■リアを「ごっそり」交換! アップグレードパッケージとは
レクサスのフラッグシップクーペ「LC」の走りを進化させる「Performance Upgrade Package(以下アップグレード)」が2023年12月に発売されます。
発売を前に体験試乗会が10月18日に富士スピードウェイ(静岡県小山町)で開催され、アップグレード施工前後のLCをくるまのニュース編集部のNが乗り比べてみました。
【画像】めちゃカッコイイ! レクサス最上級クーペ「LC」を画像で見る(45枚)
レクサスLCは2017年3月に登場したフラッグシップクーペです。独創的なデザインに加え、優れた走行性能をもち、レクサス全モデルの乗り味を方向づける役割を担っています。
2020年6月には電動格納式ソフトトップを備える2ドアオープンモデル「LC コンバーチブル」が追加され、ランナップがさらに拡大しました。
パワートレインは、5リッターV型8気筒自然吸気エンジンのガソリンモデル(LC500)と3.5リッターV型6気筒エンジン+モーターのハイブリッドモデル(LC500h)を設定。ともに駆動方式はFR(後輪駆動)です。
2023年6月には改良を実施するとともに、走行性能を高めた特別仕様車「EDGE(エッジ)」を発表しました。
このエッジには、一体成型のフロントバンパーカナードやCFRP素材の軽量なリアウイングの装備、手作業によるエンジン内部パーツのセッティングやディファレンシャルギアの調整などが施されています。
また、リアサスペンション取り付け部には、新開発のアルミ製中空サスペンションメンバー(以下アルミサスペンションメンバー)を採用し、従来のスチール製と比べ大幅に剛性が強化され、ハンドリング性能が高められたことも特徴です。
このうち、カナード付きバンパーやアルミサスペンションメンバーを、エッジ以外の標準モデル(すでに販売済みのクルマも含む)にも装着できるように、KINTO FACTORYからアップグレードが用意されることになりました。
試乗したのは富士スピードウェイ ショートコースで、本コースよりも短い全長で平均速度は下がりますが、各コーナーのR(半径)が小さく設計され、アップダウンもあることから、旋回性能を確かめることができます。
実際にLCに試乗してみます。今回は、アップグレード施工車両の後に未施工の車両を乗り比べてみました。
外観上での違いは、同時に施工されるフロントバンパーカナードの有無で判別するのみで、下回りを覗いてもアルミ素材(銀)とスチール素材(黒)の色違いが少し分かる程度です。
一方、控えめなエクステリアとは裏腹に、走りは大幅に変わっています。
ショートコースでは下りストレートを通過後、2連続で中速コーナーをクリアした後、勾配とともに低・中・高速コーナーと通り抜けて、最終コーナーへと入ります。
施工前のLCではコーナー進入時、フロントはスムーズに入っていくものの、路面に若干のうねりがあるポイントでは、リアの上下動とともに遠心力が働く際、大げさに表現すれば「グニャ」とワンテンポ遅れながら腰砕けになる感触があり、速度を上げて通過することにやや不安を覚えます。
一方で、アップグレード施工車では腰砕けの感覚はほぼなくなり、リアの動きが安定して追従してくることにより、進入速度を上げても安心してコーナーを抜けられると感じます。
また、全体的にフロントの動きと統一感が生まれ、さらにクイックでスポーティな味付けとなっている印象を受けます。
これは、メンバー自体の剛性や取り付け部の剛性が上がったという点もありますが、同時にボディとの締付部にゴム製の防振マウントを用いていたものを廃止し、直接ボディに取り付ける方法としており、柔らかいゴムを経由しなくなったことによる効果とみられます。
最終コーナーではRがキツく設計されており、強いブレーキングとともに左に旋回しますが、このときもリアが遅れるような動きも見せずリニアな反応です。
これについても、旋回時にキャンバー角(クルマを正面から見た際のタイヤの取り付け角度のうち傾き角)の変化を抑えるセッティングとなっていることも、こうした急なコーナーでの俊敏な味付けに一役買っていると考えられます。
■超スポーティに変身もデメリットもあり
アップグレードにより、クイックな挙動を実現しましたが、その一方で「ボディ直付け」にすることによるデメリットも感じ取れました。
ハンドリングのダイレクト感は大きく向上していますが、路面からの振動やサスペンションを伝わるロードノイズなどは明らかに増加しており、快適性能の低下が感じられます。
そのため、快適な乗り心地を重視するというオーナーによっては、アップグレードを施さない方がよいと捉える人もいるかもしれません。
一方で、LCの持つ高い静粛性・快適性などからその違いはわずかともいえ、施工前後の2台を乗り比べてみなければ気にならないレベルです。
また、アップグレードでは前後のサスペンション自体も最新のものへと換装されるメニューも取り入れられています(2023年5月以降生産車は除く)。
スプリングやスタビライザー、ショックアブソーバー自体の交換に加え、可変式ダンパー機能「AVS(Adaptive Variable Suspension system)」の制御ECUを変更。
すでにLCを購入し走行距離がかさんでいるユーザーであれば、足回りのリフレッシュも兼ねることができる点もメリットといえ、アップデートとともに新車に近い乗り心地をもたらします。
さらに、施工はトヨタの堤工場・元町工場(いずれも愛知県豊田市)が担当することで、新車を担当するトヨタの「匠」の手によって仕上げられるという安心感が得られることも特徴です。こうした取り組みは、トヨタおよびレクサスでは初めてだといいます。
なお、アップデートを施したLCには専用コーションプレートの取り付けや施工証明書が配布されます。
今回のアップグレードは、12月1日から30日まで予約を受け付ける予定で、2024年1月から順次施工を開始します。価格(消費税込)は200万円です。
LCで走りを楽しみたいと考えているならば、施工の効果を十分に感じられ、サーキットやワインディングではメリットを大幅に活かすことができるかもしれません。
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色んな意味で、しんどいやろな