運営元:外車王SOKEN
著者 :木谷 宗義
疲れ知らずの20代のうちに…。夜な夜な走るのが楽しいと思える時間はそう長くない
ジャガー「XJ」と聞いて、多くの欧州車好き、輸入車好きがイメージするのは、丸形ヘッドライトにクロームのパーツが多用されたエクステリアを持つ、クラシックなスタイルでしょう。でも、今回のテーマはXJとして(今のところ)最後のモデルとなったコードネーム「X351」です!
もちろん、中古車マニアーズとしては、ジャガーを創設したウィリアム・ライオンズの手による元祖XJ(1968年登場)から、そのスタイルを受け継いだX350(同2003年)に至るまで、歴代すべてのモデルが魅力的。ですが、あえて最終モデルとなるX351をここに取り上げます。
■先を行き過ぎたジャガー
ジャガーXJとして通算4代目となるX351は2009年に発表、2010年に日本上陸を果たしたモデルです。「もうそんなに経つの?」と感じる方も多いでしょう。それもそのはず、X351の最終モデル(V8ファイナルエディション)が発売となったのは、2019年10月のこと。数年前まで“現行型”だったクルマなのです。
メルセデス・ベンツ「Sクラス」などと比べて、街で見かける機会が少ないのも新鮮さを失っていない理由ですが(アウディA8とかも)、古さを感じさせないのはアストンマーチン「DB7」や「ヴァンキッシュ」「DB9」も手がけたスコットランド人デザイナー、イアン・カラムの手による斬新なスタイリングにあるでしょう(フォードRS200もカラム・デザイン!)。
デビュー当初こそ「ジャガーらしくない」という声も聞かれましたが、SUVの「Fペイス」やBEVの「Iペイス」を含め、現在のラインナップを見れば、その源流がこのX351にあることは明白。今になって思えば「ジャガーらしくない」ではなく、「ちょっと先を行き過ぎたジャガー」だったのでしょう。
ちなみに、スタイリングこそアヴァンギャルドでしたが、メカニズムは3代目XJとなる「X350」の正常進化。X350の時点で、接着剤とリベット止めで溶接を用いないアルミモノコックボディという先進的な構造を採用していたのでした(外観はクラシックで“ギャップ萌え”なクルマだった)。
■なぜ、今ジャガーXJ(X351)が「マニアーズ」なのか?
中古車マニアーズの大原則(今、作った)は、手軽に濃厚な味わいを楽しめること。具体的には、“100万円台でイケる”というところでしょう。その尺度で見ていくと、このX351・XJも視野に入ってくるのです。
もちろん、数年前まで現役のモデル。しかも、プレミアムブランドのフラッグシップですから高年式はまだまだ高値で、ファイナルモデルは1000万円を超えています(2023年1月時点)。でも、中古車情報サイトを“価格 安い順”でソートしてみましょう。最安値は150万円を下回っているではありませんか!
もちろん、最安車両は走行距離も多く、販売店も微妙だったりします。しかし、“よさそうな個体”を探しても、200万円で選べるのです(ちょっと超えることもあるけど)。
初期モデルは5.0リッターのV8なので、燃費や自動車税は少々お高くなるものの(2012年~は2.0リッターも登場!)、大排気量の自然吸気エンジンを味わえるのも今のうち。そう考えれば、納得もできるでしょう。
ちなみに、この5.0リッターV8エンジンにはスーパーチャージャーを追加した510psにまで出力を高めた仕様(その名もスーパースポーツ!)もありました。
なお、導入初期モデルの価格は「ラグジュアリー」の1000万円から、「ロングホイールベース スーパースポーツ」の1755万円まで。当時のメルセデス・ベンツ「S550ロング」が1400万円台だったといえば、どれほど高価なクルマだったかがわかります。
■XJというクルマを『感じる』という贅沢
少し古い輸入車、しかもフラッグシップモデルとなれば、気になるのは維持費でしょう。このX351・XJは、決して“維持費の安いクルマ”とは言いません。手頃な価格で乗れる高級とは、“そういうもの”です。
つい数年前まで現役だった世代のクルマですから、機械的な部分よりも、むしろ電気式シフターやフルデジタルメーターなどのデジタルデバイスの耐久性のほうが懸念かもしれません。ちょい古輸入車を楽しむ心構えとして、“ある程度の整備代”を見越しておくことも必要ですから、おおらかに構えておきたいところです(実際、あわてますが……)。
それよりも、限りなく最新のフラッグシップ・ジャガーを所有し、ブリティッシュ・スポーツサルーンの走りを味わえることの贅沢さを享受したいもの。XJというクルマを“感じる”贅沢は、中古車マニアーズ的「美食探訪ツアー」の中に組み込んでみてもいいのではないでしょうか?
[画像/JAGUAR LAND ROVER・ライター/木谷宗義]
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