自動車メディアは新型車の登場をいち早くお伝えするのが使命でもあるが、実車の登場前でもついつい「ターボ+FR+MT」なんて方程式が出てくると嬉しくなってしまうもの。
そんな嬉しさのあまりクルマに試乗する前に「これは〇〇の再来だ!!」なんて言っちゃうクセがある(最近は減りましたが)。まさに自動車メディアの悲しい性。
これが世界最高峰スポーツセダン BMW新型3シリーズ登場と歴代日本の好敵手たち
そんなメディアやファンや消費者からの前評判が高すぎるがゆえに、クルマの完成度は決して低くなかったのに「ガッカリされた」クルマを5つ選びました。
文:渡辺陽一郎/写真:ベストカー編集部
■アルテッツァに「AE86の再来だ!!」はちょいと言い過ぎた!?
1989年に消費税が導入され、自動車税制が改訂されると、3ナンバー車の税金が大幅に下がった。その結果、日本のメーカーは、海外仕様の3ナンバー車を日本へ流用するようになった。
開発が合理化され、ユーザーは大きくて豪華なクルマを喜ぶと考えたからだ。
ところが海外向けのクルマは大きくて運転しにくく、デザインや室内設計も日本ユーザーの好みとは違う。バブル経済の崩壊もあり、国内販売は1990年の778万台をピークに翌年から急落を開始した。
アコードセダンやシルビアは、一度3ナンバー車に拡大したボディを5ナンバー車に戻したが、遅きに失した印象があった。
この状況の中で1998年に発売されたのがトヨタアルテッツァだ。
「操り、走る心地好さを堪能できる新世代スポーツセダン」をテーマに開発された。3ナンバー車だが、全長は4400mm、全幅は1720mmに収まる。
エンジンは直列4気筒と直列6気筒の2Lを用意して、4気筒(3S-GE型)の6速MT仕様は最高出力が210馬力に達した。
駆動方式は後輪駆動だから、コンパクトなボディ、高性能なエンジンと相まって大いに期待を持たせた。
セダンとして悪いクルマではなかったが、当時の自動車雑誌を含めたクルマ好きの反応は好ましくなかった。
後輪駆動とするには、クラウンやプログレと基本部分を共通化する必要があり、車両重量が1360kg(RS200Zエディション)に達したからだ。
当時の同サイズのセダンを100kg上まわるほど重かった。そして1990年代の後半には、日本車も走行安定性の向上に本気で取り組み、スポーティモデルも良く曲がる以上に後輪の接地性を重視するようになっていた。
特にアルテッツァは、翌年からレクサスISとして海外でも売られたから、この傾向が強い。しかも前述のようにボディが重いのだ。
そのためにアルテッツァは、危険回避の操作を安心して行える半面、峠道では旋回軌跡を拡大させやすく、曲がりにくいという話が聞かれた。
旧来の価値観に基づくスポーツモデルとして、期待値が高すぎたこともあり、評判は良くなかった。
また価格は消費税抜きでRS200が240万円、RS200Zエデイションが250万円だから(両方ともに6速MT)、コンパクトなスポーツモデルとしては割高な印象もつきまとった。
報道試乗会では、当時のトヨタの広報部長がチーフエンジニアに「アルテッツァは、トヨタから若い人達へのプレゼントなんですよ! これではあまりにも高すぎるでしょう!」と猛烈に抗議していたのを思い出す。
広報部長が報道関係者の前で自社製品を批判するなど、今では考えられないが、当時は誰もが良いクルマを造るために仕事の垣根を超えて必死になっていた。
クルマ好きのユーザーや自動車雑誌も、走りへの思い入れが強く、いろいろな反応があった。
■「4WD+ターボ」で過度に期待された"重戦車"GTO
国内販売がピークに達した1990年頃は、クルマの性能の伸び方も最高潮に達した。1989年には4代目フェアレディZの最高出力が280馬力に至り、その後は「280馬力の自主規制」が2004年まで続いた。
同じ1989年にはR32型スカイラインにGT-Rが復活して、1990年にはNSX、ユーノスコスモ、GTOが各車とも最高出力280馬力の仕様をそろえて登場した。
この内でGTOは、4WDスポーツモデルとあって期待させたが、試乗するとがっかりさせられた。
プラットフォームはディアマンテと基本的に共通で、日本仕様は前輪駆動をベースにした4WDを搭載する。V型6気筒3Lのツインターボは、最高出力が280馬力に達した。
ただし車両重量が1700kgと重く、カーブを曲がる時には走行安定性が悪影響を受ける。直線の加速力は優れていたが、峠道は不得意だった。
ボディを重くしたのは4WDシステムと各種の可変機能だ。
後輪を操舵して走行安定性を高める4WS、ショックアブソーバーの減衰力を3段階に切り換えるアクティブECS、時速80kmでフロントスポイラーが前方に80mmせり出し、リヤ側は14度持ち上がるアクティブエアロシステム、3500回転以下の排気音をノーマルとサイレントモードに切り換えるアクティブエキゾーストシステムも採用した。
いろいろな装備を山盛りにしたが、実際に運転すると4WSも空しく、走行性能に不満が伴った。
そこで1994年には、4WS、アクティブECS、アクティブエアロシステム、アクティブエキゾーストシステムなどを省き、スポーツチューンドサスペンションを加えたツインターボMRを設定している。
この車両重量も1680kgと重かったが、走行安定性は向上した。こういった紆余曲折も、今の三菱車が装着するS-AWCの礎になっている。
■初代レジェンドは技術への期待値が大きすぎた!?
