■コクピットに乗り込むまでがひとつの儀式
イタリアのコンストラクター、ジャンパオロ・ダラーラが手掛けたレーシングマシンをそのまま市販車にしたようなダラーラ「ストラダーレ」が、日本のオーナーへとデリバリーをスタートしました。そこで、ダラーラ・ストラダーレが公道で本当に快適に走ることができるのか、確かめてきました。
【画像】全部見せます! ダラーラ・ストラダーレ完全マスター写真集(56枚)
ダラーラ・ストラダーレの公道試乗がおこなわれたのは、正規輸入元・販売元である株式会社アトランティックカーズのサービスセンターでした。ワインディングロードやサーキットでこそ真価が発揮されるダラーラ・ストラダーレですが、購入を考慮している人にとっては、自宅ガレージ近辺の一般道でも普通に走行できるのかが気になるところでしょう。
ダラーラ・ストラダーレは、ベースはバルケッタスタイルで6速マニュアルトランスミッションとなります。車両価格は2256万5000円(消費税別以下同様)です。
サービスセンターには、これからデリバリーされるダラーラ・ストラダーレが5台揃っていましたが、そのすべてがフルオプションを装備したクーペスタイルでした。
クーペスタイルにするには、まず「ウインドシールドフレーム&HVAC(221万9000円)」を装着して、スパイダー仕様にする必要があります。
次に「T-フレーム(109万6000円)」を装着して、タルガ仕様となります。そして最後に「ガルウイングドア(104万3000円)」をプラスして、クーペスタイルの完成です。ちなみに「リアウイング」は127万円です。
試乗車は6速マニュアルトランスミッションではなく、オプションの「パドルシフトギアボックス(172万5000円)」です。これだけで試乗車のオプションプライスは、735万3000円となります。
ダラーラ・ストラダーレには、普通のクルマにあるようなドアがありません。そのため乗り込むためにコツが必要となります。
まず、ボディサイドに軽く腰掛け、お尻を軸にして身体を90度回転させながら右足をコクピット内に入れます。右足はフルバケットシート座面中央にある「STEP HERE」と表示された場所に置きます。脚の長い人ならば、そのまま跨いで右足を所定の位置に置くとよいでしょう。
次に右足に重心を移して、左足を車内に収めます。この時に擦り傷がつかないように、ボディにシューズが触れないよう気をつけます。
シートに身体を収めたら、ガルウイングドアを閉じます。T-フレームの箇所にガルウイングドアを閉じるためのプレートバーがあるので、それを思い切り引いてドアを閉じます。
次にペダルの位置を調整します。普通のクルマはシートをスライドして調整しますが、ダラーラ・ストラダーレはペダルを前後することで位置調整をします。
ペダル調整のレバーは、普通のクルマのドアパネルにあたる部分にあり、このレバーを引いてペダルを任意の位置に合わせ、レバーを離します。なお、シートベルトは4点式です。
エンジン始動はセンターコンソールにある「START/STOP」ボタンを押しておこないます。
試乗車はパドルシフトギアボックスなので、右のパドルを引いて1速にギアを入れ、サイドブレーキをリリースして発進準備が完了です。
パドルシフトは、シフトアップが右、シフトダウンが左です。ニュートラルにする場合は、左右のパドルシフトを同時に引きます。リバースにギアを入れる際は、一度ニュートラルしてから、左のパドルを引きます。
ターンインジケーターは、ステアリングにあるスイッチで点灯させます。左右それぞれのスイッチを親指で押して、右と左のターンインジケーターを点灯させるのですが、ステアリングを切り戻してもターンインジケーターは点灯し続けるので注意が必要です。
右左折が完了したら、もう一度、同じスイッチを押すことでターンインジケータは消灯します。
以上でダラーラ・ストラダーレを公道で走らせるための予備知識は完了です。
■公道で感じた、ロータスとマクラーレンのいいとこ取りの乗り味
試乗したルートは、足立区の一般道、クルマの往来が激しい日中です。さっそく一般道の交通の流れでダラーラ・ストラダーレを走らせてみます。
停止状態から発進しただけで身体に伝わってくるのは、乾燥重量が855kgというダラーラ・ストラダーレの驚異的な軽さです。
ダラーラ・ストラダーレに搭載されるエンジンは、2.3リッターの直列4気筒エンジンで、フォード「フォーカスRS」に積まれているものと同じです。
