最近はSUVの人気が高い。こうしたSUV人気に乗じて、外観をSUV風にアレンジしたグレードも登場してきた。
サイズの少し大きなタイヤを装着したり、フェンダーのホイールアーチ(タイヤが収まる半円状の部分)の縁取りやボディの下まわりにブラックの樹脂パーツ、バンパー下のアンダーガードなどを装着すれば、何でもSUVになる。
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今こうしたSUV風のクロスオーバー車が大人気だ。その代表格が、フリードとフィットに設定されている、クロスターだ。
このクロスターはフリードが全体の約30%、フィットが全体の約15%を占めているという。
なぜ、クロスターが人気なのか? その理由をモータージャーナリストの渡辺陽一郎氏が迫ってみた。
文/渡辺陽一郎
写真/ベストカーWEB編集部
【画像ギャラリー】ホンダのクロスオーバーSUVグレード、クロスター詳細写真
2019年10月のマイナーチェンジでフリードにクロスター追加
2019年10月のマイナーチェンジ時に追加設定されたフリードクロスター。フロントグリルとバンパー、サイドシルガーニッシュ、リアロアスポイラー、ルーフレール、専用アルミなど標準モデルのフリードとは異なる専用エクステリアが与えられているが、車高は標準モデルと変わらない
こちらがノーマルのフリード
クロスオーバースタイルのSUVとして、真っ先に思い浮かぶのは、スバルインプレッサスポーツをベースに開発されたXV。
インプレッサスポーツの2019年における登録台数は、1ヵ月平均で1100台前後だが、XVは約2200台に達した。XVはインプレッサスポーツに外装パーツを装着して、最低地上高を200mmまで高めた派生車種なのに、ベースになったインプレッサスポーツの2倍も売れているのだ。
これをみれば、ノーマルのボディ形状からクロスオーバーSUVに変更したら、どれだけ売れるのか、クロスオーバーSUVの人気がどれほどのものか、わかるだろう。
ホンダでは、フリードを2019年10月にマイナーチェンジして、外観をSUV風に変更したクロスターを設定している。フィットも2020年2月14日にフルモデルチェンジを行い、同様のクロスターを用意した。
フリードはファミリー層を中心とするユーザーから、信頼を勝ち取っているものの、堅実すぎて遊び心が足りなかったのではないか、という開発陣の反省のもと開発されたのがフリードクロスターだ。
たしかにノーマルのフリードは優等生すぎるデザインで面白味に欠けていたかもしれない。そんなフリードのデザインに、遊び心というスパイスを加え、クロスオーバースタイルのデザインに仕上げた。
フロントに装着されたアンダーガードや大型化されたグリルをはじめ、サイドシルガーニッシュやルーフレール、リアアンダーガードなど、まさにミニバンとSUVを組みあわせたクロスオーバースタイルに仕立てられている。ただし、最低地高はFFが135mm、4WDは150mmとほかの車種と変わらない。
このクロスターは2列シート5人乗りのフリード+、3列シートのフリード6人乗り(キャプテンシート)のFF、4WDにラインアップされる(※7人乗りベンチシートにクロスターの設定はなし)。
クロスオーバーは変更箇所が少ないこともあり、価格は全般的に安い。例えばフリードのクロスターホンダセンシングは、標準ボディのGホンダセンシングに比べて22万円高いが、ナビ装着用スペシャルティパッケージ、LEDフォグランプ、上級シート表皮、専用デザインのアルミホイールなどを標準装着する。
これらの価格換算額が約18万円だから、ドレスアップは約4万円になり、いわゆるエアロ仕様よりも少し安い。
ただし、フリードクロスターには、SUVの定番装備ともいえるフェンダーのホイールアーチを縁取る樹脂パーツが装着されない。
これを付けると全幅が増して3ナンバー車になり、ボディに沿って開閉するスライドドアの設計変更も必要になるからだ。
開発段階では、ホイールアーチに樹脂風のステッカーを貼ることも検討したが、生産しにくく断念した。最低地上高なども同じだからSUVらしさは希薄だが、外観が好みに合えば前述のように買い得だ。
クロスオーバーSUVの特徴でもある、樹脂製のホイールアーチがないのが特徴。アンダーガードが目立つクロスターのリアスタイル。リアのガーニッシュとドアミラーがボディ同色ではなく、シルバーとなるのが標準モデルと違う部分だ
