンダード仕様の「77シリーズ」と、4連キャブで最高出力115馬力と高性能仕様の「99シリーズ」で、どちらも当時の水準ではかなり高性能なモデルとなっていました。
しかし、1300に搭載された「二重空冷」という複雑な構造のエンジンは、空冷の利点からかけ離れた重量で、前後重量バランスの悪さから操縦性に悪影響を及ぼし、販売が低迷。
1972年に1300は「145」に改名し、新型車として水冷エンジンに換装され、ホンダの4輪用空冷エンジンは終焉を迎えました。
後に1300は失敗作だったと揶揄されますが、この時に蓄積された生産技術のノウハウと、システム化された開発手法は、大ヒットした初代「シビック」に活かされたといいます。
●トヨタ「クラウン」4代目クジラ
1971年に発売されたトヨタ4代目「クラウン」最大の特徴は、それまでの国産高級セダンとは一線を画する外観にあり、いまでは普通になったボディ同色バンパーを採用するなど、美しく先進的なデザインでした。
また、電子制御燃料噴射装置や電動リクライニングシート、アイドリングストップ機能など、当時最先端の技術が採用されています。
しかし、外観は賛否が分かれて販売は低迷してしまい、有名なフレーズで「クラウン史上最大の失敗」とまでいわれましたが、実際にライバルの日産「セドリック/グロリア」の販売台数を下まわったほどです。
発売からわずか3年後の1974年に、直線基調で重厚感のあるデザインに一新された5代目にモデルチェンジして、販売台数は回復しました。
後に4代目のデザインは再評価されてファンも多く、現在も旧車イベントなどでは良好な状態の4代目クラウンを見ることができます。
※ ※ ※
近年、かつてのような極端に販売が低迷するモデルが少なくなったようです。
とくに日本車はグローバルで販売する必要があり、さまざまな土地で受け入れられるように開発されているため、失敗は許されません。
メーカーにとっては良いことなのですが、個性という点では面白いクルマがあまり見られないのは、寂しさも感じます。
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