イマドキ珍しい大排気量5Lのマルチシリンダー8気筒NAエンジンを搭載したレクサスIS500 F SPORT Performance。試乗してその虜になってしまった清水草一氏がIS500を手に入れるべき理由を力説する!
文/清水草一、写真/ベストカー編集部、清水草一
大排気量こそ美学!! 国産最後の恐竜か……「レクサスIS500」は安いのか高いのか?
■実際に試乗し、抽選販売に申し込んでしまった!
2022年暮れにレクサスIS500 F SPORT Performanceの広報車に試乗し、すっかり惚れ込んでしまったという清水氏
2022年8月、V8の5Lエンジンを搭載したレクサスIS500 F SPORT Performanceが発売になり、クルマ好きのおっさんたちの注目を集めた。まず「ファーストエディション」が500台限定で販売され、6000件以上の応募が殺到。競争率12倍の抽選販売となった。
言うまでもないことだが、10倍以上の抽選なんて、当たる確率は低い。そんなクルマに興味を持ってもムダ。そう考えていたが、2022年暮れに実際に試乗して雷に打たれ、スタンダードモデルの抽選に参加することを決意した。
ちなみに、IS500の販売だが、ファーストエディション(900万円)はメーカーによる抽選だったが、それ以降のスタンダードモデル(850万円)は各ディーラーの方針に委ねられているようだ。私の最寄りのディーラーは、スタンダードモデルも順次(年ごと?)抽選にするとのことだった。
これまで私は、現実的に買えるクルマにしか興味を抱いたことはなかったが、いったいなぜIS500にかぎって、抽選販売に参加することにしたのか。理由は3つある。
■理由その1:自然吸気5LV8エンジンが、あまりにも気持ちイイ!
IS500の搭載する5LのV8DOHC「2UR-GSE」型エンジンは最高出力481ps、最大トルク535Nmを誇るが、ライバルモデルほどの出力ではない
IS500が搭載する「2UR-GSE」型エンジンは、最高出力481ps、最大トルク535Nm。充分すぎるほどパワフルだが、スペック的には、ライバルであるBMW M3の後塵を拝している。
しかし、ことフィーリングに関しては、自然吸気のIS500がブッチギリで勝っている。特に、スポーツ+モードで高回転までブチ回した時の甲高い快音は、自然吸気フェラーリをも髣髴とさせる。
個人的には、速すぎるクルマには食傷しており、スポーツカーは遅いくらいのほうがいいと考えている。IS500の加速は「遅い」とは到底言えないが、それでもM3のようなターボパワーに比べれば、回転の上昇速度は若干穏やかで、上り坂なら快感を味わう余裕がギリギリ残されている。
現在、自然吸気の大排気量V8エンジンは、世界的にほとんど絶滅しており、現在生産されているのはアメリカンV8とトヨタのV8だけ。私が愛するフェラーリもV8エンジンはターボ化され、296GTBに至ってはV6ターボのPHEVになっている。
ところが、IS500のエンジンはターボでもなく、もちろんハイブリッドでもない。時代の流れに取り残された生きる化石である。こんなエンジンを積んだクルマは今後はもう出てこない。新車でこれほど素晴らしい自然吸気大排気量V8エンジンが買えるのは、これがラストチャンスだ。そう思うと、抽選に参加しないテはない!
■理由その2:スポーツセダンとして、ルックスが猛烈にカッコいい!
ノーマルのISよりも無骨な迫力を醸し出しているIS500 F SPORT Performanceのエクステリア
自然吸気5LV8の「2UR-GSE」型エンジンは、IS500だけでなく、LC500とRC Fにも搭載されている。しかし個人的には、LC500やRC Fは、欲しいとまでは思わなった。
LCやRCはスポーツクーペ。いわゆるスポーツカーの部類に入る。どちらもエンジンの気持ちよさは、IS500同様最高レベルだが、いかんせん、デザイン的にあまりグッと来ない。
なにしろスポーツカーの分野にはカッコいい強敵が山ほどいる。いかにエンジンが気持ちよくても、LCやRCは私の心を震わせるまでは至らなかった。
しかし、IS500はスポーツセダンだ。スポーツカーとはデザインのスタンスがまったく異なる。スポーツカーは飛びぬけた美女でなくてはならないが、セダンは少しゴツいくらいのほうがカッコよく感じられたりする。
レクサスISはセダンとして「飛びぬけてカッコいい」とまでは言えないが、そのISをベースにボンネットフードを微妙にふくらませ、斜め4本出しのマフラーや小さなスポイラーでリアを武装したIS500は武骨なカッコよさに満ちている。
この分野のライバルは、BMW M3とアウディRS5スポーツバックくらい(AMGはすでに戦線離脱)。どちらも猛烈にカッコいいが、IS500も決して負けておらず、ルックスはほぼ互角だ(私見です)。
IS500(右)とBMW M3(左)。清水氏の私見では決してIS500のスタイリングはM3にも引けを取らないという
これほどカッコいいスポーツセダンに、絶滅危惧種の自然吸気5LV8エンジンが積まれ、しかも4WDではなくFRを守っているのだから、この勝負、レクサスIS500の圧勝。IS500こそが、世界一の古典的スポーツセダンだ!
■理由その3:IS500の価格は、猛烈に安い! 超買い得だ!
1351万円以上となるライバルモデルのBMW M3より500万円近く安いIS500のコストパフォーマンスの高さは驚異的だと清水氏は主張する!
これはもう、以下を見てのとおりである。
●レクサスIS500 F SPORT Performance 850万円
●BMW M3 1351万円~
●アウディRS5スポーツバック 1409万円
●アルファロメオ ジュリア クアドリフォリオ 1331万円
半額までは行かないが、IS500はライバルに比べて3割以上安い。世界一魅力的なスポーツセダンが断然お安いのだから、コストパフォーマンスの高さは問答無用。850万円というのは超バーゲンプライスだ。
その裏には、IS500が「F」ではなく「F SPORT Performance」だという事実がある。M3やRS5スポーツバックは、サーキットでの速さを追求している。先代の「IS F」もサーキット走行を前提にしていたが、現行IS500はそこまで突き詰めたクルマ作りはしていない。
しかし、実際にサーキットを走らないのであれば、そんな性能は必要ない。私は公道で気持ちよく走れればそれでいいので、IS500のお買い得価格は猛烈に魅力的だ。
公道を走るのに最適なサスセッティングが施されているというIS500 F SPORT Performance。清水氏も乗り心地のよさを絶賛!
公道を走るかぎり、IS500は超絶気持ちよくて速い。フロントに巨大なエンジンを積んでいるおかげで常に前輪に荷重がかかり、ハンドルを切るだけでバキーンと曲がる。サーキットで追い込めばアンダーが出て、トラクションも足りないかもしれないが、公道ではそこまでの性能はいらない。
乗り心地も素晴らしい。公道をエレガントに走るには最適なサスペンションセッティングだ。
しかも驚くべきことに、ゆっくり流せば燃費もいいのだ! WLTC燃費はリッター9.0kmとそれなりだが、私は空いた首都高でリッター14.5kmを叩き出した。ECOモードで、エンジン回転は1300から1500rpmあたりをキープしての数字だが、その領域でも自然吸気5LV8は、ほのかに心地よい吸気音を奏でてくれた。トヨタの内燃エンジン技術恐るべし。IS500は充分エコでもある。最高だぜIS500!
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いつまで乗れるかわからないけど。