初代レジェンドは、ホンダでは最初のLサイズセダンで、ホンダ初のV型6気筒エンジンを搭載した。
ホイールベース(前輪と後輪の間隔)は2760mmだから当時のクラウンやセドリックよりも長く、Lサイズセダンと前輪駆動の組み合わせにも新鮮味がある。
外観に丸みを与え、装飾は控え目ながら、内装を含めて欧州車風に仕上げた。
ところが試乗すると印象は良くなかった。当時のボンネットを低く抑えたホンダ車に共通する特徴として、サスペンションのストローク(上下に動く範囲)を十分に取れていなかったからだ。
例えばマンホールの蓋を乗り越えた時などに「ポコン」と底突き感が伝わる。レジェンドと共同開発されたイギリスのローバー800は、内装が上質で開発者は「ホンダのレジェンドとはまったく違うクルマ」と見栄を張ったが、乗り心地は大同小異だった。
走行安定性にも不満があり、峠道で速度を少し高めると、早々に曲がりにくくなった。
1988年にはウイングターボを搭載した。タービンブレードの周囲に可変ウイングを設け、この角度を変化させて過給圧を無段階に制御した。
「低回転域から過給効果が得られ、常に高いトルクが得られる」と説明されたが、試乗すると低回転域の駆動力は不十分で、ほかのターボと大差はなかった。
■偉大な先代からの期待値に応えられなかったプリメーラ
1990年に発売された初代プリメーラは、全長が初代アルテッツァと同じ4400mmで、全幅は1695mmだから5ナンバーサイズに収まる。その上で走行性能の優れた前輪駆動セダンであった。
この時代から日本メーカーは海外進出を本格化させ、日産を含めて走行性能が急速な進化を開始した。走りが良くなる一方、国内市場もまだ大切だったから、ボディをむやみに肥大化させることはなかった。
日本と海外の販売比率も、1990年頃は50:50で推移して、バランスの良い時代であった。
これが1990年代中盤には海外比率が55%、2000年頃は65%と増え、2010年頃には大半の日本メーカーが80%に達した。
今の日産は世界で生産するクルマの約90%を海外で売り、国内比率は約10%だ。
このような事情から初代プリメーラは人気を得たが、2代目は初代と似通ったデザインでボディが拡大され、印象は薄かった。
注目されたのは2001年に発売された3代目だ。外観はボンネットが前方に大きく傾斜する形状で、前後のピラー(柱)を大きく寝かせた。
ボディを真横から見ると、ボンネットから天井、トランクフードに掛けるラインが円弧を描く。3ナンバーサイズに拡大されたものの、外観は新鮮だった。
ところが運転するとコスト低減が明確に感じられ、走行安定性と乗り心地も良くない。峠道では4輪の踏ん張り感が足りず、乗り心地は底が浅い。ボディを拡大した割に、後席の居住性も良くなかった。
カルロスゴーン元日産会長が、日産の最高経営責任者に就任したのが2001年だから、3代目プリメーラを開発した時代には業績が底を突いていた。
コスト低減を感じたのも当然だったろう。カルロスゴーン元日産会長は、この後、日本人にはできないリストラを断行して、日産を倒産の危機から救った。そして先般の逮捕に至っている。
■ミドシップで期待されすぎたホンダZ
1998年には軽自動車の規格が今と同様に刷新され、ほぼ一度に16車種の新型車が発売された。そのひとつがホンダ2代目Zだ(初代は1970~1974年)。初代とは大幅に異なるSUVであった。
2代目Zは前評判が良かった。外観はSUV風で存在感が強く、エンジンをリヤサスペンションの前側に搭載するミッドシップレイアウトになる。
前後輪の重量配分は50:50とされ、新開発のターボエンジンも選択できた。ところが運転するとがっかりだった。
全高は1675mmと高く、ミッドシップといっても、その上に後席が設置されるから高重心になる。駆動方式は全車が4WDとあって、車両重量は自然吸気エンジンが960kg、ターボは970kgと重い。
しかもエンジンがボディの中心にあって前後輪の重量配分も50:50だから、操舵に対する反応は妙に機敏だ。
不用意に操舵すると車両が素早く向きを変え、続いてボディがグラリと傾く。後輪の接地性も低かった。要は運転に気を使うクルマであった。
後年、ホンダの開発者に尋ねると「会社では日常的な連絡用のクルマとしてZも使っているが、いつでも空いている。疲れるので、乗る人がほとんどいないからだ」とのことだった。
ここで取り上げた「がっかりしたクルマ」の多くは、クルマ好きにとって期待はずれだった。
そこを煽ったのが自動車雑誌などのメディアであったが、ユーザーの間でも期待外れで、売れ行きを低迷させた車種も見られる。
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