3年ぶりの開催で大いに盛り上がった鈴鹿8耐。その前夜祭で注目モデルが突如披露された。カワサキが試作EVバイクとハイブリッドバイクのデモ走行を実施したのだ。
カワサキは2022年中に3台の電動モーターサイクルを発表すると予告しており、正式なアナウンスも近いと見られる。さらにバッテリーEV仕様は2タイプが設定されるとの情報も入ってきた!
文/沼尾宏明、写真/カワサキモータースジャパン
カワサキがEVとハイブリッドバイク世界初公開! EVはネイキッドとSSの2本立てで先行発売か!?
車体はシンプル、フル電動車は軽量コンパクトなネイキッド
8耐が行われている鈴鹿サーキットで8月6日、カワサキが現在開発中の完全電動バイク(EV)およびハイブリッド車のプロトタイプを世界初公開した。
カワサキは、2019年11月に電動化計画の「EVプロジェクト」を公開。2021年10月、カワサキモータースの設立に合わせ、試作車が日本で初めて披露された。その際に、カワサキは2022年中に3台の電動バイク(EV、ハイブリッドを含む)を発表すると告知。2025年までに10機種に及ぶ電動モデルを導入する。
鈴鹿で公開された2台は2022年中に発表予定の電動モデルに相当すると見られる。
現在、ベンチャー企業などからスポーツタイプのEVは市販化されているが、大手バイクメーカーからは未登場(ヤマハ EビーノやBMW CE04などスクーターは販売中)。ハイブリッドは現在、ホンダからPCX e:HEVのみラインナップされているものの、こちらもスクータータイプだ。
ライバルに先駆けてEVとハイブリッドのモーターサイクルをカワサキが市販化すれば、一挙に電動スポーツバイク市場をリードすることになる。
まずはEVモデルの詳細から解説しよう。2021年時点の試作車ではフルカウルだったが、今回はカウルレスのZ250系に連なるストリートファイターとして登場した。
カワサキから詳細に関する発表はなかったが、通常のバイクでエンジンのシリンダーがある場所にバッテリーを配置。スイングアーム手前にモーターを設置する。
フレームは、現行のガソリンエンジン版Z250や兄弟車のNinja250と全く異なり、バッテリー全体を覆うトラス構造となっていた。
エンジン腰下に相当する部分やエキパイ&マフラーがないこともあり、車体は非常に軽快コンパクトな印象。以前公開された「EVプロジェクト」ではEVには珍しく4速ミッションを備えていたが、今回はマニュアルミッションやクラッチレバーは搭載していなかった。
フル電動バイクのシュラウドには「EV」の文字が。ほとんどの外装と足まわりはZ250/400系と共通だが、よりコンパクトに見える
軽量な車体に250ccシングル以上のパワーを誇る?
2019年11月時点でのコンセプトモデルは、巡航時のモーター出力が10kW(13.6ps)、最高出力20kW(27.2ps)。車重は219kgだった。バッテリーはCHAdeMo規格による急速充電に対応し、フル充電での航続距離は100kmとの情報だ。
今回披露されたEVのスペックは明らかではないが、以前のコンセプト車より明らかにバッテリーが小さいため、車重に関してはより軽量化が期待できる。その上で航続距離が同等か150km程度まで伸びていれば嬉しい。
また、最高出力27.2psは、レブル250やジクサー250など250cc単気筒と同等。しかし、EVは瞬時にトルクを引き出せるため、ガソリン車におけるスペックの数字より高性能になる傾向がある。また、出力特性を容易に変更できるため、さらに最高出力が向上している可能性もあるだろう。
コンセプトモデルのストリップ。バッテリーが大きく、マニュアル4速ミッションも搭載していたが、今回の仕様では変速機構がなかった
ハイブリッドはウイングレット付き、モーターのみの走行も可能!
