ルノーのコンパクトハッチバック「ルーテシア」に追加された「E-TECH エンジニアード」に小川フミオが早速試乗した!
スポーティな内外装
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ハッチバックの魅力をあらためて教えてくれたのが、2023年6月29日に発売されたルノーのルーテシアE-TECH (イーテック)エンジニアードだ。
360度カメラやBoseサウンドシステム、しゃれた内外装をそなえていて、かつコンパクトなボディとスポーティなドライブフィールが、クルマ好きにアピールする内容である。
私は2020年の夏、日本に導入されたばかりのルーテシアE-TECH に乗ったとき、アクセルペダルの微妙な踏み込みに気持ちよく反応してくれる加速感と、素直な操縦感覚をすぐ好きになった。
今回新たに導入されたE-TECHエンジニアードに乗ってみて、そのとき「いいなぁ」と、思った印象はそのまま。やっぱり私は、このクルマ好きだなぁとあらためて思ったのだ。
どこがいいって、バランス感覚である。ちぐはぐさがないといえばいいのか、とにかく完成度が高い。
「ウォームチタニウム」と名付けられたくすんだゴールドと、ツヤのあるブラックの差し色をうまく使ったエクステリアのスポーティな印象は、手触りのいいフルバケットシートをそなえたインテリアとマッチングがとてもよい。
そして操縦感覚は、かつての印象どおり。走り出しから力強さを感じさせてくれるモーターを最大限活かしたフルハイブリッド・システムと、素直なハンドリングとで、運転の楽しさを味わわせてくれる。
実は、リッターあたり25.2kmという好燃費(ピュアEVを除く輸入車でナンバーワンだそう)がこのクルマのアピールポイントでもある。もちろん、それだけがこのクルマのよさではないのだ。
複雑なメカニズムを搭載ルノーのスポーツモデル「R.S.」のファンは、日本にも多いと思うけれど、あそこまで“カリカリ”の操縦性はない。でも、運転している自分とクルマとの一体感はしっかりあって、気持ちがよい。
試乗したモデルが装着していたコンチネンタルの「エコ・コンタクト6」という燃費重視のタイヤは、ちょっと“ポンポンッ”と、跳ねぎみで、しっとり感を損ねているきらいがあって惜しいけれど、それを別にすれば、クルマ好きの満足度は高そうだ。
搭載するルノーの「RENAULT E-TECH FULL HYBRID」システムは、独自開発されたもの。1.6リッターの自然吸気エンジンに、ふたつのモーターを組み合わせている。駆動用のメインモーターと、スタータージェネレーターとして働くもうひとつのモーターを使う。
組み合わされるトランスミッションは「電子制御ドッグクラッチ マルチモードAT」と呼ぶ独自のシステムだ。エンジン側に4速、モーター側に2速のギアを持ち、計12通りの組み合わせできめ細やかでシームレスな変速を可能とする。
オートマチック変速機だけれど、エネルギー損失を嫌って、ギヤとギヤをスムーズに噛み合わせるためのクラッチもシンクロメッシュも使わなかったのが、もうひとつのメカニズムの特徴だ。
昔のレースカーでは、エンジン回転を合わせ、ショック覚悟でギヤを“ポンッポンッ”と、いれるマニュアル変速機があったけれど、同様の機構を使っても、いまのルノー車はショック皆無。このあたりのメカニズムの凝り方は、ルノー自身がさかんに喧伝しているよう、F1をはじめモータースポーツ活動をずっと続けてきている研究開発の成果だろうか。
ルーテシアE-TECHエンジニアードは小さなハッチバックだけれど、実はけっこう複雑なメカニズムで走っていることを走行中に想像すると、なんだか嬉しくなる。自動車ファンの“くすぐり”をルノーは心得ているのだ。
好印象は変わらない輸入車市場も今はSUVばかりというなかにあって、ハッチバックのルーテシアは苦戦中かもしれない。
でも、全長4075mmと扱いやすいコンパクトなサイズと、それでいて2585mmと長めのホイールベースを活かして、後席にも175cmの人間がちゃんと座れるパッケージングなど、再注目する価値がしっかりあると私は思う。
最近、欧州のメーカーでは、コンパクトなボディサイズへの回帰志向があるのか。新車発表時に、狭い街路と渋滞の多い欧州の各都市での扱いやすさを喧伝することが多々ある。その評価軸は日本にもぴったりあてはまるだろう。
自分でも1980年代初頭に「5(サンクと日本では呼ばれた)」という全長3520mmしかないルノー車に乗っていた私は、以来ずっと、操縦性と快適性をともに満足させてくれるルノーの小型車のファンである。
なので、少し甘めの評価をしたとしても、今回の新型ルーテシアE-TECHエンジニアードは、好印象を与えてくれるモデルとして、クルマ好きに試乗してみることを勧めたい。
文・小川フミオ 写真・安井宏充(Weekend.) 編集・稲垣邦康(GQ)
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