■車名も変えた! 新型車にかけるマツダの意気込み
マツダ「アクセラ」が、車名を海外で使われていた「マツダ3」に変えて国内で発売されました。国産車ではあまりみられない雰囲気の車種名ですが、マツダはこのクルマの登場をきっかけに新たなクルマづくりを始めていきます。
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変わるのはひとつひとつの商品だけでなく、クルマづくりをおこなう上でのコンセプトや基本構造まで多岐にわたります。これからマツダは、どのように変わっていくのでしょうか。
マツダは、以前に比べて国内で販売する車種を減らしたので、海外で使用する車種名のアルファベットと数字を組み合わせた「マツダ3」をアクセラの後継モデルとして国内で使う方針になりました。販売店からは「本当に車名を変えたので驚いた。マツダの『マツダ3』というのは不自然」との意見も聞かれます。
おそらく、ほかの車種もフルモデルチェンジなどのときにグローバルな車名に変更すると思われますが、OEMの軽自動車は従来通り「フレア」や「キャロル」といった車名が使われるでしょう。
車名を変える理由は、マツダ3の登場をきっかけにデザインやメカニズムの世代が新しい段階に入るためです。
新しいマツダ3の外観を先代型にあたるアクセラと比べると、ボディパネルの見せ方がかなり違います。
アクセラでは、ボディ側面に複数のキャラクターライン(デザイン上の目的で入れられる線)が入り、この線を境目にボディパネルの角度を変えていました。それがマツダ3になると、キャラクターラインは抑えられ、ボディ全体に境目のないウネリが持たせられています。
映り込みが連続的に繋がることで、ボディが塊感のあるオブジェのように見えます。マツダのデザインコンセプト「魂動デザイン」が新しくなったと実感できることから、車名を変えるタイミングとしても納得いきます。
マツダ3が革新的なデザインを採用した背景には、以前の「魂動デザイン」の硬直化もあったでしょう。デザインのみならず、外装色も多くの車種が「ソウルレッドプレミアムメタリック」(後に『ソウルレッドクリスタルメタリック』へ進化)をイメージカラーとしているので、どの車種も外観が似通って見えてしまいます。
マツダ3のボディスタイルは、現状からの脱却と車種の個性化をねらった結果といえるでしょう。
しかし、これから登場するマツダ車がすべてマツダ3のようなボディ形状になると、再び外観が硬直化します。避ける方法は無いのでしょうか。
そのヒントは、2019年5月9日におこなわれたマツダの通期決算のプレゼンテーションにあります。
この発表によると、今後のマツダ車はふたつのアーキテクチャー(基本構造)をそろえ、ひとつ目はスモールアーキテクチャーになるそうです。新しいプラットフォームと、スカイアクティブXやマイルドハイブリッドを採用しており、マツダ3はこの第1弾に位置づけられます。
ふたつ目は、現時点で商品化されていないラージアーキテクチャーとなり、縦置きの直列4気筒エンジンに加えて、直列6気筒の「スカイアクティブディーゼル」と「スカイアクティブX」を導入すると発表しています。
FF車に直列6気筒を縦置きで搭載するのは、不可能ではないですが非現実的です。従ってFR車になるでしょう。
■今後マツダはより幅広いユーザーの好みに対応できるのか
そもそも、ボンネットを長く見せて、チーターが疾走する時のように後ろ足(後輪)に荷重が加わったような今の魂動デザインは、FR車の方が自然に表現できます。
先代「CX-5」が登場した2012年頃、マツダのデザイナーや商品企画担当者に「新しいプラットフォームをFRで開発することは考えなかったのか」と尋ねたことがあります。説明を聞いていると、デザインから運転感覚までFRに相応しい内容だったからです。
その返答は「合理的に開発できないからFFにした」という曖昧なものでした。
現在、マツダはミニバンをはじめとした車内の広さが売りのクルマをつくっていないので、FRのプラットフォームを開発しても問題ありません。今になって直列6気筒エンジンのFR車を開発するのは時代錯誤に思えますが、マツダのクルマ造りを考えると、必然というか当たり前の発展です。
問題は、FR車をどのようなコンセプトで開発するかです。
マツダの開発者やデザイナーと話をすると、今の分かりやすいドライバー本位のスポーティ路線とは、少し違うコンセプトを模索していることがうかがえます。運転を楽しめるFR車でありながら、ラグジュアリー性とリラックス感覚を併せ持つ大人っぽいクルマ造りです。
目指すのはジャガーやマセラティのような雰囲気でしょうか。あるいは駆動方式は違いますが、ボルボのようなイメージかもしれません。仮にそうなると、マツダの2つの商品群が広がり、さまざまなユーザーの好みに対応できます。
マツダには、安全で快適かつ楽しく使えるクルマを、愚直に造り続けて欲しいと思います。クルマ好きの気持ちを深く理解しているメーカーなので、ブランド力も徐々に育っていくでしょう。今後の展開が楽しみです。
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