販売は両車ともに好調だ。フリードではクロスターの販売比率がフリード全体の約30%を占めて、フィットでも受注台数の約15%がクロスターになる。
ホンダカーズ(ホンダの販売店)では、フリードクロスターについて、以下のように述べている。
「フリードは2019年10月にマイナーチェンジを行って、標準ボディはフロントマスクを変更し、SUV風のクロスターを追加しました。
クロスターは人気が高く、フリードを購入するお客様の30%を占めています。これは想定以上でしたね。フリードクロスターの納期は3ヵ月から3ヵ月半と長くなっています。NAエンジン、ハイブリッドともに納期は同程度です。
一方、標準ボディの納期はクロスターよりも短く、NAエンジンなら約1ヵ月、ハイブリッドでも1ヵ月半から2ヵ月で納車できます。つまりクロスターの納期は、標準ボディの約2倍長くなります」とコメント。
ちなみにフリードが2019年10月18日にマイナーチェンジを実施した後の登録台数は、11月が6444台で対前年比98.0%、12月が6520台で対前年比110.9%、2020年1月が6759台で対前年比100.9%。
対前年比が大幅に増えたわけではないが、フリードは発売から3年以上を経過する。クロスターの設定などマイナーチェンジの効果で、売れ行きの落ち込みを抑えた。
クロスターはフィット初の3ナンバー!
クロスター専用のブラックアウトされたSUVテイスト溢れるエクステリア(ブラックのフロントグリル、フロントバンパー、ホイールアーチプロテクター、サイドシルガーニッシュ、ドアロアーガーニッシュ、リアバンパー)、専用の16インチアルミホイールが特徴。ルーフレールはメーカーオプション。グリルレスの他グレードと違って力強く豪華に見える
フィットのグレードは5種類あるが、写真はフィット販売全体の46%を占めるフィットホーム
●新型フィット各グレードの販売割合
■BASIC(ベーシック):20%
■HOME(ホーム):46%
■NESS(ネス):6%
■CROSSTAR(クロスター):14%
■LUXE(リュクス):15%
※新型フィットの受注台数の内訳(ホンダ調べ)
新型フィットの価格
●e:HEVの価格比較
■BASIC(ベーシック):199万7600円
■HOME(ホーム):206万8000円
■NESS(ネス):222万7500円
■CROSSTAR(クロスター):228万8000円
■LUXE(リュクス):232万7600円
※すべてFF。クロスターはベーシックから29万400円高、最量販車種のHOMEから22万円高
同様に2020年2月14日に発売されたフィットについても、ホンダカーズに売れ行きを聞いてみた。
「新型フィットには、ベーシック、主力のホーム、ネス、リュクス、SUVのクロスターなど5種類のグレードがあります。
想定される販売台数はホームとベーシックが多いが、実際はクロスターの受注も活発です。
そのためクロスターの納期も伸びています。ホームやベーシックであれば1ヵ月から2ヵ月で納車できますが、クロスターは3ヵ月です。
クロスターも1.3Lガソリンエンジン車と1.5Lハイブリッド車をラインナップしていますが、エンジンによる納期の差はほとんどないですね」とコメント。
新型フィットは、メーカーオプションを減らしてグレードを豊富に用意した。価格の安いベーシック、機能と質感を高めたホーム、SUV風のクロスター、アクティブなネス、内外装が上質なリュクスだ。
生産はベーシックとホームが中心で、ほかの3グレードは少ないから、クロスターが増えると納期も伸びる。いずれにしろフリードとフィットのクロスターは、堅調に売れる注目のグレードとなった。
現時点では初期受注で代替えユーザーが多いため、数カ月もすると、クロスターの割合は増えていくだろう。
クロスターといっても、フリードクロスターとは違う部分がある。まず、フィットクロスターはフリードクロスターと違って、ノーマルグレードから最低地上高を25mmアップし、160mm(FF)としている点。
さらにボディサイズもフィット初の3ナンバーとしている。フィットのベーシックは全長3995×全幅1695×全高1515mmだが、フィットクロスターは全長4090×全幅1725×全高1545mmmと、SUVテイストにすることによってボディサイズが拡大しているのだ。
単にSUV風にアレンジすれば必ず売れるとは限らない
Xアーバンが売れず、アクアクロスオーバーを投入するもヒットには結びつかず。最低地上高はノーマルのアクアが140mm、アクアクロスオーバーは170mm。ボディサイズは全長4060×全幅1715×全高1500mmと、ノーマルのアクアに比べ全長が10mm長く、全幅が20mmワイド、全高が5mm高い
