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エイプリルフールのフェイクニュースとして拡散され、バイク業界に旋風を巻き起こした伝説のシングルロードレーサー「ロードボンバー」とは?

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エイプリルフールのフェイクニュースとして拡散され、バイク業界に旋風を巻き起こした伝説のシングルロードレーサー「ロードボンバー」とは?

 最近、ネットを騒がせているフェイクニュース。SNSの発達と共に拡散力が強まり、問題になっています。そんな今から45年前、あるバイク雑誌に掲載されたエイプリルフールのネタ記事が生んだ伝説的なエピソードがあります。

 1977年4月、三栄書房が発行する二輪専門誌「モト・ライダー」の巻頭グラビアで、ヤマハから登場する新型モデルとして「XT-S 500ロード・ボンバー」のスクープ記事が掲載されたのです。

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 その前年、1976年に発売されたエンデューロモデル「XT500」に採用されていた排気量499ccの空冷4ストロークSOHC単気筒エンジンを搭載。アメリカやヨーロッパで大ヒットしたモデルで、レースシーンでも活躍していました。そのロードスポーツ版という設定で、デザインにはカフェレーサースタイルが落とし込まれていました。

 フレームはオリジナルのスチール製パイプのダブルクレードルを採用。コンパクトでスリム、軽量で扱いやすそうな上にカッコいいということもあり、瞬く間に読者の間で話題となりました。しかし、実は編集部が企画したエイプリルフールのフェイクニュースだったのです!

 設計と製作を手掛けたのが、ジャーナリストでありテストライダーでもあった島英彦氏が主宰する研究所「シマR&D」でした。実際に走行することを想定して製作されており、スタイリングの完成度が高く、本当に販売されると信じてしまった読者も少なくありませんでした。誌面に「エイプリルフール」の注意書きがあったものの、ヤマハの販売店には予約しようとした読者からの問い合わせが寄せられたんだとか…。

 反響を受けてロード・ボンバーは大規模な連載企画に発展しました。テストコースやサーキットで実施した過酷な走行テストをレポート。また、1973年のオイルショック以来中止されていた鈴鹿6時間耐久レースが復活することになり、レース仕様の「ロード・ボンバーIX」で出場することになりました。6時間を無事完走し、総合18位に入ることに成功しました。

 そして翌年、1978年。国際格式レースとなった鈴鹿8時間耐久レースに出場。エンジンを競技用にチューニングし、ブラックにオールペイント。タンクに「SHIMA 498」のロゴをおごった「ロード・ボンバーIX改」で参戦。総合8位、プロト・クラス6位という快挙を達成したのです。

 ’70年代後期のロードスポーツモデルといえば、日本製4気筒エンジンが人気を集めていました。’50~’60年代に盛り上がっていたBSAやトライアンフ、ノートン、ヴェロセット…といったイギリス製シングルスポーツは、根強いファンがいるものの時代遅れという印象がもたれていました。

 多気筒エンジンや高出力化がもてはやされた時代にロード・ボンバーが登場し、耐久レースで好戦したことは、非力な単気筒エンジンでも軽量化や扱いやすさなど、トータルでデザインすることで充分戦えることを実証。日本のモーターサイクルカルチャーに多様性を与えたと言ってもよいでしょう。

 そして、1978年にはXT500のエンジンをベースにロードモデルバージョンとしてSR500とSR400が誕生。ツーリングやレースのみならず、ストリート系カスタムのベースとしても人気となり、2度の生産終了と復活を繰り返しつつも、43年にわたり愛され続けるロングセラーモデルモデルとなるのです。

 そんなSRも、排ガス規制の強化やABS義務化などにより、2021年に惜しまれつつもファイナルエディションをもって国内向けの生産終了。今でも根強いファンは多く、中古車市場では価格が高騰し、プレミア価格となっています。

 立役者となったロード・ボンバーIX改ですが、’80年代に開催されたシングルレースにも参戦。改造を繰り返し、変わり果てた姿となり、不動状態で20年以上も保管されていたそう。

 その後、SRのカスタムショップとして知られた「スラクストン」(現在閉店)の手によって、’78年当時の姿が再現されました。

 現在、東京都東久留米市にあるバイクショップ「9-GATE(ナインゲート)」が所有し、今も当時と変わらない姿で存在しています。

「オリジナルフレームで、ナンバープレートを取得できないので公道が走れません。レースでもレギュレーションに合わないので参加できないんです。オブジェとなってしまっていますが、歴史のあるバイクなので、そのままの姿で保管しています」

 走らせられないことを残念そうに語る代表の細井啓介さん。ヤマハのSR400、SR500などをメインに国内外のバイクのメンテナンスやカスタムを手掛ける人気店で、幅広い年齢層のバイクファンに支持されています。

「お客様は30~40代が中心ですが、10代~20代の若いユーザーまで来店します。当時を知らない世代なので、この車両を見た若い子から『カッコいいSRですね』ってよく言われます。実際、乗ってみても普通にSRのように乗れちゃいます」

 ロード・ボンバーが登場した時にバイクに乗っていた世代はもう60代以上。リアルタイムで体験している人が少なくなった今、当時のスタイルを残すことを大切に思っているのだそう。

「レーサーはワークスマシンでもない限り、そのままの姿で残っていることはほとんどありません。公道でもレースでも走れないと、維持するのは難しいでしょう。でも、ロード・ボンバーはジャパニーズカフェスタイルを広めた元祖的な存在だと思っています」

 当時を知らない世代や多くの人にもっと見てほしいという細井さん。現在、いつでも見ることができるように店内で保管、展示しているのだそう。

「現在、参加できるレギュレーションのレースがないのですが、もしエキシビジョンで参加させてもらえる機会があったら、ぜひ走っている姿も見てほしいと思っています」

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  • ”嘘から出たまこと”がこんな長生きするとは、当時誰も想像できなかったろうな。
  • 「オートバイの科学―トータルバランスの限界を求めて 」(講談社ブルーバックス (B‐501))を読んだ。
    ロードボンバーのキモは、「左右フットレストの間隔を徹底して詰める」こと。この考え方は、後年のオートバイ、特にロードスポーツバイクの設計に大きな影響を与えと思う。
    エンジンの出力だけではなく、トータルバランスが大事ということを見事に実証した天晴なバイクです。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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