前評判の大きさに期待度が膨らんだけれど、いざ登場してみたら……。あらららら~! なーんか思っていたのと違っていた、なんてことがあったりする。まあ、期待が大きかっただけに落差が激しいってこともあるんだけど、期待外れに“ガッカリ~”と落胆したあの新技術、新装備の数々。R31スカイラインが登場した時の、直6DOHC24バルブターボに対する期待値とその後のガッカリ度のギャップの激しさといったら……。
もちろん、チャレンジなくして技術の進歩はないわけで、何ごとも最初の一歩を踏み出さなければ今のクルマにつながる技術的進化もなかったのだから、その意義はもちろん大きい。
定番色より人気!? マツダの赤、スイスポの黄…メインカラーの人気度
でも……。いやいや、ガッカリ技術、ガッカリ装備ってのは、無難なことをしていたのではないということの証なのだ! そんなチャレンジの証であるガッカリ新技術&新装備の歴史を見ていこう!
※本記事は2017年5月のものです。
文:ベストカー編集部
写真:shutterstock.com、ベストカー編集部
初出:ベストカー2017年5月26日号
シャシー&サスペンション技術編
ガッカリ新技術と言うと開発した人に申し訳ないのだが、それでも評価が芳しくなかったシャシー技術としてまず最初に思い浮かんだのが『ニシボリックサスペンション』。
これ、1990年に登場した3代目ジェミニ(FF化して2代目)のリアサスの構造につけられた名称。ラテラルリンク式リアサスにおいて、前後リンクのブッシュ弾性とリンク装着位置の工夫によりパッシブ4WS(四輪操舵)的な動きを実現したものなんだけど、具体的な動きをざっくり説明すると、コーナリング開始時車両のロールによって最初は逆位相に動いていた後輪が、ロール角が深くなると同位相に動いていく……というもの。理論の上ではターンインでスッと曲がり定常旋回ではスタビリティが高まるはずなのだが……、実際には定常旋回に入っても逆位相が継続する傾向が強く、運転感覚としてはオーバーステアが強く感じられるものだった。
この後輪ステアの考え方は日産のHICASやホンダの4WSなどと同じなのだが、ニシボリックサスは後輪ステアを電子制御やリンケージなどを使うことなくサスペンション自体の構造でパッシブに動かそうとしたところがポイント。それだけに動きの制御が難しく、理論上の動きをしてくれない場面が多く発生してしまったのだろう。狙いはよかったのだが煮詰めが甘かったため“ガッカリ”な結果となってしまった。
1980年代中盤~1990年代初頭にかけては4WS(四輪操舵)ブームが起こっていた。前述のニシボリックサスもその流れのなかで誕生したものだが、ホンダは1987年登場の3代目プレリュードで機械式4WSを、トヨタは1989年に登場したST180系セリカ/カリーナED/コロナEXiVなどにデュアルモード4WSを搭載。マツダも1987年に登場した5代目カペラ、1991年登場のセンティアなどに電制式4WSを採用するなど大流行したのだ。
しかし小回り性能を高める低速時の逆位相が通常の2WS車の動きになれたドライバーにとって違和感が大きかったことと、そもそも回転半径がそれほど大きくない乗用車ではあまりメリットがなかったことなどから1990年代後半にはサーッと潮が引くように消えていってしまった。
しかし電制技術が進化した現代では、後輪を緻密な制御により操舵することで高いハンドリング性能を作り上げているレクサスGSの『LDH』などに進化している。スカイラインやフーガのリアにもHICASの進化版が採用され、高い操安性の実現に寄与している。
3代目ジェミニの『ニシボリックサスペンション』…ガッカリ度 80点
1990年に登場した3代目ジェミニのリアサスが『ニシボリックサスペンション』。ラテラルロッドの前ブッシュを硬く、後ブッシュを柔らかくするとともに後リンクの車体取り付けを高くすることでロール初期に逆位相、ロール後に同位相に後輪がステアするようにした
セリカ、レビン/トレノの『スーパーストラットサス』…ガッカリ度 40点
