業界唯一の?サビ取り旧車雑誌「オールドタイマー」の過去記事からおもしろネタを厳選して再掲載!
◇◇◇下記、当時原文ママ(2018年10月号)◇◇◇
「これでよしとしたエンジニアの勇気に敬意を表したい」マツダMX-5ミアータと初対面[driver 1989年3-20号より]
スプリンター・ブラックトレノとは?
文/環田昌大
ファッション業界では、不況のときほど暗い色が流行ると言われている。節約意識が高まることで消費が抑えられ、汚れの目立ちにくい茶色や黒が好まれるというのだ。
1968~69年、高度経済成長を成し遂げた日本は世界第2位のGNPを誇った。このとき流行ったのは紫、オレンジ、青のメキシカンカラーやサイケデリックカラー。しかし1973年に第一次オイルショックが起こるとアースカラー(茶系~黒)が好まれるようになり、円高不況に突入するやカーキ色や濃い緑色が街に溢れた。そして第二次オイルショックの低迷期(1980~82年)にはモノトーン(白、黒、グレー)が流行した。
クルマの車体色もこれと無縁ではないだろう。そういえば、1980年前後にはやたらと黒いクルマ(とくに欧州車)が流行った記憶がある。今回紹介するTE61スプリンタートレノの限定車「ブラックトレノ」もその時代の特別仕様車だ。
トヨタは1977(昭和52)年当時よくこの「ブラック」を付けた限定車を発売していた。385台限定だったブラックセリカ・リミテッドエディションは生産台数累計100万台突破記念で3月発売。続いてコロナも20周年記念のブラックコロナを9月発売。11月にはトレノの兄弟車レビンにも1000台限定ブラックレビンが加わる。そしてこのブラックトレノはコロナと同じ9月に550台限定で発売された。(掲載のカタログは1977年8月発行)。
セリカやレビンは手元の資料が乏しく定かではないが、ブラックコロナにはちゃんと専用カタログがある。しかし、このブラックトレノのカタログは専用ではなく、当時の販売チャンネルであるトヨタオート店の総合カタログの最初のページに大きく掲載されたもののみ。どのような理由なのか定かではないが、あまり販売が期待されていなかったのだろうか?(「9月の朝、突然に」というキャッチコピーも気になる)。
ベースはスプリンタークーペのトレノGT。ボディ色は専用のブラックで特別装備としてブラック衝撃吸収バンパー、ブラック砲弾型アウトサイドミラー、専用サイドテープストライプ、Wall to Wallカットパイルカーペット、ブラックアウトワイパー、LIMITED EDITION(限定版)マーク、オリジナルニットテープヤーンシートが付く。
さらにご成約記念でグローブボックスの上にオーナーズプレートという名前を刻印した銘板が備わり、黒七宝製ブラックトレノ・マスコットキーが付いてくる。サイドに付くLIMITED EDITION(限定版)マークには自分のクルマが何台目であるかという番号も書かれている。これはセリカやレビンなどでも同じである。
ではなぜブラック仕様は登場したのか。セダンではなくスポーティ車(仕様)に設定されていることからして、ターゲットは若いクルマ好きなのだろう。当時は排ガス規制による日本車暗黒時代だったから、パワーがなくなったスポーティ車のテコ入れ策だったのかもしれない。確かにトヨタのブラックシリーズはトヨタ車の中で黒い輝きを放っていた。
ちなみにこれ以降、トレノでブラックの付く限定車はAE86のハッチバックにも設定され、400台限定のブラックリミテッドとして販売されている。こちらもあらゆるところがブラックなのだが、ホイールはゴールド塗装が施された14インチ・GX71系の純正アルミホイールが流用されている。何かの機会にこのカタログも紹介してみようと思う。
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