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もはやクルマの域を超えたベントレーの超高級コンバーチブル「コンチネンタルGTC Azure V8」

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もはやクルマの域を超えたベントレーの超高級コンバーチブル「コンチネンタルGTC Azure V8」

■連載/金子浩久のEクルマ、Aクルマ

 ベントレーの「コンチネンタルGTC Azure V8」は、ご覧の通り、2ドア4人乗りのコンバーチブルだ。Azureというのは新たに設定されたグレードで、快適性を重視したオプションが最初から組み込まれている。

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排気量4.0LのV8ツインターボエンジンは最高出力550馬力と最大トルク770Nm



 排気量4.0LのV8ツインターボエンジンは最高出力550馬力と最大トルク770Nmを発生し、決して軽くはない車体を318km/hの最高速で走らせることができる。加速性能も格別で、停まっている状態から時速100kmに達するのに、たったの4.1秒しかかからない。あのポルシェ「911カレラ」でさえも293km/hと4.2秒(「スポーツクロノ」パッケージ装着車は4.0秒)なのだから、「コンチネンタルGTC Azure V8」の並外れた速さが理解できるだろう。



 速いことと併せて、運転した感覚がまた素晴らしく上等だ。路面からのあらゆるショックの類を吸収し、車内に伝えてこない。加速の際にも荒々しさはなく、大パワーを4輪を通じて路面に伝えていく。2370kgもある車両重量を逆手に取って、乗り心地は重厚にしていながら繊細だ。

昨今、省エネの観点からクルマは軽いことが望まれるが、絶妙に仕立てられた重量級のクルマほど快適なものもない。
ベントレーならではの世界観は、そうした走りっぷりだけに止まらない。内外装の仕上げも、また特別に上等なのだ。

 まず、ダークサファイアというボディカラーがなんとも言えないほど素晴らしい。限られた時間内での試乗だったので、光線の具合を十分に勘案しながら撮影できなかったのはご容赦いただきたいのだが、実物は紺にも見えるし、深い紫をも彷彿とさせる複雑で奥深いものだった。

 明るめの紺の幌を下ろすと、車内も青系統でまとめられている。革シートやドア内張などは、クラインブルーという紺色でまとめられている。アクセントに明るい青の縁取りの革やダイヤモンドキルト柄の刺繍が施されている。

 他にも、クロムメッキされて輝く金属や艶消し加工が施された金属、ピアノフィニッシュされた木材など素材の特質を活かして各部分に配されている。

 メーターパネルがデジタル表示されたものになってからずいぶん経つが、その代わりに試乗車にはオプションの「Bentley ローティングディスプレイ」が装着されていた。



メーターパネルの左側、ダッシュボード中央部分のパネルがその下にある「SCREEN」というボタンを押すごとに回転し、ナビゲーション画面と3眼メーター画面を反転させながら選ぶことができるのだ。

 3眼メーターは左から外気温度、方角、ストップウオッチ。それぞれ、リアルな“針”でアナログ表示するが、この方式でなければ表示できないということはなく、ギミック的なもの。ちなみに、オプション価格は98万3250円(消費税込)。
その価格に驚く前に、車両(だけの)価格をお伝えしておくと、3946万8000円である。

さらに驚かされる魅力的なオプションの数々

 価格だけを見れば世の中にはもっと高いクルマもあるけれども、4000万円に届こうとしている。さらに驚かされるのは、この価格には前述の「Bentley ローティングディスプレイ」などのオプションの代金は含まれていないのである。

 試乗車に装着されていたオプションは、他に7つ。LEDウェルカムランプ、ブラックラインスペック、ヒーテッドステアリング、クロームピンストライプ、Bang&Olfsenオーディオ、セルフレベリング・ホイールバッヂ、レッドキャリパー。全8つのオプション価格の合計が、321万5810円。

 実は、このクルマに装着されているオプションはこれだけではない。他に「マリナーオプション」と呼ばれるオプションも装着されているのである。マリナーとは、コーチビルダーの「H.J.マリナー」のこと。馬車時代から車体を製造し、クルマの時代になってからはロールス・ロイスやベントレーなどのボディーを製造してきた。

 前述した、クラインブルーという濃い紺色の革内装とダイアモンドキティング、その刺繍なども「マリナーオプション」なのだ。それらの合計額が「約700万円。正確に算出できないのは、個々の価格が細かく変動するためです」(ベントレージャパン・広報スタッフ)。

 ということは、この試乗車の合計金額は、3946万8000円+321万5810円+約700万円=約4968万3810円。つまり、ほぼ5000万円ということになる。値段の高さだけで驚くのも野暮というもので、さらに驚かされてしまうのはオプションの数である。数えてみたら108もあった。まさに煩悩そのものだ。

 それらのオプションも、前述の通りスタンダードのオプションとより凝った「マリナーオプション」がある。何を選んで、どんなクルマに仕立て上げていくのか? 世界に一台だけの自分のベントレーを誂えたい、とクルマ好きならば興奮するだろう。

「ただ、これだけオプションがあると、迷ってしまってなかなか選び切れません。時間を節約するためにも、あらかじめ快適性を重視したオプションをセットにしたのが、この“Azure”というグレードです」(同上)

「コンチネンタルGTC」でスポーティなオプションを予め装備したのが“スピード”と“S”で、ゴージャスなオプションがセットされたのが“マリナー”、そしてスタンダード版の5グレードが「コンチネンタルGTC」には用意されている。

 この「選び切れないから、予めオプションを見繕ってグレードを設定する」という商品企画は、ベントレーでは「デリバティブモデル」と呼んでいるが、近年の高級車メーカーに共通している傾向だ。顧客が全員、熱心なクルマ好きとは限らないし、そうした人々にもまずは買ってもらって、2台目、3台目と将来に渡っても顧客であり続けてもらいたいからだ。

 富裕層相手のビジネスには驚かされてしまうことの連続だが、さらにスゴいのはオプションリストには載っていないものを装着するとか、特別な刺繍を施すとか、色見本にはない色でボディや内装などを塗りたいというビスポークサービスにもベントレーでは応じているところだ。

 好みやイメージを反映させて、スタッフとのやり取りを重ねてイギリスに発注する。時間も掛かるし、もちろん価格だってそれなりに上昇する。見本もないから、完成するまでどんなクルマになるのかわからない。108のオプションで驚いている場合ではないのだ。

 ビスポークからしてみたら、108のオプションからいろいろ選んで1台を仕立てたとしても、それはカナしいかな既成のオプションを組み合わせて、“あてがえられたクルマ”にしか見えない。極端な例を大袈裟に述べているのではなく、戦前のロールス・ロイスやベントレーなどの超高級車の多くはそうして仕立てられていた。専用ボディをデザインすることから造られ始められるクルマも少なくなかったのだ。それに較べれば、現代の超高級車のボディは共通だから、だいぶ平準化されている。

 とは言っても、顧客とスタッフが向かい合い語り合って1台を造りあげていくというアナログそのものの手法で成り立っている超高級車の世界の奥深さに感嘆させられてしまう。「コンチネンタルGTCアズール」の出来映えも素晴らしかったが、それを支えているベントレーの企画と製造と販売の態勢の周到さに驚かされた。もはやクルマであって、クルマの範疇を越えているような気もしてきた。

■関連情報
https://www.bentleymotors.jp/models/continental-gtc/continental-gtc-azure/

取材・文/金子浩久(モータージャーナリスト)

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