1991年に登場したAE101型レビン/トレノ、翌1992年登場のカローラFX、1993年登場のST200系セリカ/カリーナED/コロナEXiVなどのフロントサスに採用。ストラットサスのデメリットである対地キャンバー変化を抑えるために2分割されたロアアームが特徴的。ロール時のキャンバー変化が抑えられたことで接地性が高まるメリットは大きかったが、サスストロークを大きくできないなどのデメリットもあり現在採用車なし
2代目プレリュード、センティアなどの『逆位相4WS』…ガッカリ度 60点
1980年代中盤~1990年代前半にかけて大流行した4WSだが、後輪が前輪と逆に切れる逆位相操舵は特に後退時の動きに慣れが必要ということもありいっきに採用車が減った。現在は操安性能のための電制後輪ステアがレクサスGSやスカイラインに採用される程度となった。面白い動きだったなぁ
エンジン&トランスミッション技術
あまりの期待値の大きさに膨らみすぎたガッカリ大賞!! として真っ先に思い出すのが1985年モデルチェンジで7代目となったスカイライン(R31型)の2L直6ターボだ。
なにしろ20年ぶりの新開発により刷新された直6エンジンで、各気筒4バルブのDOHCとくれば、それまでいまいちパッとしなかったL20エンジンに“もやもや”していたスカイラインファンの期待値は赤丸急上昇。あのGT-R用S20エンジンの再来とまで期待され、しかもこれがターボで武装されているというのだから期待するなというほうがムリというモノ。
が……。
期待に胸膨らませて試乗をすると……、走らない……ぜんぜんパワーを感じない………。正直、先代型RSターボの暴力的な動力性能のほうがダンゼン刺激的だった。
明らかに熟成不足。なぜなら、このRB20DET、翌年2ドアクーペの登場とともに大幅改良されていきなり気持ちのいいエンジンに進化していたし、さらに1989年のR32以降はすばらしいフィーリングのエンジンとして高く評価されている。GT-RのRB26DETTもこのエンジンがベースである。つまり素性は悪くなかったということ。
同じようなケースでは1998年に登場したアルテッツァの3S-GEが上げられる。可変バルタイ機構まで組み込んだハイチューンNAの2L直4で210ps。けっして悪くないのだが、ホンダのVTECシリーズのような胸のすくようなシャープなフィーリングではなく、ちょっとガサツな印象も相まって、期待値の高さとのギャップで“ガッカリ度”が大きかった。
トランスミッションではいすゞの『NAVi-5』を挙げたい。今では当たり前のようになっている2ペダルAMTの先駆者ともいえるメカで、5速MTのクラッチ断続とギアシフトをアクチュエーターにより動かす。とても先進的な考えのメカニズムだったのだが、いかんせん電制技術が未熟だった時代ゆえ、動作に違和感があり、だったら一般的なトルコンATでよくね!? なんなら3ペダルMTでもいいんだけど……という1984年当時の時代背景もあり1990年、FFジェミニのモデルチェンジとともに消滅。
と、こう説明するとガッカリ技術で終わってしまうのだが、いすゞはトラック用に開発を進め、NAVi-6、さらには大型トラック用12段変速『スムーサーE・F・G』へと進化しており、けっしてガッカリ新技術ではなかった。
R31スカイラインの『RB20DET』…ガッカリ度 100点
1965年以来のL20型に代わる日産期待の直6新エンジンとして登場したRBシリーズ。その頂点として鳴り物入りで1985年、R31スカイラインとともに登場した24バルブDOHCターボ仕様だが、煮詰め不足で……
いすゞの『NAVi-5』…ガッカリ度 20点
1984年に登場した初代アスカに搭載された『NAVi-5』。通常のマニュアル5速ミッションを電子制御されたアクチュエーターで自動操作するというメカ。シフトノブは5速MTっぽいHパターンだが、オートモードでは自動変速するほか、マニュアル的な操作も可能だった。2代目ジェミニにも搭載
BMW M3一番最初の『SMG』…ガッカリ度 95点
