【F1第22戦無線レビュー（2）】「目的を見失うなよ」「自分のレースをしている」戴冠を見据え冷静に走り続けたフェルスタッペン

2024年F1第22戦サンパウロGP。レース後半、上位ではメルセデス勢が順調に走行する一方、フェラーリはカルロス・サインツのピットインを直前にして取りやめるという慌ただしい瞬間を迎えた。そして冷静なレース運びで5位入賞を果たしたマックス・フェルスタッペンが、4年連続のチャンピオンに輝いたのだった。ラスベガスGP前半を無線とともに振り返る。

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レース後半に入った27周目、フェラーリは3番手カルロス・サインツとシャルル・ルクレールの位置を入れ替えさせた。1セット目のハードタイヤが厳しくなっていたサインツは、ピットインを要請する。

27周目
サインツ：ピットに入れてくれ。ピットインだ。おーい、聞いてるか？
リカルド・アダミ：カルロス、ボックスだ。ピットに向かえ。

しかしギリギリになって、指示が変わった。

アダミ：いや、ステイアウトだ。ステイアウト！

サインツは直前でピットインを回避。しかし白線を跨いでしまった。

サインツ：何が起きたんだ？
アダミ：準備ができていなかった。
サインツ：起きてるのかよ？　しっかりしてくれ！！

すぐ後ろにいたルイス・ハミルトン（メルセデス）は、そのままピットインした。

28周目
ハミルトン：いいコールだった。サインツはピットに入りかけて、でも白線をカットしてコースに向かったぞ。

3番手を周回するマックス・フェルスタッペン（レッドブル）に、担当エンジニアのジャンピエロ・ランビアーゼから無線が飛んだ。

32周目
ランビアーゼ：マックス、今日の僕らの目的を見失うなよ。わかってるよね？
フェルスタッペン：わかってる。自分のレースをしているから。

前を行くメルセデス2台をこれ以上追うな、今の位置をキープすればチャンピオンになれるのだから、という指示だった。

メルセデスやフェラーリが優勝争いをしているのに対し、この週末のマクラーレンは完全に精彩を欠いていた。フェルスタッペンの後ろ、6番手を走るランド・ノリスも、タイヤを上手く使えていないようだ。

46周目
ウィル・ジョゼフ：ランド、オーバーステア傾向に注意するんだ。

47周目
ジョゼフ：かなり深刻だ。オーバーステアに気をつけろ。
ノリス：わかってる。でも……いや、大丈夫だ。

結局、それ以上順位を上げられず、タイトル獲得の夢は潰えた。チェッカー3周前にソフトタイヤに履き替え、ファステストを叩き出せたのが、せめてもの慰めだった。

ジョージ・ラッセルがポール・トゥ・ウイン、ハミルトンも2位表彰台に入り、メルセデスがワン・ツーフィニッシュを果たした。

ラッセル：ベガス！　ベイビー！！
マーカス・ダドリー：ビバ、ラスベガス！　素晴らしい。ノーミスの走りだったぞ。カジノで会おう！
ラッセル：今夜は、大騒ぎだ！
ダドリー：そうしよう！
ラッセル：そしてマックスにおめでとうだね。
トト・ウォルフ代表：ジョージ、ロサンゼルスで乾杯……、いやラスベガスと、それからロスでも1杯やろう。そう言いたかったんだ。
ラッセル：（笑いながら）トト、僕らはラスベガスに留まるよ。

ハミルトン：素晴らしい努力だった。価値ある結果だよ。苦しい期間が長く続いたからね。みんなのことを、本当に誇りに思う。
ボニントン：いや、ルイス。素晴らしいのは君だ。今日はよく挽回してくれた。

ハースは今回もニコ・ヒュルケンベルグが入賞し、コンストラクターズ選手権6位争いで、アルピーヌ、RBをさらに引き離した。しかしケビン・マグヌッセンは12位に終わり、ポイント獲得はならなかった。

マーク・スレイド：1ストップで走り切ったのは、君だけだった。最高のタイヤマネージメントだった。
マグヌッセン：でも正解じゃなかったね。
スレイド：それはまた、別の話だ。

エステバン・オコン（アルピーヌ）はピットインのミスが響いて、17位。本人に非はないはずだが、なぜか自分から謝罪した。これには担当エンジニアのジョシュ・ペケットも面食らっていた。

オコン：ピットインのミスは申し訳なかった。あとで、見直そう。
ペケット：いやいや、謝る必要はない。全然謝らなくていい。君の責任は、まったくないんだから。とにかく後で、見直そう。

そして4連覇の偉業を達成したフェルスタッペン。しかし苦しかったシーズン後半を回想してか、喜びを爆発させる感じではなかった。

ランビアーゼ：4年連続だ、マックス。4連覇だよ。おめでとう。
クリスチャン・ホーナー代表：マックス・フェルスタッペン、君は4回の世界チャンピオンだ。素晴らしいとしか言いようがない。
フェルスタッペン：なんてシーズンだったんだ。4つのタイトルか……。みんな本当にありがとう。去年よりかなり厳しかったけど、でも全員で頑張って、ベストを尽くしてくれた。本当にありがとう。不可能だと思ってたよ。
ランビアーゼ：今の僕は無線ではかなり大人しく聞こえると思うけど、まともに何か言えそうにないんだ。
フェルスタッペン：ハハハ、とにかく僕たち、悪くない集団だよね。だろ？　ところで喉がカラカラなんだけど。みんなは、どう？

もちろんフェルスタッペンたちはこのあと、シャンパンシャワーで心ゆくまで喉の渇きを癒やしたのだった。

Comments

[ene********]

ワンマンショーが終わった来年が楽しみだ。