もう1台の初公開モデルが、ガソリンエンジンとモーターを組み合わせたハイブリッド車。昨年公開された試作車はエンジンとフレームが剥き出しだったが、今回は新作のカウルをまとって登場した。これが独創的で、アッパーカウルはサイドに大きく張り出し、モトGPマシンのようなウイングレットを採用している。
今回のデモランではモーター走行から途中でエンジン走行に切り替えるパフォーマンスも披露。バッテリー+モーターだけでも走行できるストロングハイブリッド方式であることをアピールしていた。
エンジンはNinja250/400系のDOHC4バルブ水冷並列2気筒と見られ、サイレンサーはNinja400と同タイプ。同様にミッションも6速と思われるが、クラッチレバーやシフトペダルは非装備だった。2021年の試作車では、手元ボタンでのシフトチェンジが可能だったので、今回も同様のシステムが採用されているハズだ。
車体面ではスイングアームが非常に長く、車格は600並みのボリューム。またフロントブレーキはNinja250/400がシングルディスクなのに対し、Wディスクとしている。
現行車唯一のハイブリッド車であるPCX e:HEVはモーターを補助として使用するマイルドハイブリッド。ストロングハイブリッドのバイクが市販化されれば世界初の快挙となるのだ。
顔はNinja250に似ているが、カウルは全くの新作。機関部はカバーされて見えないが、エキパイが2本なのでNinja250か400の並列2気筒だろう
カワサキEVはネイキッドとSSの2本立てで2023年に発売か?
EVは、ハイブリッドに先駆けて2023年に発売され、しかもネイキッドとスーパースポーツ(SS)の2本立てとなる可能性が出てきた。
海外の有力サイト「MOTORCYCLE.COM」によると、NHTSA(米国運輸省道路交通安全局)がカワサキ2023年モデルのVIN(車両識別番号)を更新。そのリストに「NX011AP」と「NR011AP」なるコードが追加されていたという。
従来のモデルコードでは、「EX」がフルカウルスポーツ、「ER」がネイキッドを示していた。例えば、Ninja400は「EX400」、Z400は「ER400」と表記される。これに倣うと、「NX011AP」はフルカウル、「NR011AP」はカウルレスと予想されるのだ。
さらにリストには、エンジン排気量、シリンダー数、エンジン出力の項目があるが、上記のNXと NRには排気量が記載されておらず、シリンダー数は「0」、出力は 11 kW (14.95ps)との表記が。
これは、NXとNRが内燃機関を搭載しないEVであることを示しており、コンセプト版EVの定格出力10kWともほぼ符合する。
そしてモデルコードの末尾「P」は2023年モデルを意味する。あくまで予想に過ぎないが、カワサキから2023年にNinja系フルカウルとZ系ネイキッドという2台のEVが発売されると見られるのだ。
なお8耐で登場したハイブリッド版の記載はないため、EVが先に発売され、後にハイブリッドが登場する可能性がある。
400並みのパワーでも車検ナシ、カワサキが次世代スポーツを開拓する?
EV、ハイブリッドとも実に興味深い。
EVは出力が大きくても、道路運送車法での扱いは軽二輪(126~250cc)なので、車検がない。カワサキEVの動力性能は不明だが、もし400ccクラス並みのパワーを獲得できれば、これを車検ナシで堪能できてしまうのだ。ちなみに定格出力1.0kW超20kW以下のEVは普通二輪免許で乗車できる。
2022年に発売されたBMWの電動モデルCE04の場合、定格出力15kWで最高出力は31kW(42.1ps)と400クラス並み。2018年に発売され、定格出力11kWのアディバ・VX-1は、最高出力35kW(47.5ps)をマークしている。
そしてハイブリッドはスポーツ性に期待したい。恐らくエンジンとモーターを併用しての走行が可能で、エンジンの低回転時にモーターによるアシストが入れば一段と加速性能がアップするハズ。「let the good times roll」を掲げるカワサキなら、燃費向上はもちろん、スポーツ性もキッチリ強化してくれるだろう。
カワサキの予定どおり2022年中に3台の電動バイクを発表するとなれば、今秋のショーでのお披露目は必至。同じく今秋に発表が噂される4気筒400ccスーパースポーツと合わせ、センセーションを巻き起こすか? 他社にはない製品でバイク業界に新風を呼び込み続けるカワサキ次の一手に俄然、注目が集まる!
カワサキは2022年に電動モデルを3台発表するとアナウンス。その第1弾が子供向けの電動バイク「エレクトロード」で、2022年夏以降に米国で販売される。これにEVスポーツが続くハズ!
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みんなのコメント
ガソリンの場合はスタンドで数分で注ぎ足しすればその後も走り続けられるから
満タンで何キロ走れる仕様だろうが、1日500kmとか先まで行ける
EVは?