9月1日、ロールス・ロイスは4ドアセダン「ゴースト」の新型を発表した。11年ぶりのフルモデルチェンジの内容とは?
シンプルさを追求
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2009年の登場以来、初のフルモデルチェンジを受けた新型「ゴースト」の特徴は、“起業家のビジネスツール”という現行モデルのコンセプトを引き継ぎつつ、より洗練されたスタイリングと、最高の乗り心地を目指したところにある。
「Less but better」とロールス・ロイス(以下RR)が説明するのが、新型ゴーストだ。2009年デビューの現行モデルも、ラインナップ頂点の「ファントム」に対し、ドライバーズカーとしてのキャラクターが訴求されてきた。
ここで紹介した「Less but better」とは、新型ゴーストの開発コンセプトであるという。べつの言葉でいうと、「見かけはよりシンプルに、内容はより充実」になる。
興味ぶかいのは、シンプルさを追求した理由として、ターゲットである若き富裕層のいまの嗜好性に合わせたため、と、RRが述べている点だ。過剰なものを排し、内容の濃さを重視する……そのひとつがデザインだ。
画像をみればわかるように、イメージはたしかにシンプルだ。全長は現行ゴーストより89mmも長くなって5546mmになった。いっぽうで、キャビン高は抑えられ、前後にすっと流麗なシルエットを持つ。
フロントマスクも同様。RRのシンボルであるおおきな「パンテオン・グリル」をもつものの、スピリット・オヴ・エクスタシーはその背後に置かれ、電動で格納してしまえば、スタイリングの印象はだいぶすっきりする。
サイドのボディパネルにも注目したい。Aピラーからリアフェンダーまで、1枚の鋼板を使う。かつ、熟練した職人が4人がかりで溶接に取り組む。
結果、継ぎ目がいっさい見当たらない、ひとつのかたまりから削りだしたような美しい面が実現している。5.5m超のクルマで、ここまで滑らかな面は希有なことだろう。
benedict campbellRRでは新ゴーストのデザインコンセプトを「ポスト・オピュランス(Post-Opulence)」と呼ぶ。「脱・ぜいたく」と、日本法人では説明してくれたけれど、たんなる「脱・ぜいたく」というよりは、「脱・これみよがしのぜいたく」というニュアンスである。つまりは、本当のぜいたく、ということだ。それが証拠に、「プレミアム・ミディオクラシーの反証みたいな存在にしようと考えました」と、RRではプレスリリース中に書いている。中途半端なプレミアムという意味にもなる「プレミアム・ミディオクラシー」は、2017年ごろから英米で注目された消費トレンドで、日本語にすると”プチぜいたく”といったところだろう。
例をあげれば、ウーバーの後席でショファーつきのクルマに乗っている気分を味わうことや、フレンチフライにトリュフオイル(トリュフでなく)をかけることなどが思いつく。
新設計のシャシーを採用
新型ゴーストのもうひとつの特徴は、新設計のシャシーだ。アルミニウムのスペースフレームで、さきに「ファントム」と「カリナン」に採用したものを新型ゴースト用に一部設計変更した。
恩恵は操縦性と快適性の向上だ。剛性としなやかさを併せ持ち、そこに420kW(523bhp)の6.75リッターV型12気筒エンジンに、フルタイム4WDシステムのドライブトレインが、低重心化を念頭に搭載されている。重量配分は前後50対50という。
操縦性については、フロント側のアッパーウィッシュボーンにダンパーを組み込み、縦方向も橫方向もしっかり動く「プラナー・サスペンションシステム」が新型ゴーストで初採用された。「開発に10年かけました」と、RRが説明する肝煎りのシステムだ。
さらにGPSの情報と連動し、コーナーの手前などで適切なギアを選ぶ「サテライト・エイデッドシステム」と、ステレオカメラで前方の路面の情報を把握しつつ足まわりの設定を瞬時に最適なものにする「フラッグベアラ−」システムが組み合わされる。
benedict campbellそして、四輪操舵システムも備え、はたして新型ゴーストは、RRが標榜する「マジックカーペットライド」(空とぶじゅうたんのような乗り心地)を実現したという。静粛性の面でもダブルバルクヘッドを採用するなどして、最大限の注意をはらっている。
「新型ゴーストは、これまで手がけた製品のなかで、もっとも技術的な先進性をもったモデル」。
RRではそう胸をはる。ただし、それをこれみよがしにはしない。オーナーが激務のあとクルマに乗り込んで癒やされたいと思うようになることがもっとも重要で、そこに新型ゴーストの価値があるという。
benedict campbell文・小川フミオ
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