ただし、外観をSUV風にアレンジすれば、必ず好調に売れるとは限らない。アクアは2014年にSUV風のXアーバンを追加したが、売れ行きは伸びなかった。
フェンダーにホイールアーチを縁取る樹脂パーツが備わらず、いまひとつSUVらしく見えなかったからだ。
この樹脂パーツはフェンダーアーチモールとしてディーラーオプションで用意されたが、車両カタログやウェブサイトには非装着車が掲載され、ユーザーに伝わりにくい。
標準装着しなかった理由を開発者に尋ねると「3ナンバー車になるから」という返答だった。
結局、アクアXアーバンは売れず、2017年にはアクアクロスオーバーに変更している。これはフェンダーアーチモールを標準装着して、全幅を1715mmに広げた3ナンバー車であった。しかしこれもパッとしない。
先代フィットも、2017年のマイナーチェンジで、ディーラーオプションのクロススタイルを用意した。
先代フィットに用意されていたクロススタイルは純正アクセサリー。クロススタイルのパッケージ価格は13万8240円だった
ブラックのホイールアーチモールを装着して外観をSUV風に仕上げたが、ディーラーオプションでは分かりにくい。
せっかく用意したのに装着車は少なかった。購入後に装着し登録すると3ナンバーになるという点も、クロススタイルの販売を妨げていた。
ノートのシーギアもいまひとつ売れていない。アンダーガードが装着されているものの、全体的にクロスオーバー風スタイルが中途半端な印象だ。
ノートシーギアはノートのガソリンモデルとe-POWERにもクロスオーバースタイルの特別仕様車がラインアップされている。都会とアウトドアの両方のテイストを取り入れた都会派クロスオーバースタイルのシーギア。ダークメタリック色のスタイリングガードやホイールアーチガーニッシュを装着し、専用アルミホールや専用シートクロスなどを装備することで、アウトドアシーンにも似合う仕様となっている。最低地上高はe-POWERシーギアが130mm、Xシーギアが150mmと標準車と変わらない。4WDシステムもない
本格的なSUV性能を求めていない
新型フィットクロスターのみ用意される撥水加工されたシート。もちろんフリードクロスターにも撥水加工されたシートを採用している
以上のようにSUV風の派生車種を好調に売るには、デザインのカッコよさ、カタログやウェブサイトでの効果的なアピール、購入のしやすさ、価格の割安感などが求められる。
特にマイナーチェンジで追加する時は、車種に対する注目度もさほど高まらず、目立ちにくい。フリードのように、バリエーションの約半分をクロスターにするといった積極的な展開が必要だ。
SUVは、今では趣味性と付加価値が伴う最後の注目カテゴリーになった。上級セダンの人気は世界的に色褪せ、クーペも若年層は購入していない。
ワゴンは日本と北米で廃れて車種も減った。ピックアップトラックは販売できる地域が限られる。実用的なハッチバックを除くと、クルマ好きのユーザーが高いお金を払うカテゴリーがSUVに絞られてきた。
そしてSUVの商品開発には多様性がある。フィットやフリードのようにグレードのひとつに位置づけたり、スポーティな5ドアクーペのようなSUVも開発できる。
今では、SUVが最も似合わないロールスロイスまでカナリンを用意した。世界中のメーカーやブランドが、最後の甘い汁を吸おうと、SUVに群がっている。
そうしたSUVカテゴリーのなかで、今日本でウケるのは都会派クロスオーバー風SUVというのがポイントになっている。
見た目は、樹脂バンパーやホイールアーチ、アンダーガードが装着されていてクロスオーバーSUV風のスタイルだけど、本格的なオフ性能までは求めていないのだ。
ただし、撥水加工をしたシートや内装を装着するなど、インテリアも他グレードとしっかり差別化しないと売れない。
普段は通勤や買い物に使って、たまの週末休みには1泊や1DAYキャンプに家族で出かける。そんなライフスタイルには、いわゆるカッコだけの「なんちゃってクロスオーバー」がピッタリなのだ。
こうしたニーズにピッタリと合うようにホンダが戦略的に作った解答が、クロスオーバーSUVグレードである、クロスターというわけだ。
【画像ギャラリー】ホンダのクロスオーバーSUVグレード、クロスター詳細写真
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