1997年に登場したE36型M3後期型にオプション設定された『SMG』はシングルクラッチ式で作動レスポンスはまだまだであった
アルテッツァの『3S-GE』210ps…ガッカリ度 75点
1998年に登場したアルテッツァのスポーティグレードRS200に搭載された2L、直4エンジンが3S-GE。可変バルタイを採用しNAで210psを発揮していた
ホンダ インスパイアの『気筒休止エンジン』…ガッカリ度 20点
多気筒エンジンの一部気筒においてバルブの動作を停止して空回りさせるのが気筒休止。低負荷運転時のポンピングロスを低減することで燃費を向上させるのが目的だが、大量EGRなどでポンピングロス低減を図れる技術が進化し、現在では採用例は少なくなった
マツダ ユーノス800の『ミラーサイクル』…ガッカリ度 15点
吸気バルブのタイミングを変化させることで膨張比に対し圧縮比を低くすることで高い熱効率を保ちながら安定した燃焼を実現するエンジンサイクル。1993年登場のユーノス800に搭載されて知られるようになったが、当時はいまいち効果がハッキリせずに「ガッカリ技術」的に扱われたが、プリウスのエンジンもミラーサイクルで、熱効率に優れたエンジンとして評価されている
日産の『エクストロイドCVT』…ガッカリ度 90点
特殊形状をしたローラディスク状のパーツの接触面を変化させることで無段階連続ギア比を実現したトランスミッション。1999年にY34型セド/グロ、2002年V35スカイライン350GT-8に搭載するも、その後の展開はなく消滅した
【番外コラム】今見れば“ムムム…!?”だけど当時は輝いていた昭和のカーオーディオ
今の時代、スマホを接続すればいつものお気に入りの音楽がクルマのなかでもどこでも聴けちゃうのでありがた味が減っちゃったけど、クルマと音楽ってのは切っても切れない縁深いものでした。ベストカー読者の50代以上の人だったら、若かりし頃、大量のカセットテープをクルマに積んで、高級カーコンポで音楽を楽しんだって人、多いはずですよね!?
とはいえカーステの歴史は古いようで新しく、クルマの中で好きな音楽を好きな時に本格的に聴けるようになったのは1967年フォードサンダーバードに8トラックデッキが搭載されて以降といっていいだろう。1960年代後半~1970年代中盤頃の日本車でカーオーディオ、カーステといえばこの『8トラ』だった。平べったく分厚い筐体にエンドレステープが組み込まれたカセットテープをガチャリとデッキに差し込んで音楽を再生するのだが、それまでAMラジオしかなかった車内で好みの音楽を聴けるというのは画期的なことだったのだ。ただ、この8トラカセットは早送りや巻き戻しができず、また、レコード盤を買うがごとく録音されたカセットを買わねばならなかった。
いわゆるカセットテープを再生可能なデッキがカーステ用に登場した1976年頃。今では『カロッツェリア』ブランドで知られるパイオニアが『ロンサム・カーボーイ』なる名称で本格的なカーコンポを発売した。この後1980年代はアルバイン、ケンウッドなどからも高級カーオーディオが相次いで登場し、まさに百花繚乱。ヘッドユニットをベースにアンプやスピーカーなどを好みに合わせて組み合わせる、まさに家庭用オーディオと同じ感覚。
1990年代に入るとカーナビが台頭し、2DINスペースはモニターに占領されカーコンポの様相は一変。カセットテープからCD、MD時代を経て現代へ。CD時代には10連装デッキなんてのもありましたな。
R31スカイラインのカセット5連装オートチェンジャー。1985年登場のR31型スカイラインに採用されたカセットテープ5連装自動チェンジャー。まさにカセットテープ全盛時代ならではの画期的かつチカラワザ的装備でありました
1980年代のカーコンポ全盛時代のカタログ写真。豪華なヘッドユニット、リアトレイに置く大型スピーカーが特徴だった
カロッツェリアブランドで知られるパイオニアが1976年に発売したロンサムカーボーイはカーコンポ時代のまさにパイオニア
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