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“攻めた”戦略のGT-Rが背負う不安と、勢力増すGRスープラ勢に漂う余裕【GT300予選あと読み】

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“攻めた”戦略のGT-Rが背負う不安と、勢力増すGRスープラ勢に漂う余裕【GT300予選あと読み】

「スープラ勢あたりが速いだろうと予想していましたし、自分たちはシングル(9番手以内)に入れればいいなくらいに思っていたんですけど、フタを開けてみたら予想以上のポテンシャルと順位でした」

 4月10日、岡山国際サーキットで行われたスーパーGT開幕戦、GT300クラスの予選を4番手で終えた昨年のチャンピオン、リアライズ日産自動車大学校 GT-Rの藤波清斗はそう語った。

GAINER TANAX GT-RがQ1ダントツのGRスープラ勢を退けてPPを獲得【第1戦岡山GT300予選】

 3月に同じく岡山で開催された公式テストでは「気温が低すぎて、タイヤが発動しなかった」(米林慎一エンジニア)というが、「タイヤのレンジも合ってきましたし、試行錯誤しながらセットアップも変えてきて、いろいろと噛み合ってきた」(藤波)結果、無事開幕に間に合わせた、というところのようだ。

「僕らは去年から決勝で順位を下げてゴールしたことはないですし、岡山はセーフティカーが出る確率も高い。自分たちができることをやっていけば、いいレースができると思う」と、藤波はディフェンディングチャンピオンとして迎える初レースに期待を寄せる。

 予選ポールポジションを獲得したのは、同じGT-R勢で昨年も終盤までタイトル戦線に残ったGAINER TANAX GT-Rだ。だがポールポジション獲得にもかかわらず、「決勝で無事、1スティントを走り切れればいいですけど……」と福田洋介エンジニアは弱気である。

 岡山の公式テストでは「突然、ウエイトを(特別BoPで)増やされ、タイヤもブレーキもそれを前提にした状態を用意できていなかった」(福田エンジニア)ため、下位に沈んでいたGAINER TANAX GT-R。

 開幕に向けては策を練るなかで、今季のスポーティングレギュレーション変更により7セットから6セットへと減らされた持ち込みタイヤのスペックを、“攻める”ことにしたという。

 持ち込みが1セット減ること、事前の予報ではもっと気温が上がることも予想されていたこと、全車が特別BoPにより重い状態となっていること、その状態で岡山でレースをしていないこと……。それらの要素を考えると「基本は“冒険”できない持ち込みになると思うんです」と福田エンジニア。

 だが、ゲイナーはセオリーの逆を行った。タイムの出る、柔らかめのタイヤを2種類持ち込み、予選でライバル勢の前に立とうという作戦だ。なお、チーム内でも今季からダンロップを履く10号車GAINER TANAX with IMPUL GT-Rとは持ち込みスペックを分け、攻めと守りの両面を使い分けた。

 さらに11号車GAINER TANAX GT-Rは、その攻めた持ち込みタイヤから予選Q1ではハード寄り、Q2ではソフト寄りのスペックを採用した模様で、これらすべての要素がピタリとはまり、僅差でポールポジションを奪取したようだ。

 ただし、決勝のスタートタイヤは予選後の抽選により、Q2の使用タイヤが選ばれている。ゆえに、決勝にはタイヤライフという点で、不安を残しているというわけだ。

 今回は特別BoPの重量もあり、「タイヤもですが、ブレーキの温度もすごいことになっている」と福田エンジニア。決勝に向けては、セットアップのアジャストが必須だというが、それで乗り切れるかどうか。決勝でもっとも注目したいポイントだ。

■自信を見せるGRスープラ勢「52号車がぶっちぎる」との声も
 一方、ポールポジションこそ奪われたものの予選Q1の両組で上位を独占したGRスープラ勢からは、決勝を比較的楽観視する声も聞こえてきている。

 0.087差でポールポジションを逃した埼玉トヨペットGB GR Supra GTの吉田広樹は、「予選だけでなく、レースで使えるタイヤを選びたいと思って午前中から走りました。どちらかというとレースで戦える方のタイヤは選べています。その状態で予選がこのポジション(2番手)につけましたし、流れとしてはいいですね」と語る。

「ゲイナーさんもKONDO RACINGさんもチャンピオンを獲っているチームですし、もちろん甘くは見ていません。ただクルマ的には、たとえば曲がりくねったセクター3などは、僕らのマシン(GRスープラ)にアドバンテージがあると思っているので、あとはレースで“強く”戦えたらなと思っています」

 埼玉トヨペットGB GR Supra GTについては、公式テストの際にロングランで圧倒的なペースを見せつけており、ライバルたちもその安定性を警戒。予選後のパドックでは「あそこは絶対、決勝でぶっちぎるはず」という声もあった。

 だが吉田は「今朝はタイヤを選ぶことに集中していたので、ほとんどロングできていないんですよ」という。

「テストの状態ではロングにはすごい自信があったんですが、今週末は少し暑いのが心配で。実際、あのときとは少しフィーリングが違う感覚もあり……ちょっとドキドキしています」

 今回のレースではブルテンにより、レース中のドライバー交代時にタイヤ4本の交換が義務付けられており、埼玉トヨペットGB GR Supra GTが得意とするタイヤ無交換作戦を繰り出すことはできない。「(交換義務付けの)影響がないとは言えない」(吉田)が、予選までを見る限り、適切なタイヤを選択することはできているようだ。

 スープラ勢では、3月末の富士公式テストにおいてシェイクダウンにも関わらずセッショントップタイムをマークした、たかのこの湯 GR Supra GTが、2回目の走行機会となる岡山でも引き続き速さを見せ、予選5番手に食い込んだ。

「Q1で堤(優威)さんがトップタイムを出してくれたので、クルマのポテンシャルがあるのは分かっていました」と予選Q2を担当した三宅淳詞。

 テストは富士の2日間しかできておらず、ほとんどぶっつけ本番状態ゆえ、ドライバーのマシンへの習熟もまだ進行中、という面もあるようだ。

「スープラはRC Fと違ってクイックなクルマ。クイックではあるんですが、フォーミュラではなく重たい分、慣性がついてしまうと“フォーミュラのようでいてそうじゃない、ハコ車っぽさ”が出る。僕はまだ、そこに手こずっているんです」と三宅は明かす。

「自分のできる範囲ではアタックをまとめましたが、もうちょっとその部分をコントロールすることができるようなれば、まだ上にいけると思います」

 ただ、決勝に向けてはこちらも自信はある様子。

「富士でもここでもロングランは良いです。上位は実績のあるベテラン勢ばかりですが、自分たちもクルマのポテンシャルは負けていないので、決勝でも落ち着いてミスなくレースすれば、(もっと上位に)いけるんじゃないかと思っています」(三宅)

 スープラ勢ではSYNTIUM LMcorsa GR Supra GTも予選6番手に入る活躍を見せており、3台でタイヤメーカーも分かれるなか、決勝でのポテンシャルにも注目が集まる。

 果たして明日の決勝はGT-R vs GRスープラという構図となるのか、あるいはほかのマシンが食い込んでくるのか。新時代GT300の戦いから目が離せなくなりそうだ。

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