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初めての愛車はトヨタのセダン
大学在学中の1年生から2年生になるタイミングで、紺野美沙子さんは教習所に通うようになった。
「当時は、免許を取得する費用が“年齢✕1万円”と言われていた時代で、20万円ぐらいを振り込んだような記憶があります。けれどもNHKの朝ドラ(NHK連続テレビ小説『虹を織る』)の仕事が決まって、通えなくなってしまったんですね。それがものすごくショックで、21歳ぐらいだったと思いますが、リベンジでもう一度通って、無事に免許を取ることができました」
晴れて運転免許を取得した紺野さんの初めての愛車は、トヨタの「カムリ」だった。
「1983年ぐらいだったと思いますが、両親がずっとトヨタのクルマに乗っていてディーラーに親しい方がいらしたので、その方からカムリを購入しました。紺野だから紺色にしたことを覚えています(笑)」
83年のトヨタ・カムリということは、82年にフルモデルチェンジを受けて登場した2代目だろう。初代モデルはセリカ・カムリという名称だったけれど2代目はセリカの名が外れ、同時に駆動方式もFR(後輪駆動)からFF(前輪駆動)にあらためられている。
トヨタは、カムリと兄弟車の「ビスタ」を“小型高級FFセダン”として売り出した。バブル前夜の日本が少し浮かれはじめたこの時代に、紺色の実直なスタイリングの国産セダンに乗るあたり、紺野さんの理知的な人柄があらわれているように感じる。
「運動神経があまり良くなくて、運転にあまり向いていないタイプだったと思います。最初の頃は路肩に乗り上げたり、世田谷の一方通行の狭い道に入り込んでしまったり……地元の方に『はい、真っ直ぐ下がって!』と、誘導していただくなど、汗をいっぱいかきました。 今、お話していたら、なんだか記憶が蘇って来ました……。いつまで経っても進まないと思ったら駐車場に並んでいる列だったり、やたらとパッシングをされると思ったらヘッドライトがずっと上向きだったり、とか。特に大変だったのは首都高速ですね。初めて首都高を走ったときには怖くて怖くて、渋滞で止まったときには心の底からホッとしました」
トヨタ・カムリで“運転の修業時代”を送ったという紺野さんは、それでもクルマに乗るようになって生活が変わったと振り返る。
「第二のマイルームができたように感じました。人に見られる仕事なので、撮影を終えて自分のクルマに戻ると、なにか素顔に戻れるというか、『今日も終わったなぁ』という実感が湧いてきました。クルマに乗るようになって、オンとオフを切り替える場所ができたんだと思います。大声でカラオケの練習をしたり、メイクをしたり、動く自分の部屋でしたね」
カムリに乗るようになって3年、車検の時期を迎えると、紺野さんは次の愛車を考えるようになったという。
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こうして紺野さんは、86年にフォルクスワーゲン・サンタナに乗るようになった。
今回、撮影場所までやってきた88年型のサンタナを間近に見た紺野さんは、「わぁっ! まだ走っているんだ」と、歓声をあげた。
「私のサンタナはワインレッドのような色でした。今、見ても格好いいですね。少しレトロな雰囲気なんだけど、同時にシンプルな形に新鮮な印象も受けます」
運転席に腰掛けると、「インテリアのアナログな感じに郷愁をそそられます」と、言いながら、懐かしそうにハンドルや空調の操作パネルに触れた。
サンタナは、フォルクスワーゲンと日産の提携により生まれたモデルで、日産の座間工場でノックダウン生産された。このクルマの出自には、ちょっとしたストーリーがある。
70年代後半から、日本車ばかりが欧米に入ってくる、という貿易摩擦の問題が表面化する。そこで、日本とヨーロッパが協調することを示すために、4年もの歳月を準備期間にあてて、サンタナが企画されたのだ。
サンタナは、当時の日産のラインナップと重ならないセグメントの高級車で、日産のディーラーのほかにヤナセでも販売された。紺野さんのサンタナは、ヤナセで購入したものだという。
フォルクスワーゲン「ゴルフ」とおなじ1.8リッターの直列4気筒SOHCエンジンや、1.6リッターの直列4気筒ディーゼルターボが搭載されたが、なにより話題となったのは、アウディ「80」と共通の2.0リッター直列5気筒DOHCエンジンだった。
日産はサンタナを製造することで、ドイツのクルマづくりを学ぶことができたものの、1台ずつロイヤリティを支払う必要があったことから利益率としては厳しく、88年にフォルクスワーゲンとの提携を解消、サンタナの生産も終了した。
「お話したように運転も苦手だったし、クルマにも詳しくないので、サンタナとカムリの違いはよくわかっていなかったかもしれません(笑)。でも、ヨーロッパへの憧れもあったし、私も外車に乗るようになったんだ、という感慨はありましたね」
紺野さんの愛車となった最初の2台、カムリとサンタナはいずれも機能重視の合理的なセダンだ。スタイリングも、飾り立てたり盛ったりしない、スクエアでシンプルな形状だ。紺野さんがクルマ生活のスタートにこの2台を選んだのは決して偶然ではなく、ご本人の考え方が反映されているのだろう。というのも、サンタナの次に選んだクルマもまた、質実剛健なモデルだったからだ。
後編となる次回は、サンタナから現在の愛車に至るまでのストーリーを語っていただく。
→後編はこちらをクリック。
紺野美沙子(こんのみさこ)1980年、慶應義塾大学在学中にNHK連続テレビ小説「虹を織る」のヒロイン役で人気を博す。「武田信玄」「あすか」など多数のドラマに出演。舞台「細雪」(原作:谷崎潤一郎)では三女・雪子役を好演。1998年、国連開発計画親善大使の任命を受け、カンボジア・パレスチナ他、アジア・アフリカの各国を視察するなど、国際協力の分野でも活動中。2010年秋から「紺野美沙子の朗読座」を主宰。2024年11月、浜離宮朝日ホールにて『源氏物語』を上演予定。NHKエフエム「音楽遊覧飛行」案内役を担当。元祖スー女としても知られ横綱審議委員である。
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文・サトータケシ 写真・安井宏充(Weekend.) ヘア&メイク・金田恵理子 スタイリング・石田純子 編集・稲垣邦康(GQ)
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