2026年に導入される予定のF1テクニカルレギュレーションの概要が、カナダGPを前に発表された。これによれば、マシンは今よりも若干小さく軽くなり、前後ウイングが可動式となるなど、大きく変貌を遂げることになる。
このレギュレーション変更は、すでに発表されているパワーユニット(PU)の規格変更に伴って行なわれるもの。このPUの新しい規格には、様々な懸念点も示されていたが、FIAのシングルシーター担当ディレクターのニコラス・トンバジスは、すでに懸念点は解消できていると語った。
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話は1年前に遡る。2023年F1カナダGPの際に行なわれたチーム代表者による定例ミーティングで、2026年から導入されることが決まっている新しいPUレギュレーションの不安要素が議題に挙げられた。
この2026年からのPUは、基本的には現在のPUからMGU-H(熱エネルギー回生システム)を取り外したようなもの。ただ、エンジンで使う燃料の流量制限が引き下げられる一方、扱う電気エネルギーの量が大幅に増加し、エンジンと電気モーターの出力比が1:1という、現在とはまるで別物のPUへと生まれ変わることになっている。
この他、持続可能燃料の使用が義務づけられるなど、市販車に転用できる技術が数多く存在するため、自動車メーカーの興味を惹きつけることになった。結果、ホンダがF1への正式復帰を決め、アウディが初めてF1に参戦、フォードはレッドブルとタッグを組み、GM(ゼネラルモータース)も2028年からのF1参入を目指すことになった。
この2026年から、フォード協力の下自社のパワーユニット部門”レッドブル・パワートレインズ”で開発・製造されるPUを使う予定であるレッドブルのクリスチャン・ホーナー代表は、ストレートの途中で電気エネルギーを使い切ってしまうことになるため、不自然な減速やシフトダウンを強いられるのではないかと懸念を表明した。
「技術的なフランケンシュタインを作らないようにしなくてはいけない」
「ドライバーがバッテリー(の充電量)を回復させるためにストレートでシフトダウンするようなことがあってはならない」
「PUの特性上、内燃エンジンはバッテリーを充電するための発電機にはならないんだ」
しかしそれから1年。レギュレーションの内容が精査され、各メーカーの理解も進んだことで、ホーナー代表が抱いていたような懸念は、もはや存在しないとトンバジスは言う。
「エネルギーマネジメントについては、たくさんの作業を行なった。そういう懸念についての話は、かなり時期尚早だったんだ」
トンバジスはそう語った。
「PUメーカー、特に新規参入メーカーがPUの設計と開発を始められるように、2022年の8月に、PUのレギュレーションを最終決定した。当時、基本的なシミュレーションをいくつか実行し、主な問題と解決すべき課題を把握していたんだ。まだ全ての項目をチェックできたわけではないが、様々な問題に関する解決策があるのは分かっていた」
「活用できる複数のオプションの中から、どれを選択するかということについては、さらに作業をする必要があった。そのため、多くの人が、ストレート上でシフトダウンしたり、ストレートの真ん中で最高速度に達してから減速する必要があると考えてしまう、そんな時期が生まれた」
そう当時のことを説明するトンバジス。しかしその後チームの協力も得てシミュレーションを繰り返した結果、今では問題を解決できたと自信を見せる。
「全てのことを解決するために、自分たちだけでなくチームとも協力して、エネルギーマネジメントのシミュレーションと定義を行なうための適切な作業を行なえたと思う」
「そして今では、その懸念についてはもう大丈夫だと確信しているよ」
なおこれについては、ホンダPUを開発するHRC(ホンダ・レーシング)の角田哲史エグゼクティブエンジニアが22年夏の時点で、motorsport.com日本版の取材にこう答えていた。
「基本的には減速時のエネルギーで回生しますが、それだけでは足りません。そのため、フルブレーキング時以外はほぼ全開でエンジンを回し、MGU-Kで発電することでブレーキをかけ、トルクをコントロールすることになります」
また今年3月に話を聞いた際にも、当初からエンジンの使い方に関する考え方は変わっていないとしつつ、次のように語った。
「ストレートで上がった車速を利用するのはもちろんですが、それ以外にもどう発電してエネルギーマネジメントしていくかというところは、やはりICE(内燃エンジン)が主体になってきます。ですので、いかに長時間発電するチャンスを得るかということは変わらないと思います」
またメルセデスのトト・ウルフ代表は、ホーナー代表の”懸念”を表明する発言について「彼が恐れているのは、PUプログラムが上手くいっていないことだと思うよ」と一蹴した。
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