最高出力は400馬力/6200rpmで、最大トルクは500Nm/3000-5000rpmです。4気筒エンジンということもあり、V型12気筒エンジンを搭載したスーパーカーと比べると物足りないパワーだと感じる人もいるかもしれませんが、まったくそんなことはありません。
ダラーラにゆかりのあるランボルギーニの最新モデルとパワーウェイトレシオを比べてみると、よくわかります。
「アヴェンタドールS」の2.13kg/馬力、「ウラカンEVO」の2.22kg/馬力と比べて、ダラーラ・ストラダーレは2.05kg/馬力なのです。
そして最初の交差点を低速で左折した時に、ボディの軽さが身にしみてわかりました。いくらパワーを上げたとしても、クルマそのものが持つ質量は変えられません。わずかなコーナーでもランボルギーニに比べて半分近い重量差をすぐに感じ取ることができます。
試乗した車両は、パドルシフトギアボックスですが、デュアルクラッチ(DCT)ではなく、シングルクラッチを採用しています。これはDCTが40kgから50kgの重量であるのに対し、シングルクラッチだと8kgの重量で済むからです。
ATモードもありますが、パドルシフトでシフト操作した方がイメージ通りのドライビングができるでしょう。シフトアップのタイミングは、メータパネル上部に設けられたインジケーターが知らせてくれます。
一般道ではインジケーターが赤点灯する前にシフトアップすると、周囲のクルマのペースに合わせて楽にドライブすることができます。
軽量化のために遮音材などは使われていません。そのためホイールハウス内にタイヤが小石などを巻き上げる音がダイレクトに伝わってきます。アトランティックカーズの担当者によると、それでもボディには目立つ傷はつかないとのことでした。
ブレーキペダルは、ローターとパッドが十分に熱が加えられていなかったせいもあり、踏み始めはあまり効きがよくないのですが、じわりとペダルを踏み込んでいくとあるポイントから急激に制動力を発揮するので注意が必要です。
あくまでも、法定速度50km/h以下での話ですが、車重が軽いということと、ブレーキの性能がよいことが相まって、ブレーキペダルを強く踏み込むと4点式シートベルトが身体に食い込むほどの制動力が加わります。
シートは固定されたバケットシートなので、ダラーラ・ストラダーレのハードコアな見た目からして、サスペンションの突き上げも予想していましたが、道路の段差やマンホールなど、適度にいなしてくれます。むしろしっとりとした感触です。
試乗車はオプションの車高調整機能付きの「アジャスタブルサスペンション/ダンパー(50万8000円)」を装着しており、スポーツモードに設定していました。
一般道ではシフトチェンジが忙(せわ)しないと思っていましたが、3速ホールドのままでも十分です。信号で停止した際は、自動的にシフトダウンして1速になっているので、シフトチェンジしながら減速する必要もありません。
高速道路を走ることができない代わりに、狭い路地を試乗してみました。想像していたよりも取り回しも楽です。これならば、たいていのガレージにアプローチすることができそうです。
※ ※ ※
一般道を試乗しての印象は、ロータス「エキシージ」をさらに洗練させ、マクラーレン「570S」をもっとプリミティブにした感じです。
エキシージと570Sのいいところをミックスしたというか、その中間というべきか。ただし、これもサーキットを試乗したらガラリと印象が変わるかもしれません。
イタリアのサーキットで実際にダラーラ・ストラダーレのテスト車両に試乗してきたプロレーシングドライバーによると、「まるでフォーミュラカーみたいだ」とのことでした。
クローズドコースでの試乗が、これほどまでに楽しみな1台もないでしょう。
●ダラーラ・ストラダーレ
・車両価格(6MT・バルケッタ):2265万5000円(消費税別)
・全長:4185mm
・全幅:1875mm
・全高:1041mm
・ホイールベース:2475mm
・車両重量:855kg
・エンジン形式:直列4気筒DOHCターボチャージャー
・排気量:2300cc
・エンジン配置:リアミッド横置き
・駆動方式:後輪駆動
・変速機:6MT/6AT
・最高出力:400馬力/6200rpm
・最大トルク:500Nm/3000-5000rpm
・0-100km/h:3.25秒
・最高速度:280km/h
・サスペンション:(前)ダブルウィッシュボーン式、(後)ダブルウィッシュボーン式
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