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「ウルル」が夕日で赤く染まる景色を坂本龍一『ぼくはあと何回、満月を見るだろう』を読みながら待つ至福の時間…お約束でも絶対見る価値ありです【豪州釣りキャンの旅_16】

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「ウルル」が夕日で赤く染まる景色を坂本龍一『ぼくはあと何回、満月を見るだろう』を読みながら待つ至福の時間…お約束でも絶対見る価値ありです【豪州釣りキャンの旅_16】

旅の終盤は妻と一緒にウルルへ

オーストラリア・ノーザンテリトリー州でトヨタ「ハイラックス」ベースのキャンピングカー、アポロ「キャンパーバン」をレンタルして、釣り人としてバラマンディの大物を狙う23日間の旅をレポート。仲間とフィッシングを満喫した後は国立公園を一人旅。旅の終盤は、アリススプリングス空港で日本から来た妻と合流して、オーストラリア最大のランドマークであるウルル(旧称エアーズロックの現地名)を見に来ました。

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オーストラリアの旅人はロングドライブが当たり前!?

ウルル(旧称エアーズロック)に到着した夜、ユララ・リゾートにあるホテルのレストランに出かけた。「アウトバックBBQ」という名前で、豪快なオージービーフが食べられるという店だった。

行ってみると、肉は豪快で最高なのだが、用意してあるグリルを使って自分で焼くのだという。

「また、自分で焼くのか!」

できれば、誰かに焼いてほしかったが、これも宿命とあきらめて、ステーキとソーセージのBBQを調理した。そして、久しぶりにたっぷりとワインをいただいた。オージー・ワイン、おいしかったです!

翌朝、朝食の準備をしていると、隣のモーターホームの男性が声をかけてきた。キャンプ場に泊まっている日本人は珍しいのか、よく話しかけられる。

「おととい1000km走って、昨日は400kmですよ」と話すと、「オレはメルボルンから来たんだが、900、900、500だよ」と笑った。上には上がいるものだ。

ハイキングコースで見る近景にも別の迫力がある

ウルルは、大地にそびえる巨大な一枚岩だ。アボリジニーの聖地であり、かつてはイギリス人のオーストラリア植民地首相の名をとってエアーズロック(Ayers Rock)と呼ばれていた。しかし、今はネイティブに敬意を払う意味からウルルという呼び方が定着している。同様に、アラスカのマッキンリー山は当時の大統領の名をとって名づけられたが、今はデナリが正式名になっている。ウィリアム・マッキンリーは一度もアラスカに行ったことがなかったそうだ。

ウルルの存在感は圧倒的だ。荒野のなかに隆起した岩は神秘的で、「地球のヘソ(出ベソ?)」と呼ばれるのも納得だ。

ぼくたちは半日かけてハイキングコースを歩いた。遠景で見る姿と近景とはまったく別の迫力、魅力がある。いくつもの神聖なモニュメントを確認して、世界遺産を満喫した。

近くには、カタジュタというもうひとつの景勝地がある。ボコボコと大地に岩が連なる様子は、大自然のアートと呼ぶにふさわしい。

仕上げはウルルの夕景だ。鉄分を多く含む土壌は極めて赤い。その赤い岩が、夕日を浴びて真っ赤に燃え上がるのだ。有名すぎる景色だが、やはり見逃すわけにはいかない。一度、キャンプサイトに戻ってシャワーを浴びてから出かけることにした。

坂本龍一の本を読みながら夕景を待つ……

サンセットビュー・ポイントは駐車スペースが限られている。混雑が予想されるので、日没の1時間半前にいくと、さすがに早すぎるのか、駐車場は閑散としていた。一番よさそうな場所に「アポロ号」を停め、ゆっくりとサンセットを待つことにした。

ウルルを前に荒野を吹き抜ける風を受けていると、本を読みたくなった。見ると、キャンピングチェアを出して、読書をしているカップルがいた。荒野と風と読書。ここでは気持ちのいいバランスが成り立っている。

今回の旅のお供は、坂本龍一『ぼくはあと何回、満月を見るだろう』(新潮社/2023年)。がんに冒された坂本さんが、病と戦いながら晩年の仕事に取り組む記録だ。

じつは、若い頃のテクノポップのイメージが強く、ぼくは坂本龍一の音楽を避けてきた。ところが、『Ryuichi Sakamoto: CODA』(KADOKAWA/2017年)というドキュメンタリー映画を見て、衝撃を受けた。彼の音楽に流れる静謐さというか静けさに心を打たれたのだ。それから、晩年の音楽を聴きまくり、『音楽は自由にする』(新潮社/2009年)を読んで、すっかりファンになってしまったのだった。

旅も2週間を超え、本は最終章を残すだけだった。夕景が訪れるのを待ちながら、噛み締めるように本を読み終えた。

* * *

日没予定時刻の6時15分が近づき、駐車場はいっぱいになった。そこかしこでテーブルを出してミニパーティーを始めるグループもいる。写真を撮ってもらう、撮ってあげる、の交流も盛んだ。ウルルの日没はにぎやかな雰囲気でクライマックスを迎えようとしていた。

そして、ついにその時刻を迎えた。ぼくたちの目の前で、赤い巨岩は見事に発光した。色づいた空もウルルの光に染まったようだ。ここまで何千kmも走った。遠い道のりだったけど、来てよかった。胸に温かいものが流れた。

■「豪州釣りキャンの旅」連載記事一覧はこちら

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