2010年春、究極のベントレー、コンチネンタル スーパースポーツが日本に上陸した。2009年3月にワールドプレミアされ、9月に日本発表された後、2010年4月にようやく試乗が実現している。ここでは袖ヶ浦フォレストレースウェイで行われたサーキット試乗の模様を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2010年6月号より)
GTスピードより20psパワーアップした上に110kg軽量化
2002年秋、6L W12ツインターボ560psエンジンを搭載したコンチネンタルGTは、4WDハイパフォーマンススポーツクーペとして衝撃的なデビューを飾っている。その後、そのパワーを610psまで向上させた「GTスピード」を発表して再び世界を驚かせたが、そのコンチネンタルシリーズの究極のモデルとなるのが、ここで紹介する「スーパースポーツ」ということになる。
●【くるま問答】ガソリンの給油口は、なぜクルマによって右だったり左だったりするのか
W12ツインターボは630psまでパワーアップ、しかもGTスピードより110kgも軽量化されているというから凄い。トランスミッションは従来よりも素早いギアチェンジを可能とするZF製6速ATクイックシフトを採用し、4WDシステムがイニシャル前後トルク配分を40:60とした新世代のものに変更されているのも特徴だ。
今回の試乗は630psというパワーを思う存分楽しむべくクローズドコースで行われたが、スーパースポーツに試乗する前にまず、610ps仕様のコンチネンタルGTCスピードに乗ってみた。Cはコンバーチブルモデルの意味で、クーペと比べてボディが重くなっているはずだが、それでもエンジンパワーにものを言わせてアクセルペダルを踏み込むぶんだけ加速していく。その重厚で凄みを感じさせる走りは、さすがに超高級車でありながらスポーツカーブランドでもあるベントレーらしいところだ。
次に4ドアのベントレー、コンチネンタルフライングスパースピードに乗った。堂々とした風格を持つ4ドアセダンだが、クローズドコースで意外と思えるほどの軽快な走りを見せた。こちらもパワーは610psとなるが、コンバーチブルより軽いことも効いているのだろう。タイヤのグリップもしっかりしていて、なかなか滑り出そうとしない。
スーパースポーツの名に恥じぬ世界トップレベルの動力性能
こうしていよいよコンチネンタルスーパースポーツクーペに乗り込む。これまでの2台とはガラッと変わって、エクステリアもインテリアもスポーティというよりアグレッシブそのものだ。
リアシートを取り除いた特別な2シーターとしていることもあるのか、ベントレーが誇る洗練された内装、比類なきクラフトマンシップと厳選された素材も、さらにグレードアップされたかのようだ。スモークスチール仕上げのグリルやツインボンネットベント、リアリップスポイラーも目を惹く。
ピットから本コースへとアクセルペダルを踏み始めてみると、かつてない迫力がすぐに感じられた。スーパースポーツはコンチネンタルGT、GTスピードの延長線上にあるはずだが、その性格はまるで異なるように感じる。エンジンパワーが増したことに加え、クルマが軽くなったことによる相乗効果が発揮されているようだ。
アクセルペダルを踏んでいったときの加速力は強烈そのもの。そのパワーは630ps/800Nmだから当然といえば当然であるが、グーッと硬めのシートに押さえつけられて加速する感触はやみつきになってしまいそうだ。
しかもそれだけのパワーでもホイールスピンをすることもない。これは優れた4WDシステムを持っているからだ。40:60というトルク配分は絶妙で、ハンドルを切り込みながらアクセルペダルを踏み込んでもアンダーステアを感じさせず、しかもタイヤのグリップ限界も高い。
ESPのセッティングも独自のチューニングとしていて、ドライバーに任せる範囲を広くとりながら、それでいて滑り出す気配はまるでない。タイヤは275/35ZR20のピレリPゼロを装着していたが、そのパフォーマンスとよく合っている。
E85バイオ燃料にも対応。ベントレーの本気を実感する
アクセル全開で加速していくと、ギアチェンジのたびに「バフッ」というエキゾーストノートが聞こえる。まるでパワーをアピールしているかのようだ。2速から3速へは90km/h、4速へは120km/h、5速へは150km/hでシフトアップしていく。
110kgにおよぶ軽量化の内訳は、フロントシートで45kg、2シーターとしたことで26kg、カーボンセラミックブレーキで20kg、鍛造ホイールで10kg、シャシで9kgとなる。カーボンファイバーのクラムシェル型リアパネルを持つフロントシートは、しっかり感もあるしカーブでもしっかりと身体を支えてくれる。
少し気になったのは、レーンチェンジをしたりコーナーに向かってターンインする時、あるいはS字で切り返す時に、ハンドルの応答遅れ気味の動きをすることがあったこと。少し後から入り込んでくるような感じだが、それ以上姿勢が悪くなることはないので問題はない。
エンジン内部の腐食を抑えることで、E85バイオ燃料も使えるエンジンになっているところも凄い。しかもタンク内の燃料の混合比を検知し、出力とトルクを確保するシステムも採用している。パフォーマンスに妥協することなく、環境性能を両立させているというわけだ。ベントレーではこれについて「バイオ燃料対応車の保有台数を今から増やしていくことで、将来E85が世界的に広まった際に劇的にCO2排出量を削減できる」としている。
将来を見据えながら、世界トップレベルの性能を発揮するスポーツモデル、0→100km/hを3.9秒で走り抜けるスーパースポーツの実力を試すには、やはりクローズドコースが必要だったことを、試乗が終わって実感した。(文:こもだきよし)
ベントレー コンチネンタル スーパースポーツ 主要諸元
●全長×全幅×全高:4815×1945×1390mm
●ホイールベース:2745mm
●車両重量:2240kg
●エンジン:W12DOHCツインターボ
●排気量:5998cc
●最高出力:463kW(630ps)/6000rpm
●最大トルク:800Nm(81.6kgm)/1700-5600rpm
●トランスミッション:6速AT
●駆動方式:4WD
●最高速:329km/h
●0→100km/h加速:3.9秒
●車両価格:3150万円(2010年当時)
[ アルバム : ベントレー コンチネンタル スーパースポーツ はオリジナルサイトでご覧ください ]
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