2005年秋、フランクフルト・モーターショーでは、メルセデス・ベンツSクラス、ポルシェ ケイマンSのほかにも、数多くの注目モデルがデビューしている。フォルクスワーゲン ゴルフGTもその1台。その後、日本でも「1.4TSI」として大反響を呼ぶ直噴エンジン+ツインチャージャーを搭載するモデルだ。Motor Magazine誌ではドイツで早速このモデルの試乗に成功、速報でレポートしている。(以下の記事は、Motor Magazine 2005年11月号より)
どの回転域からもトルクが沸き上がる1.4L TSIエンジン
欧州ではここ数年、自動車の燃費対策はディーゼル一辺倒であった。たしかにエネルギー効率の良いディーゼルはガソリンエンジンに代わって大人気だ。とくに、ディーゼルの人気が高いドイツ市場では新車登録のおよそ40%がディーゼルモデルで、オーストリアに至ってはなんと市場の70%以上を占めている。
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ところが、このディーゼルには落とし穴があった。それはパーティケル(微粒煤)だ。2004年までの排気ガス規制「EU4」では、ディーゼルエンジンにフィルター装備の規制がないために、欧州全土、とくに保有台数の多いドイツ大都市圏では規制値を越える粉塵が問題となり、市街地への未装着車の乗り入れ禁止が声高に叫ばれるようになった。慌てたメーカーは最近ようやくフィルターの装着に着手したが、今度は次期排出ガス規制でNOx(窒素酸化物)除去問題が浮かび上がり、ディーゼルの将来に暗雲が立ち込めている。
これに加えて最近はガソリン(自動車燃料)の高騰が起こり、人々はさらに将来に疑心暗鬼になり始めている。もちろんハイブリッドも代案のひとつだがヨーロッパでは普及にまだまだ時間がかかる。
こうした状況においてフォルクスワーゲンは新しいガソリンエンジンを発表した。TSI、ツイン過給ガソリン直噴エンジンである。聞きなれないこのシステムは、1.4L FSIエンジンをベースに、低回転域ではスーパーチャージャーを回し、それ以上はターボチャージャーを利用することで、2.3L並みの動力性能と1.6L並みの燃費とを両立させようとするものである。
このエンジンを搭載する最初のモデルは、ゴルフのGT仕様。このクルマは欧州でのみ販売されているもので、日本市場での「GT」グレードとは異なる。スポーツシートや6速MT、17インチホイール、さらにスポーツサスペンションや強化ブレーキを搭載し、フロントエンドもGTIを思わせるような台形グリルが強調されるデザインを有している。ただしクロームグリルは採用されていない。
コクピットは基本的にベーシックなゴルフと同じだが、よく見るとメータークラスター内にブースト計が設けられている。
スターターキーを回すと1.4L エンジンは簡単に目覚め、すぐさま安定したアイドリングを開始する。実はこの時点でクランクシャフトに対して1:5というギア比を持ったスーパーチャージャーはもう仕事を始めており、過給圧は1バールに達している。それゆえにスタートはまるでディーゼルエンジンを思わせるような力強い。しかも1250rpmという低い回転域ですでに200Nmを発生し、1750rpmから4500rpmの間は2.5バールにまで上昇した過給圧によって240Nmの最大トルクが発生する。
そしてこの間にスーパーチャージャーの加圧空気の流れはバイパスへ回り、ターボへのバトンタッチが行われるのだが、この交替が非常にスムーズに行われるためにドライバーに何のショック、あるいは息つきのような現象を感じさせない。フォルクスワーゲンのエンジン開発陣がもっとも苦労したのは実はこのポイントであった。
そんなわけでこの複雑な過給システムを搭載するエンジンはまったくフツウに仕事をする。不思議なのは1.4Lと小排気量なのに、タコメーターの針がどの回転域にあっても、モリモリとトルクが沸き上がってくることだ。
この日はフォルクスワーゲンの広大なテストコース「エーラレシエン」の一部に設けられたワインディングセクションを走ったのだが、6段のギアを小まめにシフトをしなくても、スイスイと流すことができた。またわずかな直線でも軽く160km/hを超える。フォルクスワーゲンでは0→100km/hの加速は7.9秒、最高速度は220km/hに達すると発表しているが、このテストを通じて、数字はむしろ控えめだという印象すら受けた。
問題の燃費だが、この日のわずか150kmばかりのテストでは確認できなかった。しかしフォルクスワーゲンのテストでは平均で1リッターあたり13.9km(ヨーロッパ混成モード)を記録している。ディーゼルエンジンには及ばないが、たしかに1.6Lクラスのガソリン仕様とほぼ同じである。DSGと組み合わされば、燃費はさらに良くなるだろう。さらに140psのディチューンバージョンも考慮中といわれる。
ところで残念ながらこのハイテクエンジンは、日本へは当面は輸出されない。日本の輸入車マーケットは小排気量を好まないとのマーケティングの判断によるものである。しかし、ゴルフには似合わなくともポロに移植すれば、とても面白いスポーツサブコンパクトカーが誕生すると思うのだが、いかがなものだろうか?(文:木村好宏/Motor Magazine 2005年11月号より)
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みんなのコメント
と聞かれてこれのヴァリアントを推薦したら
即決してきました。
それの前までステージアに乗ってましたが
排気量が1000ccもダウンしてどうなのかと
心配してましたがなんのなんの!
運転させてもらいましたが1000回転チョイからスーパーチャージャが3000回転チョイ前からターボにバトンタッチという二段階加速には凄い驚かされました。
そのステージアから100馬力近いパワーダウンにも関わらずトルクが強くてアクセルを踏み込まなくても十分な加速が得られるのと
速度維持がとっても楽です。
これは凄い!と選ばせた自分が驚いちゃって恐るべし1400ccと唸りました。
ツインチャージエンジンという響き、、、良いですよね。
エンジンが重くなっているのでこれが最後じゃないか?とも言ってましたが本当にそうなるとは、、、
電装系はやはり弱いみたいですね。