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クラウン・セダンの復活は後退ではない!──新型に期待する理由

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クラウン・セダンの復活は後退ではない!──新型に期待する理由

まもなく新型が登場するトヨタ「クラウン・セダン」について今尾直樹が考えた。

クラウンはクラウンなのである

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昨年、外観だけ発表になった新しいクラウンの残りの3車型はどうする? どうなる? と、思っておられた方もいらっしゃるだろう。その一部がさる4月12日、トヨタのホームページ上で明らかにされた。本稿では第16代となる新型クラウン・セダンについて、僭越ながら筆者の若干の考察と期待を述べさせていただきます。

思いおこせば、昨年7月15日、新型クラウンのワールド・プレミアで、開発を担当した中嶋裕樹ミッドサイズ・ビークルカンパニープレジデント(当時)は次のようなことを語っている。

それは2年と数カ月前のことだったというから、2019年の終わりか2020年の初めだったろう。15代クラウンのマイナーチェンジの企画を豊田章男・当時社長/現会長に見せたとき、「本当にこれでクラウンが進化出来るのか? マイナーチェンジは飛ばしてもよいので、もっと本気で考えてみないか」と、いわれたという。以下、トヨタのHPからのコピペです。

「そこから考えを大きく変えました。固定観念にとらわれず、これからのお客様を笑顔にするクラウンを目指そう、と開発を始めたのが、このクロスオーバーです。

ある程度カタチになり、社長の豊田から「これで行こう」とゴーサインが出たと同時に、新しい宿題が出ました。

『セダンも考えてみないか?』

正直、耳を疑いました。一方で、私たちがあのマイナーチェンジの時から、発想を変え、『原点』に戻った今だからこそ、豊田は、セダンをやってみたらどうかと、問いかけているのだと受け止めました」

中嶋裕樹・現副社長のこの発言を念頭に、4月12日に発表された限定的情報、いわゆるティーザーの中身を確認してみよう。まず、新型クラウン・セダンのパワートレインはHEV(ハイブリッド車)とFCEV(燃料電池車)で、駆動方式はFRとある。ボディ・サイズは全長×全幅×全高=5030×1890×1470mm、ホイールベースは3000mに達している。

スポーツとエステートは、どちらの動力源もHEVとPHEVで、ホイールベースはスポーツが2770mm、エステートは2850mmである。ということは、スポーツとエステートは、クラウン・クロスオーバーとおなじエンジン横置きのプラットフォームを使っていることになる。クロスオーバーにPHEVの設定はないけれど、早晩追加されるにちがいない。スポーツのホイールベースが70mm短いのは、ホイールベースを縮めることで、その名称のごとく、スポーティなハンドリングを得ようとしているのだろう。

セダンにFCEVの設定があり、3mのホイールベースを持っている、ということはFCEV専用車の「MIRAI」の兄弟車であることを示唆している。MIRAIは先代クラウンのGA-Lというプラットフォームをベースにしているのだから、メカニズムの血筋からいえば、次期セダンこそ70年にわたるクラウンの正統的後継車、シン・クラウンである。

おなじクラウン・ブランドで、エンジン横置きと縦置きのプラットフォームが共存しているなんてヘンぢゃね? と、自動車好きなら思うところ、かもしれないけれど、トヨタ的にはまったくヘンではない。過去にも、FFとFRの「カローラ」が同時にあったし、「マークII」にはワゴンだけFFがあった。過去にあったことは未来にもある。トヨタにとって、駆動方式は関係ない。カローラはカローラ、クラウンはクラウンなのである。

よくぞ思いきった!さてそこで、シン・クラウンについて、ですけれど、筆者は2021年に発売されたFCEV専用車のMIRAIを高く評価するひとりである。先代クラウンのプラットフォームを用いた現行MIRAIは、電気モーターを用いることによって、先代クラウン以上に静かで、パワフルで、スポーティなセダンに仕立てられている。これぞ「電気クラウン」。それゆえ、新型クラウン・セダンがMIRAIの兄弟車となるのであれば、大歓迎。開発陣はよくぞ思いきった、と称賛したい。

公開されたサイド・プロフィールの画像を見ると、前後のデザインこそクラウン・クロスオーバーと共通するものの、現行MIRAIとそっくりで、ルーフやサイドのパネルは共有している可能性も感じさせる。ただし、3mのホイールベースはMIRAIより80mm長いから、さすがにまったくおなじ、というわけにはいかない。

ホイールベースを延ばしたのは、リアの居住空間を拡大するためだろう。おそらく永田町界隈でも積極的に乗ってもらえるように、MIRAIと較べるとサスペンションも若干ソフトにして、ショーファー寄りに仕立てているのではあるまいか。

FCEVの問題はもちろん、水素ステーションがまだまだ少ない、ということである。それゆえ、SDGsに熱心な官公庁や企業、あるいは個人向けの、限られたルートでの使用ということになり、販売台数はどうしたって多くは望めない。

そこで用意されているのがHEV、すなわちハイブリッドで、こちらはレクサス「IS300h」に搭載されている2.5リッター4気筒+電気モーターの組み合わせになる、と、考えるのが妥当だろう。それは第15代クラウンのパワートレインの復活、ということになり、クラウン・クロスオーバーではちょっと……という先代クラウン・オーナーたちの需要に応えることにもなる。「セダンも考えてみないか?」という豊田社長のことばは、もしかしてクロスオーバーだけだと心配になっちゃったから……ではあるまいか。

しかして、クラウン・セダンの復活は後退ではない。と、筆者は思う。クラウンFCEVの誕生は、FCEVの普及に向けてトヨタが一歩踏み出すことを意味するからだ。脱CO2。水素社会の実現、という大きな構想に向けての、モビリティカンパニーとしての大きな一歩である。

FCEV専用車のMIRAIは、ハイブリッド専用車のプリウスがそうであったように、やがて特別な存在ではなくなる。MIRAIはもはや未来にあらず。実際、ChatGPTとか、AI(人工知能)をはじめとするテクノロジーの進歩の速さときたら、“未来”と口にした直後に未来になっている、というような状況に、現代の私たちは生きている。すなわち、いまこそ未来なのだ。

というようなわけで、筆者はシン・クラウンに大いに期待している。伝統芸能である“いつかはクラウン”と、クラウンのプラットフォームを電動化した“電気クラウン”であるMIRAIの合体。あるいは、“電気クラウン”という表現、って私しか使っていませんけれど、それが本来、戻ってくるべきところに戻ってくる。シン・クラウンは電気ですかぁ。電気があれば、なんでもできる。1、2、3、ダーッ!

文・今尾直樹 編集・稲垣邦康(GQ)

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みんなのコメント

12件
  • 後退と言ってるに等しい
  • セダン発売楽しみです、210系マジェスタを乗っていますが、車幅が狭く、迫力不足を感じています、
    今回の新型のボディサイズのコメントで、 駐車場がー、取り回しがー とのコメントが散見されますが、
    そのような人にはオーナーになってほしくないので、いいサイズだと思います、
    価格も500万円スターといわず、700万円スタート希望です、
    エアサスや、4WSなど、4座ベンチレーション等、メルセデスに対抗してほしい、
    なんといってもクラウンですから!
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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